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「ちょっと失敗だったかも…。」
幸恵が振り向きざまに苦い顔をして通り過ぎた。
隣に趣味じゃないような男を二人も連れいていたのだから仕方ない。
幸恵の大学時代の知人が主催する合コンに無理矢理連れてこられたのに、貴女がその言い草って…、とは思うものの、幸恵が言った意味はきっと違う。
人数が多すぎるのだ。男性三十人・女性二十五人…。会社の先輩が話してくれるお見合いパーティーはこんな感じなのだろう。
幸恵の知人が半ば趣味でやっているに違いない。体格が良くて人もいいけど彼女はいないってタイプ。
いい人止まりだけど面倒見がいい感じ。入り口の近くでにこにこしながら応対している。

会場はビュッフェで壁の周りに椅子が並んでいる。会場にはテーブルが点々としているが人が多くて通るのがやっと。
それでもテーブルを一巡して食べたいものを物色。やっと空いている席を見つけて座った。
クラッカーにサーモンのキャビアのせ・グリーンサラダ・一口ピザ・アップルサイザーと進めながらも周りをぼんやり眺める。
男性陣だってそう悪い面々ではなさそうだ。ただ、友達の友達っぽい関係のせいか固まって談笑をするばかり。
女性陣も固まって何やら物色中のようで、これまた話しかけづらい雰囲気を醸し出していた。
どちらにも寄らずに真ん中の比較的空いている場所に座ってしまった。

意外に目立ってしまったが、まぁ私よりは幸恵の方が目立っているから気にしない。
幸恵は三人に増えてしまった男性に困り果てていた。一見大人しく柔和な幸恵はどこにいっても男が寄って来る。
本人もまんざらではない様子だけど、実はバリバリのキャリアで男性を寄せ付けない。自分より上か、同じ話題に通じる人でないと嫌らしい。
小学校から高校まで一緒だったので、私とは腐れ縁。タイプが全然違うのに、ずっと一緒。

男女の交流をより図るべく、受付で引いたくじ番号と同じ番号の相手を探し、一緒にクイズに回答するイベントが始まった。
だけど、もともと男性の方が多いのでくじ運の悪い男性はほかの男性と一緒にクイズをしている…。半ばやけっぱちな所が意外に面白い。
そして肝心の私の相手なのだけど…なんと、いない。中座してしまったらしいのだ。
自分から、番号を連呼して探し出す気にもなれず、結局ずっと座ってつまみながらマイクを持った幸恵の知人を見ていた。
こういうイベントを主催するのはどういう気持ちなのだろう。
昔から良くグループ交際的な事は手伝ってきたけれど、合コン以上の事はやったことない。
最近はそう言うイベントも頼まれないし、正直面倒だと思う。
だいたい一緒にいる人は親でも姉弟でも友人でも恋人でも同じ様な気がするのだ。別にわざわざ恋人を求めなくてもいいような気もする。

「貴女、13番?」
ぼーっとしていたところを話しかけられて、目線を変えた。
「はい。そうですけど。」
可愛い感じの男性が困った様子で微笑んでいた。
「すいません、先輩にはちょっと席はずすからって言ってあったんですけど。イベント始まってしまったみたいで…。」
「別に構わないわ、私はついてきただけだもの。」
印象は悪くなかったけれど、不機嫌だったので口調はきつかった。
「あの、埋め合わせさせて下さい。今度お食事でも、いや、今でもいいんですけど。」
「今は存分にビュッフェを楽しみましたから、申し訳ないけど結構です。」
そう言うと男性は更に困った顔をした。あんまり言うと私が悪いみたいでいやなので、
「じゃ、今度ご馳走して下さい。一応連絡先、教えますね。」
と、自分の名刺を差し出した。

これが彼となんとなく側にいることになった原因だった…。

20041003 枯矢

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