禁断のラーメン晩餐会
〜Prohibited Ramen Dinner Party〜


それは、ラーメン博物館が催す、1年のうち数回実施しない伝説の企画である。

食材の鬼と誉れ高い「佐野実氏」が己の威信を賭して、全国各地から最高峰なる食材を寄せ集め、渾身の魂を昇華する勢いで創りあげたラーメンを口にする会が「禁断のラーメン晩餐会」である。

佐野実氏の一球入魂ならず一麺入魂の迫力がビシビシと伝わる「禁断のラーメン」。それは一体、崇高な味の世界へ導かれるのだろうか?

この伝説の企画とも言える「禁断のラーメン晩餐会」は一体、どの様に始まったのか?

それは・・、

ラー博・広報「たけうちん」こと武内伸氏が高2の時に荻窪の「春木屋」でラーメンカルチャーに覚醒し、己の人生をラーメンに全て捧げるようになった。ラーメンを食い、食いまくって、食いあさり、食い重ねて、なんと、5000杯を突破したのが事の発端である。

5000杯と言えば、1年間に200杯食べても25年で達成できる計算である。私でさえ1年間に100杯突破できるか?の瀬戸際にいるわけで、明らかに格が違いすぎる。

5000杯を食破した記念として、佐野実氏が武内伸氏の為に、最高の食材で支配した禁断のラーメンを創りあげた。禁断の扉を開けた武内伸氏は、予想を絶する味に思わず忘却の世界の住人になってしまったと言う。

5000杯も食べたと言うことはラーメンの全てを知りうる立場に置かれてるのは過言ではない。その武内伸氏が思わず、我を忘れるほど味になったと言うことが、この「禁断のラーメン」の実力は計り知れないところである。

そして、

 1000円が上限とされるラーメンの不文律に挑戦。ラーメンの限界を追求し、
 「ここまで出来る!」と自信を持ってお勧めできるこの一杯。人生観が変わ
 るこの一杯。是非ともご堪能下さい。(武内伸)

この武内伸氏のメッセージで、2001年11月16日(金)に応募による第1回禁断のラーメンの晩餐会が開催したのであった。

その日の詳しいレポートは下のURLに記載していますので、良かったら、こちらも読んでね。
 → http://www.raumen.co.jp/top/_news/_bansankai/index.html


だが、この禁断のラーメンの神々しい味を一度でも、自分の味覚にすり込まれてしまうと、他のラーメンを食べても満足できなくなる恐れがあると言う。武内伸氏もその一人になってしまったと自ら、告白している。

ある意味、諸刃の剣と謳われてしまうラーメン。

大野与作はこの禁断のラーメンを口にする事を、意を決して第1回の2001年11月16日(金)、第2回の2002年1月25日(金)、第3回の2002年4月19日(金) に応募し、いずれも落選となったが、ついに第4回の2002年12月13日(金)に倍率約17倍の壁を越えて、当選と相成った。

と言うわけで・・、

第4回禁断のラーメン晩餐会に出席することに。





2002年12月13日(金) 20:50 ラーメン博物館前

木枯らしがピューと吹く寒い季節。

この禁断のラーメンを口にするパートナー・スネ夫と共に向かった。スネ夫はグルメにうるさい人であり、私と一緒に禁断のラーメンを挑戦する勇者である。

夜空に闇が深く包むほど夜遅いため、入口の賑やかが失われ、空いていた。そして、入口の前にある業務用の大型ストーブは暖を送り続けていた。

ラー博前のスタッフを見回ると、一人だけ異様な雰囲気を持つ者がおった。タキシードを着装してる。

この人が案内人なのか?

