信国 (左衛門尉)

  上作 業物






  古刀 (室町初期 応永頃 約600年前)
財)日本美術刀剣保存協会 
  第四十八回重要刀剣指定品

 小田原藩大久保家伝来品





長さ33.6cm 反り 極僅か 目釘穴1個
元幅2.8cm 

 信国は京鍛冶の名門で、南北朝時代から室町時代にかけて大いに栄えた。 室町期に入ってからの一派の中では、左衛門尉信国と、式部丞信国の両工が代表格であり、共に応永年紀をきるところから応永信国と呼ばれて賞翫されている。 左衛門尉信国の銘は「国」の字のクニ構えの中が左字になっている点が大きな見どころであり、また左衛門尉・式部丞共に濃厚な彫物を得意としている。 信国各代の作風は、京物の伝統を示した直刃と貞宗風を受け継いだのたれ刃文の二様が主であるが、南北朝時代末期の代替わりの信国から応永信国にかけては、上記の他に互の目主調の乱れ刃の作域を新たに見ることが出来る。
 この脇差は、左衛門尉信国の直刃出来の典型作で、姿態及び刀身彫刻も時代並びに同派の特色をよく表示している。 同作中の秀作である。 (重要刀剣等図譜解説より抜粋)

 姿、平造り、三ッ棟、身幅広く、大きく寸延びて、重ねやや厚く、極浅く反りつく。 鍛え、板目肌に杢目交じり、処々流れごころがあり、地沸つき、地景細かに入り、淡く沸映り風立つ。 刃文、直刃、僅かに小互の目交じり、足・葉よく入り、小沸つき、匂口しまる。 帽子、小丸ごころに深く返り、先掃きかけ、返りの下に少し棟焼かかる。 彫物、表は太い刀樋を掻き通し、樋中に草の倶利迦羅を浮彫りにし、裏は梵字と護摩箸。 茎、生ぶ、先深い栗尻、鑢目浅井勝手下がり、目釘孔一、指表目釘孔の下中央に樋中にかけて太鏨の二字銘がある。

 健全な左衛門尉信国の寸延び短刀。 お家芸とも言える刀身彫刻は流石に巧みで、常々経眼する同工の作品と比べ一際濃厚で入念。 彫り、地刃共に典型的で出来が特に優れた作です。 徳川家の最古参である安祥譜代七家の一つ相模国小田原藩大久保家の伝来です。