戯言

2007.4.21

□例えば、ここにドレミファソラシド、メジャースケールで出来た曲があるとします□

これを従来既製品で演奏しようとすると、1stポジションしかほぼ選択肢がありません。

それ以外になりますと、いきなりオーバーブロウが必要になるのです。また、せっかくブルースハープだからとミb、ソb、シbあたりのブルーノートで味付けしたくとも、1stポジション上ではこれらすら困難だ、という壁にぶち当たります。


「ブルースハープなのにフォーキーな感じか、素直〜な感じの選択肢しか無いなんてっっ」


そんなこんなで、flisnufというモデルが生まれました。何が違うって、音の配列が違うんです。それだけです。

丁度一年前くらいから、ライブやレコーディングでも使って、今では完全に自分の中でレギュラー化しています。それではどんなものなのか紹介しましょう〜






flisnufの配列
穴番号0123456789
吸音BDGBDF#ABDF#
吹音GCEGCEGBbCE

■まず従来既製品と違うのは、0番穴があって10番穴が無い…!というところでしょうか。

また7番吹音には謎のBb音があります。これによって穴がずれ込み、4,5番と8.9番が同じ音の仕組みになっています。

ハーモニカのバーター効果の性質上、これによって8,9番の吹音ベンドは無くなり、逆に吸音ベンドが可能になります。

このモデルは極めて高音部分の感覚が従来既製品と違います。10番穴や従来の9番吹音G音が欲しかったり、吹音ベンドがしたい場合はこのモデルには向かないので、おとなしく従来既製品を使うが良しでしょうか、、、、、

その代わりといっては何ですが、4番吸音のフェイク、ベンドがごとく、同じことを9番吸音のベンド、フェイクが可能になっています。
この辺は、従来既製品では適わない、かゆいところに手が届く感じでしょう。
なお、この配列ですとオーバーブロウはEb音のみでOKということになります。

以下、各ポジションでの紹介です。今回は、オーバーブロウ無しでメジャースケールポジションがどれだけ吹けるのか。その辺をピックアップしてみます。




1stポジションで使う場合(KeyC)
穴番号0123456789
吸音BシDレGソBシDレF#AラBシDレF#
ベンドAラ FファAラ Fファ   Fファ
吹音GソCドEミGソCドEミGソBbCドEミ

■まずはおなじみ?の1Stポジションです。
一番最初に0番があって紛らわしいけど、となりの1番からはお馴染みのファ、ラがベンドで…という形は従来の既成モデルと同じです。

ただ5番9番がファイリングされているので、ファは全部ベンドで出すようになります。

このポジションでの吹奏感は、従来既製品とあまり変わりがありません。

なお、1stポジションマイナー(KeyCm)はオーバーブロウが出てくるので難しいっすよ。




2ndポジションで使う場合(KeyG)
穴番号0123456789
吸音BミDソGドBミDソF#シAレBミDソF#シ
ベンドAレ F#シAレ      
吹音GドCファEラGドCファEラGドBbCファEラ

■続いて2ndです。もともとこのポジションがファーストでいいじゃん、というのを元に作られたのでこれが一番演奏しやすいように出来ています。

従来既製品で演奏していくと5番吸音でメジャースケールのシの音が出ませんが、これはファイリングしてあることによりきちんとしたメジャースケールがデフォルトで仕込まれています。

ブルースなどでF音(シb)が欲しいときは逆にベンドで出すというスタイルです。

いわずもがな、ブルース要素を高めるためにミソシ音が吸音側に集まっていて、ベンドが可能になっています。

またブルースにおいては、3番のハーフベンドBb音をよく使いますが、8番吹音においてもBb音があるのがこのモデルの特徴で、この音域でも十分ブルージーなフレーズを歌う事が出来ます。

0番穴があったり、特徴的な部分もありますが、基本的にはこれはもっともポピュラーなファイリングですね。カントリーチューンとも言います。

なお、2ndポジションマイナー(Gm)も一箇所オーバーブロウが出てくるですが、一箇所だけなのでGmの曲もこのポジションで吹けてしまう事があります。




3rdポジションで使う場合(KeyD)
穴番号0123456789
吸音BラDドGファBラDドF#ミAソBラDドFミ
ベンドAソC#シ F#ミAソC#シ   C#シ 
吹音Gファ EレGファ EレGファ  Eレ

■ここからが従来既製品では使用頻度の低かった使い方です。この配列ならではですが、曲によってはこのポジションが活きます。

配列を見ますと、4番吸音からの配列が2ndポジションと、特にリーオスカーモデルのメロディメーカーと酷似していますので、雰囲気は擬似的な2ndポジションになります。

シの音だけ気を付ければ2ndの感覚から移行しやすくなっています。従来既製品では音の配列によりこのポジションはマイナーになりますが、このモデルはその感覚で吹くとメジャーブルースになります。

