シナリオフック第三夜
「白い地獄」

プレイヤー適正人数
2〜4人(最適は3人)

概要
PC達はたまたま福引で当った宿泊券で、雪深い山奥の温泉宿へやってきた。都会の喧騒や血生臭い闘争を忘れた穏やかな休暇。しかし半魔の業が引き寄せるのか、PC達は凄惨な殺人事件に巻き込まれることとなる…

シナリオの舞台
東北地方の山奥にある温泉旅館「おくの」が舞台となります。事件の発端から終息まで、全てここで行われます。

SA
全員共通「正体を隠して殺人事件を無事にやり過ごす(15)」
*最初の殺人事件が発覚してからSAを発表してください。殺人事件をPCの手で解決すれば最高ですが、最悪NPCが全滅して犯人を取り逃がしたとしても、PCが殺されず正体もばれずに済んだら、SAは達成されたものとみなします。

導入
PCのうち誰か一人に商店街の福引で、3泊4日温泉旅行の宿泊券が当ります。喜んで出かけてくれるノリのいいPCに渡しましょう。宿泊券を受け取ったPCが他のPCを誘って、全員宿泊先の温泉旅館に集まるようにして下さい。
学生やフリーターのPCなら、温泉旅館に泊まりこみのバイトに来ていることにしても良いでしょう。


NPC
*今回のシナリオフックは、登場NPCがかなり多いです。(ある程度容疑者や被害者の数が多くないと盛りあがりませんから)もし処理が負担になるようでしたら、必要最低限のNPCだけ残して、あとはイグノラントに格下げしても構いません。スタンドアロンの数が少なくなれば容疑者が絞りやすくなってしまうのはやむをえませんが。

榊 大介(さかき だいすけ)/アンノウンマン・男性・35歳
冬山の写真を撮るため「おくの」に投宿している山岳カメラマン。背は高くないがガッチリした体格で、顔も髭面のいかにも山男風。人当たり良く、誰にでも親しく話し掛けます。だがそれはあくまで表向きだけのことで、正体はここで起きる殺人事件の犯人です。彼の本名は坂本 大樹(さかもと だいき)といい、金城 十三の会社で働いていました。脅迫まがいの強引な地上げの実行役だったのですが、リストラされたことを根に持ち、金城を殺害します。汚い仕事を続けていたため肝は据わっていて、簡単なカマ掛けではボロを出しませんが、犯行の手口自体はズサンなのでそこを突かれると脆いです。

能力値:【知性】4 【感情】3 【肉体】7
血と肉:5
武器:ピッケル(1/ショートレンジ/通)
技:
【知性】<隠す>2<知識:爆発物>2
【感情】<交渉>2<発見>1
【肉体】<隠れる>1<格闘>2<登はん>2<サバイバル>2
絆:
【知性】−
【感情】金城 十三(憎悪)8
【肉体】−
所持品:登山用具一式、一眼レフカメラ、三脚、四駆のツーリングワゴン(盗難車)、時限装置付き爆発物
経験コスト:302
*金城を殺害後は、彼との絆をエゴに変換するのを忘れないようにして下さい。

金城 十三(かねしろ じゅうぞう)/アンノウンマン・男性・57歳
東京で不動産業を営む会社社長です。良く言えば気さく、悪く言えば馴れ馴れしい性格で、特に若い女性のキャラ(PC、NPC問わず)には積極的にちょっかいを出してくるでしょう。バブル絶頂期には色々汚い手口で儲けてきましたが、永らく続く不況で経営方針を穏健なものに転換、坂本(榊)のような連中をリストラしました。そのことを根に持つ坂本に殺害されてしまいます。殺害されるまで榊=坂本に気付きません。もともと気に掛けてもいなかった社員だったし、髭を伸ばして人相も変わっているからです。
*能力値や技は、職業パックの商店経営者を使用します。ただし<運転:四輪>を<知識:法律>に替えてください。

金城 満江(かねしろ みつえ)/アンノウンマン・女性・50歳
金城 十三の妻です。控えめで大人しく、自分から発言することは滅多にありません。金城との夫婦仲は冷え切っているのですが、彼女自身他人に依存して生きていくタイプの人間なので、惰性で夫婦生活が続いています。坂本のことは多少は覚えており、金城殺害後は榊=坂本ではないかと疑いを持ち始めます。
*能力値や技は、職業パックの主婦を使用します。

