「奇跡みたいな確率だろ?」
幸せそうな顔をしてサンジは言う。
同じ時代に生まれて、同じ海にいて、同じ船にいて、同じ気持ちでいて、なんて幸せな事だろうって。
「でも、最後は、五分と五分だろう。」
同じ時代に生まれていて、同じ海にいて、同じ船にいて、同じ気持ちでいても、それを知らなければ、こうして傍にいたりしない。
確率は、いつでも五分だ。
知っているか、知らないか。
同じ時代にいたか、いないか。
同じ船に乗ったか、乗らないか。
積み重ねれば、それは奇跡のような確率かもしれないけれど、いつだって、それは二つに一つだと思うのだ。
「……お前が、俺を、好きか、嫌いか。に依るんだからな。」
こちらの考えているのとは違う事を言って、それでもサンジは嬉しそうに笑った。
それだって確かに、五分と五分の確率だけど、そこに自分の意志が加わったら、確率は3分の1だって、思わないんだろうかと、ちょっとため息が漏れた。
「でも、お前は俺が好きなんだから、確率100%だな。俺ら。」
幸せ〜。なんて、馬鹿みたいに笑って、サンジは今さっき言った事とまるで違う言葉を口にする。
おめでたい奴だと思うけど、そういうおめでたさがないこいつなんか欲しくないから、それでいい。
「別に、奇跡的な出会いじゃなくちゃだめだってわけじゃないけどさ、そういうの、女の子は好きだよね。」
「そうなのか?」
俺の回りには、奇跡を願ってる女はいなかったから、サンジの言い分はよくわからなくて首を傾げると、サンジは何度も首を縦に振る。
「さっきのだって、女の子に言うと喜んでくれたよ。」
「…よくわかんねぇ。」
サンジの言う女の子達は、きっと恋人だったりとか、そういう相手なんだろう。でも、奇跡的な出会いなんてのに、喜ぶものなんだろうか。
「必然のが、嬉しいんじゃねぇの?」
会うべくして会ったのだ。という方が、喜びそうな気がする。そう思って問いかければ、サンジは驚いたようにこちらを見返してから、笑いを浮かべた。
「お前も結構、夢見がちだね。」
そうだろうか。とじっと見返せば、サンジは照れたように笑って、俺の手元のグラスに酒を注いでくれる。
「だって、奇跡も、必然も、人間がしてくれる事じゃねぇだろ?」
お前の言ってる事だって、そんなに変わんないよ。とサンジは言い、じっと俺を見据える。
「じゃぁ、俺達は、必然だったって事にしよう。確率100%だからさ。」
蕩けそうに笑うから、なんかもう、それでいいやと思って、俺はグラスの酒を煽った。
なんか、いきなり頭の中に降ってきたので、きっと、他にも同じようなお話を書いていらっしゃる方は沢山いるのだろうと思いますが、いたとしても、それとは無関係です。
確か、『でも、いつでも五分五分だよね』と言ったのは、姉だ。随分前の発言だけど、なるほどねぇ…と思った。ロマンがないと言えばその通りだが、私はかなり納得したのだ。似てないと思っても、こういう時、似てるのだと実感する(作品にはあんまり関係ない話しだけど)。(2004.2.2)