メロディをしっかり、きっちりと出したくて、さらに2nd的なフィールを求めたい時にハマるポジションになるでしょう。

んで、ミbソbシbも可能なんですね。

特に曲中に4度マイナーコードが出てきて、その構成音がメロディとして出てきて、こいつははずせねえ!という時に役立つポジション、、、、かな。

さらに言えば、今回紹介するポジションの中で唯一、メジャースケールが吹けて、その中でブルースフィーリングあふれるミbソbシbが可能で、さらに平行調であるマイナースケール、しかもハーモニックマイナーを含む三種のマイナーが全部出来るっつー万能ポジションなんすね。

オーバーブロウは無し、ベンドのみ、でジャズをやってみたいという人には未来がある、、、かな。

3rdポジションマイナー(Dm)は可能です。従来既製品のサードポジション(マイナーというかドリアン)も可能です。




4thポジションで使う場合(KeyA)
穴番号0123456789
吸音BレDファ BレDファF#ラAドBレDファF#ラ
ベンドAド
Abシ
C#ミF#ラAド
Abシ
C#ミ Abシ C#ミ 
吹音  Eソ  Eソ   Eソ

■サークルオブフィフスで言うところの4番目に属するこのポジションは、さすがにここまで来るとベンドが多えええええなぁ、、、、という感じですね。。。

このポジションは従来既製品で言うところのナチュラルマイナーポジション、または1stポジションの平行調としてよく演奏される、もっともポピュラーなマイナーポジションなのですが、それをメジャーでも吹くとこうなります。

なお、マイナーでも吹くことは可能です。1stポジションをラから始めた形がソレです。

ミbソbシbは?と考えると、実際このポジションでブルース風味を演奏するのは大変で、どちらかというとマイナーブルース風味の味付けになるやも知れません。まぁ母体がマイナースケールなので。。。

このメジャーポジション中心で曲を演奏することはあまり試していないですが、例えばジャズなどにおけるII7など、部分転調の際に欲しい音がこの配列には備わっているので地味〜に活躍しているポジションかも知れませんね。

蛇足ですが、4thポジションマイナー(Am)は可能です。




12ndポジションで使う場合(KeyF)
穴番号0123456789
吸音DラGレ Dラ Aミ Dラ 
ベンドBbファ
Aミ
FドBbファ
Aミ
 Fド    Fド
吹音GレCソEシGレCソEシGレBbファCソEシ

■いきなり飛んで12thポジションになります。これはサークルオブフィフスで言うところの最後のポジションかつ、b系の回り(逆回り)でいうところの二番目(1stの次)に出てくることからフラットセカンドポジションとも呼ばれます。

よってb(フラット)が一つしかついてないので、このポジションでもメジャースケールが適えやすいのです。

実はこのポジションの平行調が従来既製品で言うところのサードポジション、ということになります。Fの平行調Dm、ということですね。

従来既製品でのこのポジションは、まさにこの平行調のサードポジションであるDmからFに転調する曲!のためにある存在だったり、オーバーブロウが出来ない段階でのIII度セブンス表現が必須の音楽、例えばボッサとか、そういった特殊な扱いで使われてきました。

このモデルでは8吹のBb音があるためきちっとメジャースケールが完成しますが、曲によってはこの音を必要としないため、従来既製品でもこのポジションでの表現がたまに出てきます。アメージンググレイスや、ジュピター、サイレントオブサイレンスなどがそうです。あ、あとマイワンアンドオンリーラブなんかも音域的にいけちゃいますね。

個人的には、このモデルの場合だと上の3rdポジションの便利さに霞んでしまって、あまり使う利点と頻度を見出せないポジションですが、4thポジションと同じで、部分転調内ではガンガン使ってるポジションなのでした。

また自分が経験したことある曲ですと、「愛の挨拶」のようなb3度上に転調してまた戻る、みたいな曲を3rd→12th→3rdでやったことがあります。これは結構面白かった。

さらにジャズでよくあるb6度上転調を4th→12thでやってみるのも一興か?なんて。やったこと無いんだけど、いやいや結構無理あるかもなぁさすがにこれは。。。


なお、12Thポジションマイナー(Fm)は一箇所オーバーブロウが出てきますが、ベンドも多いため、再現は難しいです。







■これ以外のポジションになると、オーバーブロウが必須になります。今回は割愛します。

オーバーブロウという技術は、今日に至ってはいろんな人が知り、また研究され、教材もTipsも増え、マスターできた人も増えてきたのでそれほど避ける存在とも思いませんが、それでもなお、既製品では不安定な技術だと思います。

楽器を楽しむものにとっては不安定なのは困るし、それでは音の配列で工夫してみようか、という角度から特殊チューニングというものを追求してきましたが、これが今のところの答えかな、とも思います。

無論ジャズなどにおける転調においてはハーモニカを交換したりだとかは必要になる場合もありますが、既製品よりかははるかに曲のテリトリーも広がると思います。ジャンルにおいても。

ベンドのコントロールは必須になりますが、仮にベンドをマスターした方なら、1stポジションで従来のフォーキーな演奏や伝統的な演奏を適え、ブルースにおいてはセカンドポジションで従来のフィーリングで楽しみ、同時にソウルナンバーなども兼ね備え、ジャズやPOPS、歌謡曲などは3rdポジションで他には出来ない部分をフォローできる。

それらが一本で、気分次第で曲調も変えたりだとかできるっつーところが良いかなぁ、、、、なんてね。




ちなみにこのモデル一本で全Keyを表現したのがこれです。12key3_1.mp3
















■入手できるか?■

もしも仮に?興味が沸いて試してみたいなぁ〜と思った場合、どうやって手に入れたら良いのでしょう・・・
市販はされていないし、これを既製品からリードをガシガシ削るのはかなりの手間です。。。。

そこで、特にハーモニカの種類にこだわりが無ければ、SUZUKI楽器のオーダーメイド製作がお得です。

なんと楽器代他に1050円+送料でやってくれちゃいますよ。


  スズキ楽器へGO!http://www.suzuki-music.co.jp/


仮に今回紹介した、KeyG(2ndポジションで)のモデルを作ってみましょう!