奥野 順一(おくの じゅんいち)/アンノウンマン・男性・45歳
舞台となる温泉旅館「おくの」の主人です。基本的にはしっかり者で温和な性格なのですが、殺人事件発生後はオタつき気味です。
*能力値や技は、職業パックの商店経営者を使用します。

奥野 香(おくの かおる)/アンノウンマン・女性・44歳
舞台となる温泉旅館「おくの」の女将です。面倒見が良く、殺人事件発生後はオタつき気味の夫をよく助けます。
*能力値や技は、職業パックの主婦を使用します。

沢田 太一(さわだ たいち)/アンノウンマン・男性・39歳
妻子持ちの会社員で、部下にあたるOLの庄野 絵美と不倫旅行の真っ最中です。根が神経質なため、不倫旅行の後ろめたさも手伝って、殺人事件発生後は情緒不安定になってきます。
*能力値や技は、職業パックのビジネスマンを使用します。

庄野 絵美(しょうの えみ)/アンノウンマン・女性・26歳
沢田 太一と不倫旅行中のOLです。人懐こいのは良いのですが、あまり後先の事を考えていません。沢田との不倫もゲーム感覚です。
*能力値や技は、職業パックのビジネスマンを使用します。

紫藤 麗(しどう れい)/半魔(雪女)・女性・?歳
美貌の女流登山家。吹雪で下山ルートを見失い、温泉旅館「おくの」に転がり込みます。その正体は雪女です。たまたま旅館の裏手にある自分の山に帰ってきていたのですが、<自然感知:雪>で殺人事件があったことを知り、自分の山に人間の下衆なやり取りを持ちこんだ人間を見定めるために山を下りてきました。しかし積極的に犯人探しをする気は全く無く、事の経過を見守るだけのつもりでいます。しかし自分に危害が及ぶようであれば、彼女は人間が相手でも容赦しません。人間を手に掛けること自体はなんとも思っていないので、正体がばれないよう宿の人間を皆殺しにすることも辞さないでしょう。
*雪女は森の乙女のバリエーションで、業に<〜:木>とあるのを<〜:雪>にするだけでOK。

かりそめの姿
能力値:【知性】5 【感情】3 【肉体】6
血と肉:25  人間性:41
イニシアティヴ修正:なし
技:
【知性】<情報>1 <隠す>1 <手当て>1
【感情】<発見>1
【肉体】<隠れる>1 <登はん>2 <サバイバル>2
絆:
【知性】−
【感情】仲間の登山家(同好)4
【肉体】同族の姉妹(家族)10
所持品:登山用具一式

真の姿
能力値:【知性】10 【感情】5 【肉体】10
武器:氷の刃(3D6/ショートレンジ/冷)
    冷たい息(3D6/ロングレンジ/冷)
防具:凍った肌(1+修正値)
業:
【知性】<冷たい息>2 <自然感知:雪>2 <緑の迷宮>1
【感情】<精霊との会話>1 <ドライアドの誘惑>1
【肉体】<氷の刃>2 <自然の守り:雪>2
【特殊】《精霊力攻撃:雪》2 《同化:雪》2 《自然の申し子》2(雪、水)
エゴ:
【知性】自然を守る(使命)10
【感情】人間が憎い(悪感情)5
【肉体】自然が恋しい(欲求)10
経験コスト:745

温泉旅館「おくの」従業員
「おくの」で働く従業員で、男3人女2人の計5人です。食事の用意や客間の掃除など、多岐にわたって働いています。基本的にイグノラントとして扱います。

途中の展開
@
PC達は送迎バスで宿にやってきます。宿に到着するまでに、吊り橋を通過する描写を入れてください。この吊り橋は後で爆破され、宿が孤立する状況を作り出すのに一役買います。
序盤はPCにノンビリと「いい旅夢気分(笑)」を味あわせてあげて下さい。バイトとして来ているPCはしっかり働かせましょう。ここまでにNPC各員の人となりを軽く説明しておきます。宿泊客や従業員と絆を結ばせるのも、このタイミングでしょう。この時点で紫藤 麗以外の全てのNPCは宿に揃っています。

