無銘 長重

   上々作






  古刀 (南北朝期 1334年頃)
財)日本美術刀剣保存協会 
  第十六回特別重要刀剣指定







長さ72.2p 反り2.0cm 目釘穴1個
元幅2.9cm  先幅2.2cm 元重0.8cm
 

 南北朝時代の備前国にあって、所謂相伝備前の旗頭として兼光一派と並び称されるのが、長重・長義の一派である。 古来の説では、長重を長義の弟としているが、現存する作刀に徴すると、長重に建武元・二年紀及び康永元年紀などがあるのに対して、長義に は正平十五(延文五)年を遡るものがないことから、今日ではむしろ長重を長義の兄とする説が有力となっている。 この刀は、板目に生を交えた鍛えに、乱れ映りが立ち、刃文は浅いのたれ調に小互の目・小丁子などが交じり、足・葉が繁く入り、刃中よく沸づき、帽子は乱れ込んで尖りごころとなるなど、相伝備前、就中、長義一類の特色を顕著に表示しており、中でもやや焼きが低く、浅いのたれ調に小互の目を交えた刃取りの態に長重と鑑すべきものがある。 幅広で中鋒が大きく延び、重ねが厚く手持ちの重い頑健な体配は堂々として力強く、刃中もさかんに働いて、匂口が明るく冴え、姿・地刃全てにわたって頗る健全であり、且つ 出色の出来映えを見せている。(特別重要刀剣等図譜より)

大磨上であるが身幅広く、中切先わずかに延び、重ね十分である。 鍛は板目に地景入り、地沸細かにつき、刃寄に 沸の小飛焼があり、樋寄に幽かに湯走りごころがある。 地色に黒みがあって冴える。刃文小乱に小丁子ごころ交じり、足・葉入り、帽子乱れ込 み、やや地蔵風に返り、よく沸づいて掃掛ける。 表裏に棒樋を掻いているが、暦上の包)ごとく表は通して裏は流れている。 相州鎌倉住助真、竹屋道意重代と昔の鞘書があり一応首肯されるが、刃文の小出来からさらに絞って助綱と鑑したく、同作中出色のものである。 竹屋は鑑定と研磨で尾張家に仕えた家柄であるが、白鞘の朴材に黒みがあるいわゆる尾張鞘であり、ハバキも同じく尾張ハバキである。 (協会に寄記のものを鑑賞する)(本間薫山博士著 鑑刀日々抄より)


 姿、鎬造、庵棟、身幅広く、元先に幅差つかず、重ね厚く、反りやや深くつき、中切先大きく延びる。 鍛え、板目に杢・流れ肌交じり、肌立ちごころとなり、地沸つき、地景入り、乱れ映り立つ。 刃文 浅いのたれ調に小互の目・小丁子・やや尖りごころの刃など交じり、間近く乱れ、足・葉頻りに入り、沸よくつき、金筋・砂流しかかり、小模様の飛焼かかり、匂口明るく冴える。 帽子、乱れ込み、突き上げて先尖りごころとなり、掃きかける。 彫物、表裏に棒樋、表は掻き通し、裏は掻き流す。 茎、大磨上、先切り、鑢目勝手下がり、目釘穴三、無銘。