プレイヤー適正人数
２～４人（最適は３人）
概要
PCの元に奇妙な依頼が舞い込む。「半年前に死んだ父の生死を確認してほしい」半信半疑で病院の調査を始めたＰＣの周囲にちらつく、一人の刑事の影。さらに何者かの襲撃。そして意外な真相が明らかになっていく…
シナリオの舞台
抗がん剤の臨床試験が行われている病院と、製薬会社の工場が主な舞台となります。工場に向かうのはクライマックスに入ってからでしょう。直接の舞台ではありませんが、事件の発端であるＮＰＣ片瀬 深雪が高校生であるため、ＰＣの一部(全員でも可)が彼女の学校の関係者であると、導入をスムーズに運べます。
SA
全員共通「人間を殺さない（１５）」今回の敵魔物は人間が変じたものですが、これらは「人間」に含まなくとも良いです。
導入
①ＰＣが探偵、警官などの場合：
ＰＣの元に一人の少女が訪ねてきます。彼女の名前は片瀬 深雪。彼女の依頼の内容は以下の通りです。
「私の父は半年前にガンで亡くなりました。でも最近近所の人が、父が亡くなった病院で父に良く似た人を見かけたって言うんです。私もまさかとは思ったんですが、そのことを病院の先生に尋ねたら、なんか様子がおかしかったような気がして…変なお願いって事はわかってます。でもそこを曲げてお願いします。父の消息を確かめてもらえないでしょうか？」
ＰＣが探偵の場合、報酬を取ろうとするでしょう。深雪は自分の貯金をありったけ出します。(大した額ではないでしょうが)
②ＰＣが学校関係者(学生、教師)の場合：
ＰＣの通う学校の近くには大きな病院があります。放課後その病院の前を通りがかると、見知った人物が正面玄関からつまみ出されるのを目撃します。片瀬 深雪です。(ＰＣの立場により同級生だったり受け持ちの生徒だったりします)ＰＣに見られた事に気付くと、彼女はばつが悪そうに立ち去ろうとします。事情を尋ねると、躊躇いがちに話し始めます。
「うちのお父さん、半年前にガンで死んじゃったの、憶えてるでしょ？でも最近近所の人が、ここでお父さんらしい人を見かけたっていうの。他人の空似にしては似すぎてるって…んな馬鹿なって思ってる？でも私は自分で確かめないと気が済まないの。…ゴメンね、馬鹿な話ししちゃって」(教師に対しては丁寧に)
③上記のいずれにも当てはまらない場合：
「近所の女の子として顔を知っている」ということにして、②に準じた導入にします。ちょっと苦しいですけど…
＊導入パターンを複合するのもいいでしょう。「病院をつまみ出される所を同級生に目撃された後、探偵の所へ依頼に行く」など。
NPC
片瀬 深雪（かたせ みゆき）/アンノウンマン・女性・１７歳
都内の公立高校に通う高校二年生で、バレー部の主将。良くも悪くも頑固で一途な所があります。半年前に父親をガンで亡くしているが、死んだはずの父を病院で見かけたという話を聞き、病院の対応に疑問を抱いています。ただ、父が生きているかもという考えが馬鹿げたものであるという自覚もあります。父の生死を確かめるためＰＣに依頼をしますが、気をつけていないと自分でも病院に入りこんで探りを入れようとしてしまいます。ＰＣが深雪の学校の関係者(同級生や教師)であった場合、依頼という形ではなく病院で不審な行動を取る彼女を目撃すると言う導入が良いでしょう。確定していない絆をＰＣに割り振ると、導入が楽になります。
能力値：【知性】４ 【感情】５ 【肉体】５
血と肉：３
技：
【知性】<情報>２ <手当て>１ <家事：料理>１
【感情】<売買>１ <交渉>２ <人にやらせる>２
【肉体】<隠れる>２ <運動：バレーボール>２
絆：
【知性】－