@メーカーサイトから「オーダーメイドハーモニカ」を選択

Aご注文手順へ

Bオーダーメイドハーモニカご注文画面へ

C10ホールズを選択します。

Dハーモニカの機種を選択します。今回はお試しということで一番安価なブルースマスターMR-250を。

E調子を選びます。ここは「A」を選びます。KeyGを作るためにはここからいじっていくのです。

F音階を選びます。Specialを選んでください。

G具体的に音を指定します。画面にはA調の配列が書いてありますので、下の図ように変更します。



これは確認ボタンを押した後ですが、このように赤色の部分が変更された部分です。同じになっていますか?
なっていましたら、次へ。

H仕上げです。Nameを入れるかはご自由に。。。。。

Iここで、ご意見、ご要望のところに、「このハーモニカはA調から変更していますが、キー自体はG調になるので表示等、対応お願いします」と書いておきましょう。

J注文内容確認をします。価格は送料含めて4410円です!再度変更点などをチェックしましょう。

K次画面に行き、連絡先などを記入し、あとは指示に従ってください。


ちなみに自分でリードガリガリ派はAbから作っていくのが良いですよ。
それではいろいろお疲れ様でした〜


2007.4.23

■flisnuf(フリスナフ)のサードポジションをピックアップする■

flisnufを使って音をとってみました。まずはこれを聞いてください。


[音源]サリーガーデン


さて、演奏を聴いたところで、実は曲中にハーモニカをチェンジして演奏しました。いずれも違うKeyです。

この曲は4小節ごとに俗に言うA-A-B-A形態の曲ですが、

最初の4小節[A]をCのflisnuf 1stポジションで。

次の4小節[A]をBbのflisnuf 3rdポジションで。

サビの4小節[B]をFのflisnuf 2ndポジションで。

最後の4小節[A]をBbのflisnuf 3rdポジションで。


演奏しています。
いずれも曲のkeyはCになります。


もう一度良く聞くとちょっと違うかなぁと解るかもしれませんが、はたして最初にそれが解りましたでしょうか。

セカンドポジションのサウンドイメージは既に承知の方もいるかもしれませんね。今回はサビだけでしたが平メロ[A]のところを2ndポジションで吹くとベンドが出てきて、とたんに2ndポジションっぽさが浮き出ます。


■今回は3rdを取り上げると言うことで、まずはflisnufで行う3rdポジションメジャーのサウンドイメージを比較してもらうためにこういった手法をとりました。


いわれないで聞くと、1stポジションと違いが解りにくいですね。しかし1stポジションが吹音の頻度が高いのに対してこの3rdだとほとんどが吸音になり、その辺の呼吸感というか、吸った感じの音の表現がが2ndに非常に似ています。

ちょうど、1stと2ndの両方の性格を持ったポジションで、演奏する曲によってノンフェイクでストレートにもいけるし、フェイクやベンドで2nd風な味付けもOKという感じでしょうか。

ただ、逆を言えば、1st程吹きやすくは無く、2ndにもなりきれないという器用貧乏さを持っています。このことから、1stでも2ndでも吹けない曲に対しての3番目のアプローチなのだ、という存在のような気がしています。



■1stでも2ndでも吹けない系の曲を一曲取り上げてみました。スウィートメモリーです。

この曲は1stで吹くには曲調が向いてなく、2ndで吹く為にはオーバーブロウ必須で演奏の難易度が高いです。

では3rdでは・・・・

[音源]スゥイートメモリー flisnuf G 3rdポジション(曲keyはA)

決して簡単とはいいませんが、それは曲が難しいからですね。技術的にはベンド技術があればここまで吹けます。

こういうことが出来ちゃうのが、3rdポジションメジャーの力なんだなぁと気づかされます。



■参考までに、オーバーブロウとかを駆使して2ndで吹いた音源です。今回はflisnufで吹いてますがこの曲に関していえばflisnufも市販の既存チューニングDも吹き方は同じです。ゲロゲロムズイです。。。。

3rdのときと比べると、どちらもポジション的な良さがあると思いますが、着目点は必要技術の差でしょうか。
技術的にオーバーブロウ有りと無しとは雲泥の差ではないでしょうか。それだけ3rdのほうがこの手の曲を挑みやすいし、マスターしやすいはずです。


[音源]スゥイートメモリー flisnuf D 2ndポジション(曲KeyはA)


それでは、また次回。