シナリオフック第四夜
「恩讐はアスファルトの彼方に」

プレイヤー適正人数
2〜4人

概要
バイクの事故で兄を失った少年がいた。しかし彼は単なる事故だとは思わなかった。事故現場付近で暴走族が集会を行っていたからだ。「兄貴が死んだのは族のせいに違いない!」復讐の念に駆られ族狩りを繰り返す少年。時を同じくして、周辺の暴走族を潰してまわる謎の新興チームが出没するようになる…

シナリオの舞台
NPC川口 義生の通う高校とその周辺が主な舞台となります。PCの一部(全員でも可)が彼の学校の関係者であると、導入をスムーズに運べます。

SA
学校関係者(高校生や教師)「川口 義生を守る(15)」
警察官等「暴走族同士の抗争の解決(15)」
暴走族、チーマー等「暴走族同士の抗争に勝利(15)」
その他「自分の生活を守る(15)」

導入
@PCが学校関係者(学生、教師)の場合:

PCは夜遅く、街で川口 義生に出会います。私服姿ですが、布にくるんだ竹刀を所持しており、少々負傷しています。彼は夜な夜な暴走族を襲撃しており、この時もその帰りです。問いただしても適当にはぐらかして逃げるように立ち去ってしまいます。

APCが警察官などの場合:
最近管轄内の暴走族同士の抗争が激化しており、一般人への被害も心配されるようになってきました。そこで取締りが強化されることになりました。PCはパトロール等に尽力することになります。もしPCが資料編纂課に所属しているなら、抗争の一端を担っている新興のチームが魔物が裏で糸を引いているかも知れないと言う情報も入手できます。

BPCが暴走族、チーマー等の場合:
PCの所属するチームは激化する暴走族同士の抗争の真っ只中にいます。抗争の発端は「無銘騎兵隊」と呼ばれる新興チームで、周辺のチームを片っ端から潰していき、傘下に加えています。PCの所属するチームのリーダーは何とかこの抗争を乗り切り、あわよくばトップに立とうと何らかの行動を起します。

Cその他の場合:
たまたま深夜に外出していたPCは、国道をけたたましく走り去る暴走族の集会を目撃します。彼等が先の角を曲がって見えなくなった直後、立て続けに凄まじい激突音が響き、駆けつけると先程の暴走族が事故って全滅しています。そしてその近くに別の暴走族の一団がおり、クラクション一つ鳴らさずあっという間に立ち去ります。この導入はPCの全てが@〜Bに当てはまるとしても、誰かしらに遭遇させてください。

NPC
川口 義生
(かわぐち よしき)/アンノウンマン・男性・16歳
剣道部に所属する普通の高校生です。半月ほど前、兄の俊生(としき)をバイクの事故で亡くしています。事故は単独のものでしたが、現場付近で暴走族の集会があったため、暴走族のせいで事故死したと思いこんでいます。(実際は全くの無関係)夜な夜な暴走族の構成員を襲って、どこのチームが兄を事故らせたのか探っています。族への憎悪に凝り固まっていますが、根は善良で生真面目な少年です。

能力値:【知性】4 【感情】5 【肉体】5
血と肉:4
武器:竹刀(1/ショートレンジ/通)
技:
【知性】<情報>1
【感情】<人にやらせる>2 <発見>1
【肉体】<隠れる>1 <白兵>2 <走る>1
絆:
【知性】学校の教師(仕事)6
【感情】学校の友達(友情)5
【肉体】−
エゴ:
【知性】犯人を見つける(使命)8
【感情】暴走族への憎しみ(悪感情)10
【肉体】−
所持品:制服、教科書とノート、CD、鞄、自転車、携帯電話、
経験コスト:380

江波 トオル(えなみ とおる)/アンノウンマン・男性・19歳
武闘派で鳴らす暴走族「走紅蓮(ラングレン)」を率いる総長です。上昇志向の塊で、特●の拓に出てきそうな極悪な男です。半月程前から現われた新興チーム「無銘騎兵隊」が周辺のチームを片っ端から潰しているのに乗じてさらに勢力を拡大し、関東制覇(笑)に乗り出そうと企んでいます。また族狩りをしている学生がいるとの情報も得ており、自分達にちょっかいを掛けてくるならシメてやろうと考えています。俊生の事故のとき現場近くで集会を行っていましたが、事故と直接関係はありません。

能力値:【知性】4 【感情】5 【肉体】6
血と肉:6
武器:バタフライナイフ(1/ショートレンジ/通)
    特殊警棒(1/ショートレンジ/通)
技:
【知性】<運転:二輪>3 <情報>1 <隠す>1
【感情】<売買>1 <交渉>1
【肉体】<格闘>2 <白兵>2 <走る>1 <隠れる>1
絆:
【知性】チームOB(尊敬)6
【感情】「走紅蓮」メンバー(手下)5
【肉体】−
所持品:改造バイク、携帯電話、特攻服
経験コスト:424