【感情】学校の友達（共感）５
【肉体】彼氏（恋愛）４
エゴ：
【知性】－
【感情】父親の死を認めたくない（願望）４
【肉体】－
所持品：制服、バレー部ユニフォーム、鞄、携帯電話、ルーズソックス
経験コスト：３０９
国枝 篤志（くにえだ あつし）/アンノウンマン・男性・４５歳
警視庁の特捜に籍を置くベテラン刑事。己の信念に基づいて行動する、古いタイプの刑事です。製薬会社の新薬認可に関する汚職事件の内定を進めていましたが、上層部の判断により捜査は打ち切り。(製薬会社と関係を持つ高級官僚の圧力です)それまでの捜査で製薬会社がクロと確信している彼は、独断で捜査を続行しています。その為同僚からかなり煙たがられています。令状を持たずに病院や工場に潜入していたりするので、ＰＣと出くわすと互いにマズいことになるでしょう。
能力値：【知性】５ 【感情】４ 【肉体】６
血と肉：６
武器：拳銃（１D６/ロングレンジ/通）
技：
【知性】<情報>２ <セキュリティ>１ <射撃>１
【感情】<心理>３ <プロファイリング>２
【肉体】<格闘>２ <白兵戦>１ <回避>２ <ストーキング>１
絆：
【知性】上司(仕事)４
【感情】南原泰造（敵意）６
【肉体】妻（家族）３
所持品：警察手帳、手錠、ボールペン、携帯電話、覆面パトカー
経験コスト：３９９
南原 泰造（なんばら たいぞう）/ノウンマン・男性・３８歳
大手製薬会社「タチバナ製薬」の開発室長。現在臨床試験中の新型抗がん剤の開発責任者です。業績至上主義で、その他のことは省みません。新薬の認可は、その後の流通ルートの確保などから見て早いほど利益が上がるので、早期認可を受けるのに躍起になっています。その為厚生労働省の高級官僚に多額の賄賂を送って便宜を図ってもらっています。
以前末期のガンだった妻に増殖体が取りつき、魔物の存在を知りました。その際症状がきれいに消えたことから(その後人間性を失って異形化しましたが)増殖体や寄生体の細胞増殖制御能力に目をつけ、抗がん剤に導入しようとしています。
能力値：【知性】６ 【感情】３ 【肉体】５
血と肉：４
技：
【知性】<情報>２ <魔物知識：寄生体>２ <魔物知識：増殖体>２ <知識：薬学>３
【感情】<売買>３ <交渉>３ <指揮>２
【肉体】－
絆：
【知性】社長(仕事)５
【感情】－
【肉体】－
エゴ：
【知性】会社に尽くす(使命)８
【感情】魔物を利用する（異常願望）５
【肉体】－
所持品：スーツ、鞄、モバイル、名刺、自動車、資料の入ったＭＯ、隠された工場兼研究施設
経験コスト：４３３
試薬被験者（深度２）/魔物（寄生体＋増殖体ハイブリッド）・性別、年齢不明
「タチバナ製薬｣で開発中の新型抗がん剤。寄生体と増殖体の細胞増殖制御能力を利用しようとしたこの新薬は、未だ抑制能力の欠陥を克服できず、投与された者は脳漿喰い（ブレインイーター）や大食らい（グラートン）、もしくはこの姿となります。寄生体と増殖体の研究の副産物として発見されたコントロール法で南原に操られています。人間としての記憶や知能は失っていますが、深層意識に南原に対する殺意を持っています。
能力値：【知性】１０ 【感情】８ 【肉体】１３
血と肉：３１ 人間性：３５
武器：鉄拳（３D６/ショートレンジ/通） 攻性触手（２D６/ロングレンジ/通）
防具：生体装甲（３＋修正値）
イニシアティヴ修正：－３
業：
【知性】－
【感情】－
【肉体】<鋼の腕>２ <攻性触手>２ <防御形態>１ <融合(フュージョン)>１ <スライミング>１ <カメレオン>１ <頭脳食い(ブレインイート)>１
