はじめの一歩

北朝鮮は、したたかで外交上手で手強い交渉相手である。と、よく言われます。
しかし私には、とてもその様には思えません。
昨年9月の日朝平壌宣言以降の、一連の北朝鮮の行動を見る限り、我が国以上の外交下手と
言っても過言ではありません。
黙っていればいいものを、米国に核開発を継続していたことを告白して、重油の供給を止め
られ、ならばと核施設を再稼動させ、IAEAの査察官を追い出して世界中の激しい非難を
浴び、米国がイラク戦争でまざまざと見せつけた圧倒的な軍事力にびびったのか、米国と、
中国との3者協議に応じたものの、よせばいいのに核兵器の保有宣言をしてしまいました。
我が国との関係に限って言えば、そもそも昨年の日朝首脳会談の席上、金正日は拉致の事実
を認めたのだから、その全容を明らかにし、10月に帰国を果たした、5人の拉致被害者の
家族と北朝鮮に未だ残る拉致被害者全員を、すみやかに解放していれば、事はここまでこじ
れなかったはずです。北朝鮮は強気な対応によって、自らを追い込んでしまったのです。

先月15日に有事法制関連3法案が、衆議院において出席議員の9割の圧倒的多数の賛成で
可決されました。参議院でも可決されるのは確実で、今国会で成立することでしょう。
普段は、やる気があるんだか、ないんだかはっきりしない国会議員たちも、お国の一大事と
あらば、現時点で何をすべきか、きちんと考えて行動する事ができるのだ。ということが、
わかって私は少し安心しました。
本来ならば我が国は、日本人の拉致の事実が明らかになり、北朝鮮が拉致被害者の解放を、
拒んだ時点で米国に頼らずに武力行使も含めて、自力で救出をしなければならない
のですが、
非現実的な平和憲法を持つ我が国は、なすすべもなくじっと耐えるしかないのです。
国家権力の役割は、テロも含めた外国および武装集団の攻撃から、国民の生命、財産を守る
事にあります。今の今まで、敵からの攻撃に、どのように対処するのか取り決めがなされて
いなかったとは、怒りを通り越して呆れるばかりであります。
さらに次いで23日の日米首脳会談において、北朝鮮に対し「対話と圧力」で臨み、今後も
挑発が続くのであれば「より強硬な措置」を講じる事で一致しました。
ようやく日本政府も、祖国を守る気概を取り戻したようです。

しかし、有事法制の成立は、はじめの一歩に過ぎません。
これは言って見れば、武力攻撃に際して政府と自衛隊がどのように動くのか確認しただけの
話で、国土の防衛の為には、まだまだクリアしなければならない懸案がたくさんあります。
たとえば防衛力の増強も、緊急の課題の一つです。
我が国には、外国からの攻撃を独力で撃退できるだけの、実力はありません。
現時点では、米国の援軍をあてにするしかないのです。ましてや拉致被害者の救出など夢の
また夢であります。自衛隊には弾道ミサイルがありませんし、航空母艦も戦略爆撃機もあり
ません。それは何故でしょうか?そう、憲法第九条がそれを許さないのです。
皮肉なことに我が国の平和憲法が、自国の平和を危険にさらしているのです。
日本国憲法前文は
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保
持しようと決意した。」
と謳っていますが、北朝鮮と朝鮮総連の、公正と信義に信頼したが
為に、100名単位の日本人が拉致されたのです。
この様なありさまで、我が国を日帝呼ばわりし、その打倒を国是としている危険極まりない
テロ国家から、この貴き豊葦原の瑞穂の国を、守ることができるのでしょうか?
すべての日本人が平和のうちに生存する権利を脅かすような、我が国の憲法は、残念ながら、
神の摂理(みはかり)にそむくもの。と言わざるを得ません。03/06/02
トップへ戻る