不思議なのは、ここにあるのはとても温かいものなのに、それを口にすると、とても冷たいものが返ってくるのだという事。
自分にとって温かいからと言って、それを伝えられる相手には温かくはないのだという事。
ならば、俺にとってとても冷たいその言葉が、本当はとても温かいものからこぼれ落ちたという事はあるのだろうか。
それともそれは、もっともっと冷たいところから沸き上がってきた言葉なんだろうか。
あの日、俺に聞こえたあの温かい言葉は、ただ俺が温かいと思っただけで、本当は冷たい言葉だったのだろうか。
俺の中で沸き上がるこの気持ちは、どうやらとても冷たいところから来ているけれど、だけれどそれは本当は温かなところにあったもので、沸き上がってくるものは、俺の頬にとても温かく感じるのだ。
俺の中にあるこの温かいものは、俺の中にある時だけ温かいもの。
だけれど俺は、それを同じように温かいものだと受け取ってほしかったのだ。
「なぁ………まだ、やり直しは効く?」
俺は、それを伝えたかっただけではなかったのだと、やっと気付いた。
どうしてだかわからないけれど、奴の声を効くと、頭が真っ白になり掛ける。
ちょっと震えるような不思議な響きを持った低い声が、自分に向けられると体が固まる。
心臓は早鐘を打ち、血液をどんどん送り出して、それは見る間に顔を赤く変える。
手はドクドクと心臓のように大きく脈を打ち、手に持っている包丁を強く握りしめなくては取り落としそうになる。
勿論喉は涸れて、まともな声なんて出るはずもなく、振り返るのだって至難の技だ。
その場で立っているのが精一杯。足音が近付いてきたらしゃがみ込んでしまいそうだ。
「なぁ、昨日のだけど…」
ああ、神様、俺の耳に、心地の良い言葉以外は届けないで下さい。
まな板の上の魚にとどめをさして、俺は必死に祈りを捧げた。
web拍手に載ってたネタ。
上の方が、ゾロの話で、下の方がサンジの話。
ゾロのお話は、サンジに告白したはいいけど、手酷く拒絶されて、悲しくて泣いたゾロにビビったサンジが、別に、ゾロが嫌いなわけじゃなくて、ビビっただけなんだ、御免よ…てな具合で謝りにやって来るお話を書き散らした時の残像。あまりにゾロが乙女で自分でも驚きの脳内状況。ゾロはサンジが初恋なんだ。ナミがルフィの事好きなのって幸せそうだから、自分もサンジにそう言ってみようと思ったという、呑気者だ。当時の自分がよくわからない。
サンジのお話は、上のに対になるようにと思って書いた品なので、これ以上もこれ以下も展開はないお話であります。