脳卒中の最新情報

脳卒中に関しては、その状況や治療に関して続々と情報が提供されてきています。ここでは、EBM(Evidence Based Medicine つまり確固たる証拠に基づいた正当性のある治療)に基づく試験結果に関して述べます。

左の図は降圧剤(血圧を下げる薬)が脳卒中を予防することを証明した主な大規模臨床試験の一覧です。プラセボとは偽薬であり、薬を飲んでいない人との比較です。このように降圧剤は脳卒中を予防します。血圧自身を下げることによる効果と、薬自身が予防する効果を有している場合の2つが考えられています。

多くの試験は外国人での検査です。よってわれわれ日本人を対象にした試験は大変重要です。そのひとつに、JLIT(Japan Lipid Intervention Trial)と呼ばれるものがあります。萬有製薬が後援し、高脂血症(総コレステロ-ル値220mg/dL以上)の35から70歳の男女(女性は閉経後)総数52,421名に対して、19993年から1999年の6年間にリポバス(シンバスタチン、高脂血症の薬)を長期投与し、血清脂質のコントロ-ル状況と虚血性心疾患の発症頻度を調査しました。その一環として、脳卒中のデ-タ-が出てきたのです。

左の図がその解析結果です。35歳から55歳未満の人を基準値としてそれぞれの危険度を見たものです。赤で示されているものが明らかな危険因子で、図の右にあるもの程危険率が高いわけです。これでみると、年齢、男性といった避けることが出来ない危険因子はしかたないとして、高血圧、糖尿病、心電図異常、喫煙といった治療できるものがやはり危険因子として証明されています。しかし、単なる肥満(BMI≧25)や飲酒は危険因子ではないことがわかります。ただ飲酒の量は不明ですが。

左の図は脳卒中と脂質との関係をみたものです。総コレステロ-ルでは、200から219mg/dLの人を基準とすると、260mg/dL以上の人で、脳卒中になる危険性が有意に高くなります。また善玉コレステロ-ルといわれるHDL-Cでも40から49mg/dLの人を基準にすると40mg/dL以下の人では有意に脳卒中になることがお分かりいただけるかと思います。

ですからコレステロ-ルは善玉HDLを減らさないようにして下げなくてはいけません。

そして、PROGRESS(Perindopril Protection aGainst REcurrent Study)と呼ばれる調査があります。これは日本やフランスなど9ヶ国が行なった試験です。約6,000名の脳卒中患者で、高血圧の有無に関わりなくコバシル(ペリンドプリル、第一三共製薬という降圧剤を服用させた群と服用しなかった群に分け、脳卒中の再発の程度を5年間調査しました。

左の図がその結果であり、コバシルを服用した群の方が、脳卒中の再発を28%も低下させることができました。そして、この効果は西洋人よりも、私たち東洋人(日本人と中国人)により効果があるとわかりました。
そして、なによりも驚いたのは、従来は脳卒中になった患者の血圧はあまり下げてはいけないというのが常識でしたが、この検査では、収縮期血圧が130mmHg以下でもコバシルを服用した患者の方が、脳卒中になりにくいことが判明したのです。これはわれわれ医師も驚きました。

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