無銘鉄騎(むめいてっき)/魔自動車・男性・0歳
義生の兄、俊生がバイクで事故死したとき、死体の首を核にして発生した魔自動車です。見かけ上はロードレーサー型バイクに搭乗した普通の街乗りライダーといった風体です。事故現場に何度も訪れた義生の憎悪の感情を受け、本能的に暴走族を狩り立てています。集会中の暴走族を殺してはクラード「スピードイーター」として従え、また別のチームを襲います。自己主張の強い暴走族の中にあって全く名乗りをあげずに淡々と他のチームを潰してまわるこの一団は、誰言うともなく「無銘騎兵隊」と呼ばれ恐れられています。

能力値:【知性】11 【感情】9 【肉体】12
血と肉:32(ライダー:6)
武器:フロントカウル(3D6/ショートレンジ/通)
   ガソリンショット(2D6/ロングレンジ/火)
防具:頑丈な車体(2+修正値)
業:
【知性】<見えない弾丸>1 <ラジオトーク>1 <ドライブへの招待>1
【感情】<エンジンハウル>1 <スピードイーター召喚>2
【肉体】<チャージ>2 <ハンドルさばき>2 <オイル撒き>1
【特殊】《ゴーストライダー》1 《ターボブースト》1 《駐車場》1
エゴ:
【知性】暴走族の壊滅(使命)8 競争相手がほしい(欲求)3
【感情】じっとしているのは嫌(嫌悪)9
【肉体】暴走族が憎い(悪感情)9 スピードを感じる(欲求)3
絆:
【知性】−
【感情】−
【肉体】川口 義生(同境)6
経験コスト:490

*アーキタイプ「魔自動車」は「魔獣の絆公式ホームページ」の投稿アーキタイプに掲載されていた青行灯 さんの作品を使用しています。以下はシナリオ中に使用する業のリストですが、全てのデータを見てみたい方は
こちらへどうぞ。

<見えない弾丸><射撃>として扱う。ガソリンショットを使用するための業。
<ラジオトーク>魔剣の<口寄せ>に同じ。
<ドライブへの招待>魔剣の<妖刀の誘い>に同じ。
<エンジンハウル>恐ろしいエンジン音を発して威圧する。相手は達成値と【知性】で対抗判定。失敗すると1分間行動不能となる。
<スピードイーター召喚>クラード「スピードイーター」を[達成値]体召喚する。達成値分〔人間性〕が減る。(クリティカルの場合は2だけ減少する)
<チャージ><格闘>に同じ。フロントカウルを使用するための業。
<ハンドルさばき><回避>に同じ。また<運転>としても使用できる。
<オイル撒き>マフラーからオイルを撒いて足場を悪くする。相手は達成値と【肉体】で対抗判定。失敗すると[レベル]分間【肉体】を使う行為判定の難易度に差分値がプラスされる。
《ゴーストライダー》魔剣の《人鞘》に同じだが、ダメージを受けた際〔血と肉〕は魔自動車本体から減らす。ライダーを狙うと宣言した場合、命中時の差分値が5以上ならライダーに命中、5未満なら全くの外れとなる。
《ターボブースト》人狼の《音よりも疾く》、自動人形の《加速装置》に同じ。
《駐車場》異空間にある駐車場に「駐車」して隠れる。基本的に居場所を調べることは出来ない。10分隠れるごとに〔人間性〕が1づつ減る。

暴走族「走紅蓮(ラングレン)」
江波 トオルの手下の暴走族です。江波の命令でPCや義生を襲います。基本的にクラードとして扱います。また他の暴走族のデータも基本的にはこのデータを使います。

能力値:【肉体】5
血と肉:10(x数グループ)
武器:チェーンや鉄パイプ(1/ショートレンジ/通)
   バイクや自動車で体当たり(1D6/ショートレンジ/通)
防具:(自動車に乗っている者のみ)自動車の外板(2)
技:【肉体】<運転>(二輪、四輪共通)2 <格闘>1
イニシアティヴ値:固定5

警察官
頻発する暴走族同士の抗争を取り締まるため、各所をパトロールしています。基本的にクラードとして扱います。

能力値:【感情】5
血と肉:4
武器:警棒(1/ショートレンジ/通)拳銃(1D6/ロングレンジ/通)
技:【感情】<会話>2 <心理>2 *警棒と拳銃を使うときはワザなしで【感情】で判定する。
イニシアティヴ値:6固定

