出羽大掾藤原国路
 
   上々作




  新刀 (約380年前)
財)日本美術刀剣保存協会 
  特別保存刀剣鑑定書






長さ69.1cm 反り1.5cm 目釘穴1個
元幅2.9cm強 先幅1.9cm 元重0.7cm
 

 国路は新刀鍛冶の祖堀川国広門下の高弟で、国広没後の慶長十九年から元和元年の間に出羽大掾を受領したと言われています。 国路の作にはのたれ込んで先の尖った、所謂三品帽子が多いことや、初期作に「国道」と“道”の字を使うこと、そして晩年には「来国路」と“来”を冠しているものがあることなどから、三品家と何らかの関係があったと推せられ、一説によると国広没後、受領の世話人であった伊賀守金道に学んだとも言われています。 国広門下中随一の器用人で、備前伝以外の各伝に通じており、とりわけ相州伝には目を見張るものがあり、志津写し、左文字写しなどに傑作があります。

 本作は元先に幅差がつき、踏ん張りごころのある反りの深い造り込みで、慶長から寛文への過渡期である慶安頃の体配を呈す。 鍛え、板目肌立ち、杢目・流れ肌交じり、ややザングリした肌合となり、地沸厚くつき、地景よく入る。 刃文、直ぐ調に浅くのたれ、互の目、尖り刃、角張る刃など交じり、足よく入り、匂深く、沸よくつき、湯走り・飛び焼きを交え、砂流しが総体にかかり、金筋よく入り、匂口明るく冴える。 帽子、乱れ込み、掃きかけながら小丸に返る。 茎、生ぶ、先深い栗尻、鑢目大筋違い。 

 互の目乱れを主調に、小のたれ・尖りごころの刃などが交じり、足入り、匂深く、小沸が厚くつき、金筋・砂流しが盛んにかかる等の出来口で、国路が最も得意とした相州伝、志津を巧みに写した力作。 焼の出入りに高低が見られ、華やかに乱れる刃取りに、沸が厚くついた様は、正に国路の真骨頂であり、また鍛えが肌立ち気味でザングリとした独特肌合いや、三品風を呈した帽子、焼刃に逆ごころがあるところ等に同工の特色がよく表示されています。 焼き頭の処々に湯走りがかかり、飛び焼きを交える様などは、古作の趣があり、国路の個性が遺憾なく発揮された一口で、同作中の優品と言えるでしょう。