脳を覆っている膜のひとつに“くも膜”があります。そのくも膜の下に、通常より多く水がたまってしまう先天的(生まれつきの)な異常です。頻度は人口の0.1から数%とされています。
無症状なことが多く、脳の精密検査(CTスキャンやMRI)で偶然に見つかることが多いのですが、中には頭痛やてんかんや出血を生じることがあります。脳腫瘍とは異なり、急激に大きくなることはめったにありません。
一般に治療は不要ですが、非常に大きなものや症状がある場合は治療を要する場合があります。一般にはのう胞のある頭からお腹に管を通して水を抜く方法(のう胞短絡術と言います)を行ないます。その他には、開頭術を行って直接のう胞の被膜を切除する方法や、内視鏡を用いてのう胞の被膜を開放する手術も行なわれています。
日常生活で何々をしてはいけませんという禁止事項はないと考えてください。学生では、学校での体育の授業は参加してもらいます。しかし柔道、空手、ラクビー、ボクシングは頭部を強く打撲する可能性が高いのですから、やらないように指導します。なぜなら、過激な運動により“くも膜のう胞”の中を走っている血管が切れて、硬膜下血腫といって、脳の表面に出血して、血液の固まりができることがあるからです。このような際には激しい頭痛や吐き気がおきます。そのような際にはすぐに脳神経外科を受診してください。
CTスキャン:向かって左の黒い部分がくも膜のう胞です