スピードイーター
無銘鉄騎によって殺され、車ごとアンデッド化した亡者です。

能力値:【肉体】5
血と肉:達成値分
武器:車体(体当り)(1D6/ショートレンジ/通)
業:【肉体】〈終わりなき暴走〉2(〈格闘〉と〈運転〉を兼ねる)
イニシアティヴ値:8固定

途中の展開
@
義生に族狩りのことを問いただすと否定はしません。しかしやめる気も毛頭無く、兄の仇を討つと言って聞きません。(犯人を見つける、暴走族への憎しみなどの高レベルエゴを持っているためです)説得しようと思ったら「愛」を使ってエゴのレベルを下げる必要があるでしょう。

A
<情報>などのワザで俊生の事故の事を調べると、事故の状況がわかります。現場は見通しの良い直線道路です。スピードはそう出ていなかったようですが、何らかの要因でハンドルを取られ転倒、運悪く首がガードレールに乗っかり切断されてしまいました。ハンドルを取られた原因は単に飛び出した猫を避けようとしただけで、暴走族は全く関係ありません。切断された首は未だに見つかっていません。(無銘鉄騎の核になっているためです)

B
江波は族狩りの犯人が義生ではないかと大体の目星をつけています。そのためPCが義生と行動を共にしたり、族の抗争や事故の事を調査していると「走紅蓮」の襲撃を受けます。

C
暴走族のメンバーと交渉する、シメあげるなどすると「無銘騎兵隊」のことがある程度わかります。
・彼等はチームとしての名乗りは全くあげず、他のチームを無差別に襲撃しています。
・潰したチームを傘下に加えてどんどん勢力を伸ばし、今では「走紅蓮」に次ぐ勢力になっています。
・統一した特攻服などは無く、元のチームの特攻服のまま行動しています。
・リーダーとおぼしき通称「無銘鉄騎」と呼ばれる男は、普通の街乗りライダー風で全く族らしくない風体です。常にフルフェイスのメットを着用し、素顔を見たものはいません。

D
PCが情報収集等のため、暴走族の集会の場所にいると、そのチームが「無銘騎兵隊」に襲撃を受けます。PCが何も手を出さなければあっという間に暴走族は壊滅します。その後倒れていた暴走族がふらふらと立ち上がり「無銘騎兵隊」と共に去っていきます。彼等はすでに死んでおり、スピードイーターに変貌しています。PCが「無銘騎兵隊」を追跡しても、無銘鉄騎だけは《駐車場》で逃げ切ってしまいます。

E
義生が同行中に無銘鉄騎に遭遇すると「あれは兄貴だ!」と言い出します。バイク、ヘルメット、服装が俊生の物と同じだからです。無銘鉄騎はヘルメットを取ったりシールドを開けたりしないので、本人かどうか確認することは出来ません。

F
調査が進むなど状況が進展すると、PCが同行していない頃を見計らって「走紅蓮」が義生を拉致します。SAを遵守するなら救出しに行くことになるでしょう。救出に向かうと「走紅蓮」が「無銘騎兵隊」に襲撃を受けます。PCが何もしなければ「走紅蓮」は皆殺しになります。(もちろん江波も死にます)「無銘騎兵隊」は現場付近の人間を皆殺しにしようとするので、義生の身も危険です。


決着
無銘鉄騎を倒すと「無銘騎兵隊」も全滅します。倒された無銘鉄騎のバイクの車体は消え去り、ヘルメットの中から俊生の首が転がり出ます。ほっとした表情を見せた後、俊生の首も消え去ります。俊生の魂は魔物である無銘鉄騎に拘束されていたわけです。無銘鉄騎に止めを刺せなくても俊生の魂は開放できます。

結末
「無銘騎兵隊」が壊滅すれば、暴走族同士の抗争は一応の終結を見ます。江波が死ななかったとしても「走紅蓮」はほぼ再起不能でしょう。義生と江波はアンノウンマンなので、最後の決戦で精神崩壊の危険があります。もし義生の拉致を阻止するなどして最後の決戦の場に義生がいないのであれば、被害は最小限に食い止められるでしょう。義生のエゴを減らして兄の死は事故だったと納得させることが出来ればよりベターでしょう。

備考
このシナリオフックは今まで掲載したものと違い、リプレイにはなっていません。プレイはしたんですが、プレイヤー5人ってのは早坂の手には余りました(苦笑)どうかうまいこと仕切って早坂の仇を討ってください。展開の鍵は復讐の思いに凝り固まった義生の心をいかに解きほぐしていくかでしょう。途中までは「暴走族が犯人では?」とのミスリードが有効です。そのためには「走紅蓮」と江波を憎憎しげに演出しましょう。また無言で襲い来る「無銘騎兵隊」の不気味さを強調してください。

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