【特殊】《寄生主(ホスト)》１ 《過剰防衛反応》１ 《増殖装甲》１ 《マルチタスク》１ 《侵食》２ 《究極進化》２
絆：
【知性】－
【感情】－
【肉体】南原泰造(従属)１０
エゴ：
【知性】能力を高めたい(使命)１０
【感情】物理的活動を行いたい（欲求）５ 南原が憎い(悪感情)３
【肉体】脳髄を食いたい(欲求)７ 人間を殺したい(欲求)６
経験コスト：５５０
病院関係者
病院に勤務する医師や看護婦、守衛などです。今回の臨床試験は製薬会社の主導で行われているため、抗がん剤の実態は正確には把握していません。(タチバナ製薬はこの病院にも献金しているので、強い態度に出られません)基本的にはイグノラントとして扱いますが、状況次第でクラードとして扱うこともあるでしょう。その場合は以下のデータを使用します。
医師/看護婦
能力値：【知性】６
血と肉：２
技：【知性】<手当て>２ <知識：医学>２
イニシアティヴ値：５固定
守衛
能力値：【肉体】５
血と肉：４
武器：警棒（１/ショートレンジ/通）
技：【肉体】<白兵戦>１
イニシアティヴ値：５固定
製薬会社研究員
南原 泰造の研究施設で働く、製薬会社の研究員です。増殖体や寄生体の細胞増殖制御能力を研究しています。ガンの克服という使命感はありますが、モラルは欠如しています。クラードとして扱います。
能力値：【知性】６
血と肉：５
技：【知性】<魔物知識：増殖体>２ <魔物知識：寄生体>２ <知識：薬学>２
イニシアティヴ値：４固定
脳漿喰らい(ブレインイーター)
異形化した寄生体で、クラードとして扱います。寄生体と増殖体の研究の副産物として発見されたコントロール法で南原に操られています。大食らい程は目立たないので、病院や屋外で調査中のＰＣやＮＰＣを襲います。
能力値：【肉体】６
血と肉：４
業：【肉体】<触手縛り>２ <脳喰い>４
イニシアティヴ値：４固定
大食らい(グラートン)
異形化した増殖体で、クラードとして扱います。寄生体と増殖体の研究の副産物として発見されたコントロール法で南原に操られています。かなり強力なクラードです。クライマックスの工場内などで出すのが適当でしょう。
能力値：【肉体】１２
血と肉：２０
武器：偽足（２D６/ショートレンジ/通）
業：【肉体】<同化吸収>３
イニシアティヴ値：３固定
途中の展開
①<情報>などのワザを使って病院のことを調べると、以下のことが分かります。
・現在新しい抗がん剤の臨床試験が行われていること。
・退院した新薬の被験者が相次いで行方不明になっていること。
情報の入手には適当な難易度を設定してください。(４～５程度)
②診察時間中に院内を調査しても、大した情報は得られません。医師や看護婦は、新薬の被験者が魔物に変じる事は知りません。退院した被験者が行方不明になることは知っていますが、そのことを聞かれれば良い顔はしないでしょう。深雪同様つまみ出されるかもしれません。
またワザを使って調査活動をするなど不審な行動を取っていると、国枝刑事に見つかって職務質問されます。とはいってもＰＣの行動に関してではなく、病院内で不審なものを見なかったか、というようなことですが。
③夜間に病院に侵入するのは、多少のリスクを伴います。各所に警備用の監視カメラがありますし、守衛も巡回しています。もちろん夜勤の医師や看護婦もいるでしょう。上手くやり過ごすことが出来れば、昼間より多くの情報が手に入ります。
・臨床試験中の抗がん剤を「タチバナ製薬」が開発していること。
・臨床試験中の被験者は隔離された病棟に入れられ、「タチバナ製薬」の人間だけが出入りしていること。