A
PCが到着した日の夜半には、外の天候は猛吹雪になります。事件が解決を見るまで、この吹雪は収まりません。

B
PCが到着した日の夜(10時くらい)に、吊り橋が爆破されます。これは榊の仕業です。彼は宿泊客の中で一人だけ、自分の車で来ています。そのため途中で誰にも見られることなく爆発物を仕掛けることが出来るわけです。吊り橋を爆破したのは、殺人が発覚した後に警察の到着を遅らせ、逃走の時間を稼ぐためです。宿にいる者が爆破に気付くには、適当な行為判定を行わせると良いでしょう。外は猛吹雪なので、難易度は若干高めでもいいと思われます。

C
深夜(11時頃)に、榊は金城を宿の外に呼び出します。過去の後ろ暗い仕事の話をネタに呼び出されたため、金城は誰にも気づかれないようこっそりと外に出ます。そこで榊はカメラの三脚で金城を殴りつけ、意識がなくなった所を雪の中に埋めて放置します。結果ろくな防寒着も着ていない金城は30分も立たずに凍死します。
12時頃に金城 満江が夫の失踪に気付いて奥野に相談します。奥野はPCを含む宿泊客に金城の所在を聞いてまわりますが(榊は当然とぼけます)誰も知らないとなると、従業員を数人連れて外へ探しに行きます。そこで初めて金城の死体が発見されるわけです。金城の死体が発見された後、奥野は地元の警察に通報しますが、吊り橋が落ちているため警察は来ることが出来ません。

D
深夜(12時頃)に、紫藤 麗が「おくの」に転がり込みます。この時点で麗は吊り橋が爆破されたことも金城が殺害されたことも知っていますが、当然そのことに関しては何も語りません。

E
宿で殺人事件があったことで、宿泊客の間に動揺が広がります。沢田あたりがヒステリーをおこして、奥野ら従業員とひともんちゃく起すシーンを入れたりしても良いでしょう。

F
金城の死亡発覚後、榊は宿を抜け出して下山するタイミングをうかがっています。当初の計画では金城殺害後、早急に自力で下山するつもりだったのですが(乗ってきた車は盗難車のため、そこから足はつかないと考えています)折からの猛吹雪で実行に移せずにおり、精神的に追い詰まってきます。そのため自分に疑いの目を向ける者があれば、金城と同様の手口を用いて殺害しようとします。この場合PC以外で彼を最初に疑うのは金城 満江でしょう。

G
紫藤 麗は基本的にはずっと大人しくしています。しかし衆人監視のもとで正体を看破される、榊が彼女を手に掛けようとする、殺人犯だと思って彼女に攻撃をしかけるなどの状況が発生すると、本性を現わします。そしてその場にいる人間(PCも含む)を皆殺しにしてでも正体を隠そうとします。PCの方から正体を明かすなどの紳士的な態度に出ても、麗は基本的にはPCに協力しません。ワザなどで交渉を有利に持ちこめば、あるいは協力してくれるかも知れませんが。

結末
最終的な結末は、経過によって幾つかのパターンが考えられます。

@榊の犯行を立証し、逃走や更なる殺人を未然に防ぐことが出来れば、ベストに近い結末でしょう。状況証拠や物的証拠を上手く揃えることが出来れば、十分可能です。途中の展開を参照していただければわかるように、榊の犯行の手口は穴だらけです。

A榊の犠牲者が更に出てしまう事態もあり得ます。PCにその手が伸びることもあるかもしれません。榊はあくまでただの人間なので、戦闘になったらPCにはかないません。しかし榊を殺してしまえばPCの立場は危なくなるでしょうし(正当防衛が立証できれば良いでしょうが)、変身してしまったりすると更なる事態の悪化を招くかもしれません。

B麗と戦闘になる可能性もあります。人知れぬ場所で決着がつけられれば良いのですが、この状況下ではそれも難しいでしょう。麗は目撃者は全て消すつもりですし、PCが変身した所を他のNPCに見つかるとかなりヤバイ事態となります。


備考
このシナリオフックは、リプレイ第三夜「みちのく秘湯湯煙殺人事件」が元になっていますが、途中の展開の雰囲気はかなり違ったものになっていると思います。当初は「火曜サ●ペンス劇場」を狙っていたのですが、どっちかというと「金●一少年の事件簿」ですね、こりゃ。
結局あからさまに怪しいNPCは榊か麗しかいないんですが、上手いことPC、NPC間の疑心暗鬼が高まるように持っていってみてください。それから決着が戦闘によって解決されない場合がほとんどでしょうから、戦闘が好きなGMやプレイヤーには向かないかもしれません。殺人犯もアンノウンマンだし。

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