SF書評 2003

菅 浩江: 永遠の森

図書館で借りた。「SFが読みたい! 2000 Best1」。最初は一般小説風だけど、後半かなりSF。美がテーマってとこが女性らしくあり、日本の伝統工芸ネタもあり、いかにも京都の人っぽい。案外、最後の方は骨太のSF。この作者なりのオリジナリティを高く感じたのであった。

なんとなく書割みたいなキャラ群の中にあって、主人公の妻の扱いが隠し味。

柾 吾郎: ヴィーナス・シティ

図書館で借りた。「'92日本SF大賞」あたりを受賞しているはず。ヴァーチャルものとしては、設定が時代を感じさせる。何だかパソコン通信ぽい匂いがあちこちに。発表当時に読んでれば良かったのだが...日本の取り扱いも然り。いかにもバブル崩壊前っぽい。しかも日本論が物語の骨格を成しており...『エリコ』もそうなのだけど、日本を語るSFは、いまいち好きになれないところがある。中オチはニヤリ。最後のオチはお約束。全体としては佳作。

ジョン・クレイマー: 重力の影

非常に良質なハードSF。序盤なんか物性実験ネタ。現代の物性実験室が舞台のハードSFなんて読んだこと無い。菊池教授が解説しているように研究者モノとしても楽しく読める。大ネタは超ひも理論。薀蓄を長々書くタイプでは無く、行間に滲ませるタイプなので読みやすさも良い。例によって人物造詣とか画一的ではある。図書館で借りたが、入手してみたい。たぶん絶版?

ロバート・J・ソウヤー: イリーガル・エイリアン

異星人が被告の法廷劇。と、しか書きようが無い... ソウヤーだから、お話としてつまらなくは無いけど。買わずに図書館で借りて良かったレベル。

等と思っていたら、終盤はしっかりとSF&ミステリーなオチでソウヤーらしい楽しい読み物であった。

アーシュラ・K・グ・ウィン: 闇の左手

名作の誉れ高いが...私にはあわなかった。図書館で借りた。

池上永一: レキオス

沖縄を舞台にマジック・リアリズムなドタバタ話。沖縄の歴史と風土に根付いた話は個人的には目新しい。ラッカーとかラファティみたいなギャグが連発。得体の知れないドライブ感に溢れる。「2000年SFが読みたいベスト2」。図書館で借りた。

冲方丁: マルドゥック・スクランブル

ギブソンぽい感じかと思ったらSF版『カイジ』だった。1,800枚の大長編だが、半分くらいはカジノ激闘シーン。『カイジ』ばりの熱気に溢れており、煽られるように一気に読んだ。少女娼婦あがりのヒロインとネズミの主人公は確かにアニメ向き。

テッド・チャン: あなたの人生の物語

イーガンと並び賞されるチャンの唯一の短編集。表題作と「理解」は読んだことあり、どちらもオールタイムベスト級。これ以外は意外とSF色薄め。ビクトリア朝異世界とかバビロニアとか、ファンタジー風味。作者の弁によればこれらはあくまでSFだそうで、それなりに納得はできるが...

小川一水: 第六大陸

民間企業が月面基地を作る話。表紙と挿絵が宇宙マンガ『プラネテス』の人であり、テイストもかなり似ている。ネタ的にも一部重なる。

テクノロジーだけじゃなくてお金の話をきっちり計算し、ビジネス的に月旅行が成り立つかどうか、に加えて国際法の話まで出てきてキッチリとシミュレーションする一方、キャラ立ちも良く、多くの魅力的なキャラクターや人間らしいエピソードにも彩られている。何より、今のご時世に元気が湧く話であるのが大変良い。ほぼ傑作。

色々褒めたけど気になる点はある。テクノロジー面でのブレークスルーは新型****なわけだが、劇的にコストが下がる割りに説明が不足している感じ。きっと作者もわかってやってるんだろうけど、この部分が序盤に出てくるので今ひとつ乗り切れなかった。それと****の伏線がほとんど無かったので、ちょっと唐突。

全体の雰囲気はクラークっぽい。作者自身、クラークと野尻抱介リスペクトとのこと。でも人情味溢れる面も多く、この辺は小松左京の影響らしい。作者、まだ若いし、今後も楽しみ。キャラクターデザインも出来てるわけだし、どこかがOVAにでもしそう。ていうか、既に決まってる? 現時点では不明。『プラネテス』はアニメ化されてBS2で放送されるらしい。