・臨床試験中の被験者が死亡した場合、遺体は冷蔵して「タチバナ製薬」の工場に運び込むことになっていること。またその場所。
また潜入捜査中の国枝刑事と遭遇する可能性もあります。変身中なら大変な騒ぎになるだろうし、そうでなくても良い状況とは言えません。場合によってはしょっ引かれるかもしれません。しかし国枝も令状を持たずに捜査活動を行っているので、そこを突くなりすれば交渉ができるでしょう。
④深雪がこっそり病院に忍び込んでいる可能性があります。ＰＣが「大人しく待っているように」などと言いふくめても、「父親の死を認めたくない」のエゴ判定に成功することによって押しかけてしまうわけです。変身しないで調査しているなら単なる足手まといですが、変身中に出会ってしまうと大変なことになるでしょう。
⑤病院内では末期ガン患者の隔離病棟と霊安室で戦闘が発生する可能性があります。これらの場所を調査していると、隔離病棟では投薬中の被験者が、霊安室では被験者の遺体が、脳漿喰らいとなって襲いかかってきます。また戦闘が発生すると、何らかのワザを用いない限り侵入がばれてしまいます。
⑥抗がん剤を開発している工場の場所は奥多摩の山の中で、病院の資料を見つけるか、国枝から聞き出すことでわかります。
⑦病院で脳漿喰らいを撃退するなどしてＰＣの存在が南原に知れたりすると、工場へ行く途中の山道で大食らいの襲撃を受けます。ここでは周囲に人家はないので、社会注目判定をする必要はありません。
⑧工場では新薬に関する様々な資料が入手できます。公表するなり国枝に渡すなりすれば(魔物に関しては伏せるという事になるでしょうが)「タチバナ製薬」に、この抗がん剤の開発から手を引かせることが出来るでしょう。あまりすんなり進行させずに、各種クラードによる妨害を加えると良いでしょう。
資料の中には被験者のリストが含まれており、その中には深雪の父の名もあります。そこには「副作用深度２まで進行後死亡」と記されています。家族に死亡が報告された頃はまだ生きていて隔離されていたのですが、手違いで隔離病棟から出てきてしまったところを深雪の知人に目撃されたわけです。
決着
工場内には南原専用のラボがあり、彼はそこにいます。ＰＣがそこまで侵入すると、魔物と化した試薬被験者と大食らいを放ちます。これらを倒されるとＰＣに対抗する術は失われるので、抵抗はしません。尋問されれば隠さず喋ります。一通り話した後、南原は証拠隠滅のため、工場の爆破スイッチを作動させます。数分で工場は跡形もなく消し飛び、中に残っているキャラクターは死亡します。(魔物はかりそめの死)自爆を止めるのなら適当なワザで判定することになりますが、難易度は高めにした方が良いでしょう。(８～１０程度)
結末
工場が爆破され南原が死亡すれば、事件の真相は闇に葬り去られます。首尾良く南原を生かして捕らえ、なおかつ今回の事件のいきさつを自白させることが出来れば、(魔物に関しては伏せて)全てが明るみに出ます。「タチバナ製薬」と厚生労働省の官僚の新薬認可をめぐる贈収賄は、大きなスキャンダルに発展するでしょう。
深雪に真実を告げるかどうかはＰＣに委ねられます。途中の経過にもよりますが、ありのままを告げるのは残酷というものでしょう。魔物の存在を知ってしまうと、精神崩壊の危険もあります。
ＰＣの行動次第では国枝に怪しまれ、マークされるようになるかもしれません。逆に親しくなる事が出きれば、便利なコネとなるでしょう。
備考
「厚生労働省の高級官僚」は、今回のシナリオフックには直接登場はしていません。ここを起点にしてキャンペーンシナリオに発展させるのも面白いですね。戻る