タキシードの案内人に「禁断のラーメン晩餐会に出席するものです」と伝えると、いつもと違う入り口、MVP専用らしい入り口から館内に入った。MVP専用と言えば、聞こえはいいが実際はちょっと狭かった。

タキシードをピシッと決めてる男性・・。それだけに「禁断のラーメンの晩餐会」と銘打つ価値は充分にあるという意気込みを感じる。





同日 20:45 ラーメン博物館内 地下1階 35ノット

待合室は地下1階にあるショートバー「ノット35」である。この「禁断のラーメンの晩餐会」のために今日だけの貸し切りとなっている。

カウンターになんと芳名帳まで用意して、自分の名前を書いて晩餐会への参加料を支払うのである。「ラーメン博物館結婚式」の受付のワンシーンと思いこんでしまう。

その参加料の価格は3300円。具にトリシュなどの高級品を使えば一発で3300円に到達できるが、この禁断のラーメンはそういう趣旨ではないラーメンで、佐野実氏の目によって、選りすぐられた食材にお金をかけてるだけである。

果たして、どんな味になるのか?と色々想像を巡った。

そして、ラーメン博物館のロゴが入った大きめの封筒をもらった。中身は1枚の紙が・・。

その紙は「第4回禁断のラーメンの晩餐会」の挨拶文である。ラーメン博物館の館長の岩崎氏のコメントがピシピシとこっちに伝えてくるのを感じる。



挨拶文





そして、周囲を見回ると、 武内伸氏も立派なタキシードを着て、参加者に挨拶周りをしていた。相棒のスネ夫に「武内氏は5000杯もラーメンを食べたんだよ」と説明すると彼が驚き、武内氏にたずねる場面が。

そうしてる内に、時は30分進んでしまい、タキシードの案内人が「大野与作様」と呼び出しが・・。

ついに禁断のラーメンと対峙できる時がやって来た。





同日 21:25 ラーメン博物館内 地下1階 支那そばや

食材の鬼の佐野実氏が構えを取ってる「支那そばや」。店内に入ると、いつもと同じような雰囲気である。

厨房に目を向けると、佐野実氏が腕を振りながら、ラーメン作りを極限までに集中している。鷹のような鋭い眼は健在であった。

ふと、テーブルの上を見ると、色紙のランチョンマットが敷いていた。アクセントに木の枝らしいものが置いていた。どことなく、懐石料理の雰囲気を醸し出していた。

スタッフから「本日の厳選素材」と記してる高級な和紙をもらった。しかも、佐野実氏のハンコがついている。



本日の厳選素材





本当に色々なところから素材を選りすぐられている。私の出身地である「岡山」の文字がトップバッターよろしく、載せていた。なんか、うれしい。しかも、国内だけではなく、中国から寄せられた素材まである。

まさに佐野実氏の鬼のようなこだわりがこの和紙に込められている。

ついに、

ついに、

禁断のラーメンが運ばれてきた。



「禁断のラーメン」






こ、これが、夢までに見た禁断のラーメンなのか!?

見た目、変な仕掛けはなく、普通のラーメンと変わらない。

では、頂きます!!




まず、スープをすすぐ。

「?」と一瞬、クエスチョンマークが浮かんだ。

もう一回、すすぐ。

味は醤油系であり、シンプルながら奥深さを感じる。スープを飲み込んだ後、しばらく時間を置くと、旨みがくっきりと舌の上に浮かんでくるのを感じる。この旨みが決定打となり、飽きが永遠に来ない味と魔法のスープになっている。

麺を食べると、

滑らかな食感であり、口の中で麺が踊ってるように感じた。麺とスープの相性がいい塩梅となり、旨みがさらに倍増する。スープと麺とのバランス感覚が旨みを生かしてる。

具の「メンマ」、「チャーシュー」、「ノリ」、「ネギ」、「煮卵」のそれぞれが束になって、五重奏を奏し、この禁断のラーメンを盛り上がっているように感じた。

煮卵はラーメンを食べてる途中に運ばれて来た。まさに最後のアクセントという役割で、トロリとした黄身がスープの更なる未知の味を引き出し、ラーメンの食べ終わりの花道を見事に飾っていた。

ラーメンとの会話を楽しんでるうちに、もはやスープしかなくなった。名残惜しくレンゲでチビチビと飲むよりも、器を持ちガーッと飲んだ。

ああ、美味い・・。

さすが禁断のラーメンである。


「余は満足じゃ」という一言に尽きる。

ごちそうさまでした!!




相棒のスネ夫も満足で、「天晴れ!」と最高の評価を出した。

こうして、禁断のラーメンの味にいつかまた巡り会えるのを祈りつつ、「禁断のラーメン晩餐会」を締めくくった。



禁断のラーメン晩餐会 完  2002.12.20 記 大野与作



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