昭和十二年紀元節 浪華住三代
  月山貞勝(花押)
   木村本家
   家宝御守刀 銘雲龍以余鉄作之





 近代(1937年 64歳)
財)日本美術刀剣保存協会 
  保存刀剣鑑定書








長さ70.0cm 反り2.2cm 目釘穴1個
元幅3.35cm  先幅2.3cm 重ね0.75p

 出羽三山、修験道の名山月山の名を冠した月山家は、その名からも分かるように元来出羽の出で、「観智院本銘尽」によると平安時代には既に月山と銘する鍛冶が居たようです。 月山の作風の最大の特徴は、鍛え肌が綾杉模様にうねって流れ、その窪みの部分に渦巻状の杢目を交える、いわゆる「綾杉肌」にあります。 純然たる綾杉肌を鍛える刀工は長い日本刀の歴史の中でもほとんどなく、まさに月山鍛冶の秘技秘伝と言える鍛法です。
 隆盛を誇った月山ですが、江戸期に入ると急速に衰退し、日本刀史の表舞台か消え去ります。 しかし、江戸後期に月山貞吉が月山秘伝の綾杉肌を以って一派を再興し、中興の祖となります。 貞吉の養子となった貞一は明治維新、廃刀令等の逆境に耐え、鍛刀の灯を絶やさず研鑽を積み、明治三十九年には帝室技芸員に任ぜられます。
 明治二年、月山貞勝は貞一の長子として大阪に生まれ、幼少期から名人である父貞一から作刀及び刀身彫刻を教え込まれました。 伝え聞くところによると、父貞一の晩まで表に出ることは少なく、貞一の代作を数多くこなし、父を陰から支えたようです。

 本作も伝家の秘技「綾杉肌」の妙味を存分に披露した優品。

 形状、鎬造り、三ッ棟、身幅広く、身幅に比して鎬幅も広く、元先の幅差つき、先反り加わり、中切先。 鍛え、綾杉肌、小沸つき、綾杉状に地景入り、白けごころ。 刃文、直刃仕立てに小乱れ・小互の目等交じり、小足入り、沸よくつき、刃縁ほつれ、打ちのけ・砂流しかかり、刃肌が立ち、匂口沈みごころとなる。 帽子、表が小丸で先掃きかけ、裏は小丸に返る。 彫物、表、腰元に護摩箸、裏、腰元に独鈷剣。 茎、生ぶ、先刃上りの栗尻。

 月山貞一の鍛刀の腕前はは極めて高く、綾杉肌はもとより様々な伝法に精通し、刀身彫刻も精妙巧緻で、貞勝と技量伯仲、甲乙つけがたいと言えます。 その高度な業は弟子達にも受け継がれ、息子貞一(二代)そして高橋貞次の二人を重要無形文化財保持者(人間国宝)として輩出しました。
 本作は豊臣四天王の若武者木村長門守重成公の末孫である木村家の求めに応じ、家宝として製作されたもので、流石に特別な注文だけあり同工作中特に出来が良く、貞勝自身の手による箱書きも付随しています。