(菊紋) 近江守源久道

   上作 京五鍛冶





新刀(延宝頃 約340年前)
財)日本美術刀剣保存協会 
  特別保存刀剣鑑定書附







長さ73.8cm 反り1.5cm 目釘穴1個
元幅3.25cm 先幅2.25cm 元重0.7cm


 近江守源久道は堀六郎兵衛いい、寛永三年江州野洲群野村に生を受けます。 上京し二代伊賀守金道の門人となり、三品姓を名乗ることを許されます。 久道と銘し、寛文元年近江大掾を受領、同年近江守に転任。 朝廷より菊紋を切ることを許され、茎に十六葉の菊紋、または枝菊を切り添える。 正徳元年八十五歳にて逝去。 当時より京五鍛冶の一人として挙げられる名工です。

 姿、鎬造り、庵棟、身幅広く、反りややつき、中切先。 鍛え、小板目肌つみ、地沸よくつき、細かに地景入る。 刃文、直ぐに焼き出し、その上は大互の目乱れに丁子交じり、匂深く、沸よくつき、小足・長足入り、金筋・砂流しかかり、匂口明るく冴える。 帽子、小丸ごころに先掃き掛ける。 茎、生ぶ、先刃上がり栗尻、鑢目筋違い、目釘穴一。 差し表ハバキ元中央に菊紋を、その下に長銘を切る。 

 元々三品一族ではありませんでしたが、二代伊賀守金道が直々に京へ連れて帰り、名工に育て上げます。 三品姓を名乗らせ、京五鍛冶に推挙しては禁裏の御用を務めさせ、近江守久道家を興させるなど、その異例とも思える重用ぶりからは久道の抜きん出た才能が窺えます。 
 堂々たる姿に、華やかな大互の目、大丁子を焼いて、地鉄も精美で、匂口が明るく冴え、鎌倉中期の福岡一文字を思わせる会心の出来映えです。