脳神経外科での検査


脳神経外科の診療では画像検査は必須のものです。なぜなら同じ症状、例えば右上下肢の麻痺が出現したとしても、それは脳の中の運動を支配している部位が障害されたことを意味しますが、どのような疾患で傷害されたかによって治療が大きく異なります。つまり、脳内出血なのか、脳梗塞なのか、脳腫瘍なのか、画像がないと確実に診断できないのです。そして、本当は脳梗塞なのに脳内出血と推測して治療すると、ちょうど正反対の治療になってしまうわけです。また、頭痛でも、脳腫瘍によって頭痛が生じているのに、単なる片頭痛と考えて鎮痛剤で治療していると手遅れになってしまいます。ですから、画像診断は非常に重要なのです。

CTスキャン (computed tomographic scan)
シ−テイ−と呼ばれる診断機器の代表。放射線を発する機械とその放射線を受け取る機械が頭の周囲を回転し、得られた情報をコンピュ−タ−で処理して頭の断層写真を描き出す。最近は放射線を受け取る機械が多数あり、体の周囲をらせん状に回転して上から下までの3次元的な情報を収集する機種や撮像時間も数秒という高速度な機種もある。治療上必要な情報はほとんど手に入れることができる。放射線を使用するため、妊婦には不適である。



左図で周囲に丸く白く写っているのが頭蓋骨で、その中に見えるのが脳です。脳の中に黒く写っているのは脳室といって脳脊髄液が溜まっている部分です。この写真では脳室が正常より大きく、つまり脳内に脳脊髄液が余分に溜まる病気である水頭症なのです。

MRI(magnetic resonance imaging)
エムア−ルアイです。磁気の力で頭の断層像を描き出し、非常に微細な構造まで見ることができる。また、脳血管も描出でき、脳動脈瘤の早期発見に寄与している。脳以外にも脊椎と脊髄の関係も見ることができ、椎間板ヘルニアの検査も容易にできる。放射線ではなく、磁気を使用するため安全であるが、顔面の前にコイルをはめたり、全身が入るような深い円筒に入って検査を受けねばならず、また、検査中は大きな音がするため、幼児や閉所恐怖症の方は検査がしにくい欠点がある。また刺青の方は火傷を生じる可能性が高く、危険である。
現在の脳神経外科においては必須の検査である。

左図で矢印に囲まれた部分が転移性脳腫瘍である。白く写る硬い部分と、黒く写る液状部分が存在している。

血管撮影

造影剤を脳血管内に注入して、動脈〜毛細血管〜静脈と流れていく状態を見る検査である。血管の閉塞(つまっている)や狭窄を見たり、動脈瘤と血管の関係を見たり、どの血管が脳腫瘍を養っているか、等を調べる。最近はコンピュタ-処理を行って頭蓋骨を消してしまい、血管のみが写し出されるような装置(DSA:digital subtraction angiography)が主流となってきている。(左は一般的な画像、右がDSA画像)

脳波
脳では電気的な信号で神経内を情報が移動している。その電気の状態を調べれば脳の働き(機能)がわかる。特にてんかんの患者では、てんかん波(棘波spike waveと徐波slow wave)と呼ばれる特異的な波が認められる。その他、狂牛病として有名になったヤコブ病ではPSDという特異的な波が出る。

頭蓋単純写
頭の骨のレントゲン写真である。以前に比べて有用性は低くなったが、骨折、以前の頭の手術部位、顎、歯など、他の検査ではわからないこともまだまだある。

SPECTとPET
スペクトとペットと呼ぶ。ともに放射性同位元素という放射線を出す物質を体内に投与して、体の外にある測定器で断層像を作成する。脳の循環(血のめぐり)や、酸素やブドウ糖の代謝(消費)を画像で見ることができる。最新の研究では、感情や記憶といった精神機能もこの器械を使用して画像としてみることができるようになった。使用する薬剤や機器が非常に特殊なため、一般の病院では検査ができないのが欠点である。
左図はアミノ酸代謝の画像で、黄色くリング状に写っている部分ではアミノ酸の消費が増加しており、そこに脳腫瘍が存在することを示す。

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