ダンディ・ウォーカー症候群(Dandy Walker Syndrome)
定義
ダンディ・ウォーカー症候群(DWS)は、第4脳室とくも膜下腔の交通障害による先天的後頭蓋窩嚢胞形成で、小脳テントの挙上を伴う後頭蓋窩の拡大、脳室拡大、第四脳室に続くのう胞、小脳虫部の無・低形成を呈する症候群です。
当初ダンディらは第四脳室の出口であるマジャンディ孔やルシュカ孔の閉塞が原因と考えましたが、現在では正中線上における小脳の癒着障害を伴う菱脳の発育停止説が有力です。原因としての遺伝子解析も進められています。
真のDWSは稀であり、小脳虫部低形成が不完全なもの、静脈洞交会部高位を伴わないものはダンディ・ウォーカー・バリアント(類似症候群)と呼ばれています。正確にはBlake’s pouchや後頭蓋窩くも膜のう胞のことが多いようです。
発生率
25000〜35000出生に対して1例程度とされています。水頭症例の1〜4%程度です。
症状
大きく水頭症の症状と全身合併症による症状があります。症状の70-90%が生後1年以内には出現してきます。
主なものは、頭囲拡大、発達の遅れ、けいれん、聴覚障害、視覚障害などです。
1才以下では水頭症による頭囲拡大が最も多く、1才以上では精神運動発達遅滞、頭蓋内圧亢進による頭痛、嘔吐が多くなります。
脳神経麻痺、小脳失調、運動麻痺などの局在的な神経障害の頻度は意外と少ないようです。そして後頭蓋窩病変ですから小脳機能障害としての眼振や小脳失調も考えられますが、予測されるほど多くないのが実情です。
発達の予後としては、DWSそのものとしての障害以上に、失われた機能を代償する周囲の神経系の異常の有無が総合的な予後に大きな影響を与えているとされています。
合併症
中枢神経系異常:脳梁欠損(最多で7.5〜40.5%)、後頭部脳瘤(10.5〜17.5%)、中脳水道狭窄、脳皮質形成障害、など
視力・聴力障害
発達障害:水頭症、脳梁欠損、脳皮質形成障害によるもの
てんかん
全身合併症 約1/4に認められる
心奇形、顔面奇形、骨格系(特に四肢)の奇形、泌尿器系の奇形、皮膚異常 など
診断
出生後のMRIで確定診断がされます。
最近は超音波検査やMRIによる出生前の胎児診断も増加してきています。
治療
根本的な治療法はありません。
水頭症やのう胞による症状がある際にはシャント術を行います。
予後
死亡例では心疾患に起因することが多く、5〜48%と様々です。
ある報告では、知能の正常は5%、正常近似が3%と、知能に関する予後が不良とされています。また運動面での障害でも約半数が不良であったとされています。
参考資料
小児脳神経外科学 横田晃監修 金芳堂
胎児期水頭症 診断と治療ガイドライン 改定2版 金芳堂
ダンディー・ウォーカー・ネットワーク
http://www.geocities.jp/dandywalker2001/information.htm