薩國臣奥孝左衛門平元平
  天明三年癸卯二月日鍛之


  上々作




  新々刀 (1783年)
財)日本美術刀剣保存協会 
  特別保存刀剣鑑定書









長さ68.6cm 反り0.4cm 目釘穴1個
元幅3.05cm  先幅2.0cm 元重0.8cm
 

 元平は延享元年(1744年)に奥元直の長男として生まれ、通称を孝左衛門という。 安永六年(1777年)には家督を相続、天明五年(1785年)には薩摩藩工となり、文政九年(1826年)八十三歳にて没す。薩摩新々刀きっての名工で、伯耆守正幸と双璧をなす。 作品は互の目に小のたれ、尖り刃等を交えて、沸深く、荒沸がつき、金筋・砂流しが盛んにかかるなどの相州伝を得意とする。

 姿、鎬造り、三ッ棟、反り浅く、元先の幅差がつき、中切先つまる。 鍛え、板目肌に杢目、流れ肌交じり、よく詰み、地沸厚く、地景よく入る。 刃文、のたれ調に小互の目交じり、匂一段と深く、沸厚くつき、金筋かかる。 帽子、焼き深く、表は小乱れがかり焼き詰め風に先掃き掛ける。裏が直ぐ調の小丸となる。 茎、生ぶ、先細って入山形、鑢目筋違い、目釘穴一。

 本作は元平四十歳の時の作。 身幅の元先で幅差がつき、反り浅めにして、中切先の詰まった寛文新刀然とした姿に、沸厚く、匂口の深いのたれを基調とした刃文を焼くなどしており、まさに大阪新刀の天才“井上真改”を写した意欲作。 地鉄は厚く沸をまとい、弛みなく冴えわたり、焼き刃は薩摩刀の特徴でもある荒沸が鳴りを潜め、細かできらびやかな沸が密につき、あたかも真綿のように見える様などからは、大阪正宗真改に十分肉薄していると言えるでしょう。
 常々観る薩摩刀の典型とは異なることから、特別な注文により制作されたものであると思われ、また、銘文に「奥孝左衛門」と本名を入れているのは極めて稀であり、他に例を見ないことからも本作に込めた思いの強さが感じ取れます。 
 不惑を迎え、円熟した技術と充実した気力以って、新刀きっての名人井上真改を写した元平会心の作です。