三代目・澤村田之助ものがたり。
田之助のことを知ったのは、10年ほど前、山田風太郎の明治小説で。ちょこっと出てきて強烈な印象を残しました。脱疽で両脚と両手を切断しても舞台に立ち、34歳で狂死したというんだから。
皆川さんの文章はすらすらと読み易く、拾い読みのつもりで本を開いたら最後までまともに読み終えてしまいました。
田之助付きの大部屋役者が冷静な目で観察して書いている体裁。五代目菊五郎と九代目團十郎も同年代なのでちゃんと出てくるし、時代を映す役割として月岡芳年(血みどろ絵で有名な)も、語り手の友人として出てきます。歌舞伎の世界では自分を殺して生きている語り手が、唯一人間らしく話せる相手として芳年を持ってきたのはうまい。
黙阿弥が、小團次・左團次や菊五郎に当ててどんどん新作を書いて小屋にかけていく様子もわくわくしました。当時の勢いが目に見えるよう。
菊五郎と團十郎は(この中ではまだ羽左衛門と権十郎)写真の面影を思い浮かべながら読んだけれど、どうしても当代の姿がちらついちゃう(^^ゞ 他の役者たちも、全部当代の顔が浮かんじゃいますねぇ。養子に行ったり来たりで当代とは顔が全然違うのはもちろん、性格だって芸風だって違うのに困ったなあ。田之助だけは逆。風太郎小説で三代目の美貌がしみついちゃっているから、当代を見たときにあまりに違うと思ってしまい。いや当代のあったかい雰囲気は好きですよ!
2003.12.5記
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