あと、作中で「エンジニアは、それが技術的に可能であるなら何でも作ってしまうのだ」みたいなくだりがあり、色々と考えさせられた。

神林長平: 言壺

図書館で借りた。言葉が世界を変える話といえば『エイダ』を連想した。

グレッグ・イーガン: しあわせの理由

世界のエース、イーガンの第2短編集。あいかわらず外れは全くありません。冒頭の「適切な愛」「闇の中へ」「愛撫」あたりまでイーガン節炸裂と読んだ。「チェルノブイリの聖母」は一般小説チックな感じ。これはSFマガジンで読んだことあるな。表題作は確かにベストと推されるのも納得。俺的には'90年代のアルジャーノンのようにも感じました。全然違うといえば違うんだがな。全体に『祈りの海』に比べると地味な感じはある。

ジェイムズ・ティプトリー・Jr: たったひとつの冴えたやり方

表題作、少女漫画チックで新井素子みたいだけど泣ける。しかし、ティプトリィ最晩年の作品集ということだが、他のとノリが違いすぎますね。ものすごく読みやすかったし。

ジェイムズ・ティプトリー・Jr: 老いたる霊長類の星への賛歌

「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」あたり、フェミニズムSFで気恥ずかしいですが。

スティーブン・バクスター: 真空ダイアグラム

『プランク・ゼロ』の続き。

ニール・スチーブンソン: ダイアモンド・エイジ

ポスト・サイバーパンクの旗手という噂の著者による力作。『スノウ・クラッシュ』に比べると全体に弾け度が少なく、ナノテク・ガジェットの技術的薀蓄が細かくなった印象。でも、こんな絵本があったら欲しいぞ。

途中から技術の薀蓄は減って一般小説みたいな感じに。ビクトリア朝薀蓄が出てくるとスチームパンクみたいな雰囲気。「2002 SFが読みたい第2位(海外編)」は妥当なところか。図書館で借りた。

スティーブン・バクスター: プランク・ゼロ

ジーリークロニクル短編集。最初の頃の異星生物ハードSF系は好きなんだけど、後半の超未来になると、どうしても許せないのがジーリーの超発明でパウリの排他律や不確定性原理を破ると言われても、そこの蘊蓄が多少は書いてくれてないとすっきりしない。やっぱりバクスターってイマイチ好きになれない。

小林泰三: 海を見る人

図書館で借りた「2002 SFが読みたい第2位」。ハードSF短編集。ちょっとイーガンぽい。どれも秀作で外れが無い。表題作泣ける。『天獄と地国』はSFマガジンで前に読んでお気に入りだった記憶がある。結局これがGW4連作トップ。

野尻抱介: 太陽の簒奪者

図書館で借りた「2002 SFが読みたい第1位」。ファーストコンタクトものハードSF。クラークっぽいですね。それを新しい科学知識で書いてる。ゴリゴリと論理で組み立てるストーリーには大嘘の余地は少ない。分量が短いって意見もわかるし、ちょっと物足りない感じはあるけど、この程度が読みやすくていいや。オチは主観の統一と身体の必要性が矛盾してるように感じたけど読み込み不足かもしれない。いや、これが無いと奴らが来る動機が無いのか。エピローグも含めて、最初はちょっといいねと思ったけど。まぁでもGW3連作の中ではこれがトップかな。しかし、著書が別のところで語ってたけど、脳自体に意識は無いってのが最近の説なのか。

藤崎慎吾: クリスタルサイレンス

図書館で借りた「1999 SFが読みたい第1位」。最初、火星&ファーストコンタクトものかと思って読んでたら中盤以降サイバーな展開へ。こちらが核心であった。作者はラブストーリーって言ってたんだけど対象がホニャララ。そちらよりむしろヒロインに感情移入できなかったのでちょっと違和感。科学的なガジェットが色々あって面白いんだけど、見せ方がギブソンなんかと比べちゃうとダサい感じ。散漫。。。って書くとギブソンと変わらないか。でも全体としてはかなり評価します。ラストも何だかいいやね。悲恋だけど桜が咲きましたみたいな。(意味不明)

小林泰三: AΩ

図書館で借りた「2001 SFが読みたい第2位」。ウルトラマンをハードSFにした話なのだが、ホラー、スプラッター色が強い。後半なんとなく『グランバカンス』風味、またはデビルマンあたり。プラズマ生物の生態とかオチもどこかで読んだことあるような。。。メインのウルトラマン科学ネタはいいんだけど。

ジェイムズ・ティプトリー・Jr: 愛は定め、定めは死

あいかわらずティプトリィ節。つぼ減ってきた。強いて言えば表題作くらい。相変わらず読みにくい。