のらりくらり

2月13日の衆議院予算委員会で、川口外相が米国のイラク攻撃に対し、「支持をするとか
しないとか、今の時点で言わないことが、我が国の国益にかなうものである。」との趣旨の
発言をしたことについて、各方面から「思考停止」だとか「情けない」との非難を受けまし
たが、私は、イラク問題に対する一連の外務省の対応を、極めて適切かつ賢明であると思い
ます。
これは、皮肉などではありません。珍しく、外務省は、国際社会における我が国の立場を、
きちんと理解しているのです。冷静に現実を直視していると言えましょう。
我が国は、平和主義を憲法の理念として掲げ、イラク攻撃に加担するなどもっての他である。
という事は、子供でもわかる話でありますが、日米安保体制の束縛から逃れることは、とう
てい不可能であります。
外務省を批判する方々は、もうお忘れになってしまったのでしょうか?
我が国は、昭和20年にポツダム宣言を受諾し、連合国(実質的には米国)に無条件降伏を
したのです。無条件降伏とは言って見れば、「あなたに身も心も捧げます。もう好きにして」
と言う意味です。それ以後今日まで、米国はあたかも我が国を属国のごとく扱ってきました。
とは言え、大日本帝国憲法改正、財閥解体、農地改革、労働組合の容認、婦人参政権の付与
などに代表される、数々の民主的な占領政策はそれなりに評価されるべきものではあります。
昭和26年に、サンフランシスコにおいて講和条約が調印され、我が国は晴れて独立を認め
られ、国際社会に復帰を果たしましたが、同時に日米安全保障条約も調印され、駐留米軍の
撤退どころか、逆に増強される始末でした。
まあ、これは前年に朝鮮戦争が勃発したこともあり、やむをえなかったことかも知れません
が、いずれにしても、我が国は米国に対し、恐ろしくて言いたいことが素直に言える状況に
はなかったのです。

ところで、日本政府がイラク攻撃について態度を明確にしないことに対して、2月17日の
テレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」のオンエアーの中で、コメンテーターの
朝日新聞の人間が
「我が国が、北朝鮮との問題を解決するためには、アメリカの軍事力に
頼らざるをえないから、今はアメリカの機嫌を損ねないように、イラク攻撃に対しての発言
を控えている。と政府は国民に説明すればいい。」
と言う内容の発言をしましたが、
この発言は、ただでさえナーバスになっている合衆国市民の感情を逆なでする、配慮を欠く
発言と言わざるをえません。なぜなら、圧倒的多数の市民はイラク攻撃にさえ反対をしてい
るというのに、「なぜ、日本のために、米国の若者が血を流さなければならないのか?」
と、市民たちが激しい憤りを感じるであろうことは、容易に想像できるはずです。
拉致問題について思いやりに欠ける発言を繰り返してきた、この築地の新聞社にはそもそも
国益を守るという視点が、完全に欠けているとしか思えません。

所詮、外交とは、狐と狸の化かしあいに過ぎません。残念ながら、清く明るく直く正しくと
いうわけにはいきません。口は災いのもと。言わぬが花。相手には本心を悟られては絶対に
いけません。現行憲法下において、自衛隊にできることはたかが知れているのだから、米国
に期待を持たせるような、言動は慎むべきです。何と言われようと、のらりくらりと行くが
よい。03/02/18
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