小児の頭部外傷

お子さんが頭を打ったということで病院を訪れる方が非常に多いです。当院でも毎月約50名ものお子さんが診察にかかられます。そこで、小児の頭部外傷に関してふれます。

1.なぜよく頭を打つのか。

1)頭でっかち(新生児は4頭身、2歳で5頭身、6歳で6頭身)なので、重心が高いために転倒しやすい。
2)身長が低いために視点が低く、脳が未発達であるために視野が狭く、興味の対象に関心が集中してしまい、全体をみたり状況判断力や危険を予知する能力が乏しい。
3)自分の体重を支えるだけの腕力がない。
4)走り回ることが多い。
などがあげられます。

2.嘔吐

小児の頭部外傷には嘔吐がつきものです。約1/3は嘔吐するとの統計があります。世間では嘔吐すると重症になるとか言いますが、小児の場合は必ずしもあてはまりません。
嘔吐の機序は、1)嘔吐中枢の機能障害、2)代謝異常による一過性脳浮腫、3)自律神経の調節障害(高ケトン血症)、4)homeostasis(体内環境を一定にする働き)が未熟、などが考えられています。いずれにせよ、
小児は頭部外傷後に吐きやすいのです。

3.対処の仕方

場合によって異なるでしょうが、一応の目安として、以下の点に気をつけて下さい。

1)すぐに泣いたか
すぐに泣けば意識障害はないと考えます。泣かずにぐったりしている場合は救急車を呼んですぐに病院に行きましょう。救急車が来るまでは呼吸状態を観察し、あまり体を動かさずに、頭をやや高くして横に向かせて静かに寝かせて待ちましょう。数分後に意識が回復して泣き出しても、念のために病院で検査を受けたほうがいいでしょう。
 
2)傷の有無
頭皮から出血していたら、とりあえず清潔な布かタオルで圧迫して止血するまで待ちましょう。圧迫してもなかなか止まらない場合は病院に行きましょう。たんこぶ(皮下出血)ができていたら濡らした冷たいタオルで冷やしましょう。
 
3) 嘔吐した
1〜2回の嘔吐だけで意識障害やけいれんなどの症状がなければそれほど心配することはありません。嘔吐した後はむしろ元気なることが多いようです。しかし、嘔吐が何回も続く、嘔吐の後で気分がすぐれないなどの症状があれば、病院に行きましょう。上述しましたように嘔吐だけでは心配ありません。
 
4)手足の動き
泣いていても、手足の動きが普通なら心配ありません。子供は正直ですから、麻痺や骨折があれば、その手足を動かそうとしません。ですから、もし手足の動きがおかしければ、病院に行きましょう。
 
5)検査について
病院に来られて、診察後にレントゲン検査をするのですが、大半は骨折の有無を見る単純撮影と言われる骨の検査をします。また、CT scanという脳を見る検査もすることがあります。このCT scanは、検査時に最低でも5〜10秒くらいは頭を動かさずじっとしていなければなりません。ですから、たいていの場合、医師や親が子供の頭を押さえて無理やりすることになります。

6)いつまで用心するか
外傷後しばらくは意識もあり元気にしていても、数時間たってから意識障害などの病状が出る例があります。また、外傷後数分から数日後に症状がでたり、極端な場合では数ヵ月たってから症状がでることもあります。ですから、どのくらい時間がたてば絶対に安心できるということは言えません。しかし、いつまでも心配してもきりがありませんので、一般に、2〜3日以上たっても症状がなければ、ほぼ安心してよいと考えます。

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