あの方恋しや この方愛し 恋と愛とはちがうもの



 何が違うのだろうか、といつも思う。
 サンジが何かにつけて口にする言葉を、ゾロは今一つ理解できずにいる。
 
   お前は特別なんだよ
 
 サンジは女と見れば美辞麗句を並び立てる。
 勿論、満面の笑顔とよくわからない動きも付いて、ゾロは異人を見るような、なんとも言い難い不思議な気持ちになる。
 サンジは、ゾロには女たちに向けるような言葉は言わない。
 勿論、そんな言葉が欲しいわけではない。自分の容姿を誉められたって何も嬉しい事などないから、そんなものは不要だけれど、そうではあるけれども、どこかで落ち着かない気持ちになるのも事実。
 サンジには、女は皆特別。男は皆邪魔なもの。
 その邪魔なものの中で、自分は特別に邪魔でないのだろうけれど、それを嬉しいと思うわけじゃない。
 
   彼女達とお前は違うから
 
 違うのだろうとは思う。
 けれど、順位をつけたらどちらが上なのか、というのは聞くのが怖い気がする。
 多分、聞いた答えを自分は信用しないだろうから、聞いても意味がないだろうとも思う。
 
   愛と恋は違うんだよ
 
 何が違って、どちらがより大切なのか、それがわからない。
 自分がどちらに分類されていて、それがどういう意味なのかも。
 そうして、自分がサンジに対して抱いているのはどちらなのかもわからない。
 
   お前には特別にな
 
 そんな事を言って、夜のキッチンで酒を飲ませてくれるくらいの頃が、一番楽しかった気がする。
 他愛のない言葉で笑って、ちょっと派手に誇張した過去を自慢しあって、そうして目を見交わして、それが嘘だと知っているのだぞ、と伝え合うのが楽しかった。
 それなのに、今ではこんな馬鹿げた事で鬱々と考え込んでいる自分が嫌だ。
 
 
 
 
「愛してるよ。」
 
 頭の上から降ってきた言葉に驚いて顔を上げれば、楽しそうに笑うサンジがそこにいた。

 
 
 


あのかたこいしや このかたいとし こいとあいとわ ちがうもの
どっちが上位にあるのか、実はよくわかっていないのは私です。
恋愛感情の中の愛と恋は、どっちがより鮮やかで強いものなのか。
愛と聞くと、どこか穏やかさを感じるけれど、愛憎という言葉があって、愛の反対が憎しみであるように、愛は愛で激しいものなのかもしれないのだけれど、さて…

(2007.2.21)




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