ちょっとしたクレームがあったので。


このページを作成していて、あるいはリンクなどで活動していて、いつも気になっていることがいくつかあります。
今回はそれに関連したクレームのようなものがあったので、こんなコメントを書きました。

まず、私の立場ですが、次のような立場にあります。

阪大フィギュア部OB
兵庫県スケート連盟役員
ジャッジ

連盟役員とジャッジは同じようなものですが、連盟の仕事もジャッジだけでなく、スケートの振興や試合運営など、様々な
活動があるので分けました。

学生の指導という意味では、阪大OBとして、後輩の指導に当たっています。また、兵庫県スケート連盟の役員として、
選手の強化やスケートの振興の役割があり、それを受けて兵庫県に属する学生スケーターの指導に当たっています。
それ以外でも、学生から始めたスケーターたちには、同じ道を歩むものとして助言ができればいいな、と常々思っています。
これは、関西学連出身者としての意見でもありますし、実際のところ国公立大学をはじめとして、付き合いのあるところは
どこでもその対象だと思っています。

一つ、気にしておかないといけない利害関係は、インストラクターとの関係です。これまでインストラクターからクレームを
もらったことはありませんが、私としては1つは営業妨害にならないように、1つは習っている選手の成長を妨げるような
事がないように、気を配っているつもりです。
私が指導すると言っても、本格的に指導することはできませんし、より多くの助言を求めるような学生にはインストラクターに
つくことを勧めています。また、習っている学生には基本的にエレメンツは教えませんし、助言を求められてもそのとき悪い
ところはどこか、つまりジャッジの講評のようなイメージで伝えるだけです。力を抜けのような一般的なことはアドバイスも
しますが、形が変わるようなことは決して教えません。
理想的には、学生はクラブなどで滑りを鍛え、技をインストラクターに習うことで、出費と上達とのバランスが最も良くなる、
つまりコストパフォーマンスが一番良くなると思っています。私自身もそうでした。すべてをインストラクターに学ぶことは、
確かに練習した時間に対して最大限にうまくなると思いますが、普通は経済力がついてこないでしょう。
その世界で勝負したら、経済力がある人ほどうまくなるという面白くない世界になってしまいます。そんなことはありません。
よって、私は学生にスケーティングを鍛えることを勧め、日頃からスケーティングに関しては最大限助言をしようと心がけて
いるつもりです。

所詮は私も学生から始めたスケーター、インストラクターの方々のような指導のレベルには遠く及びません。
が、同じ学生から始めたものでこそできるアドバイスもあると思いますし、上にもクラブで鍛えるべきと書いたスケーティング、
エッジワークについては、私と同じレベルの選手までならば、十分役に立つ指導もできると思います。
逆に言えば、それ以上の選手を教えることはできませんし、そのクラスの選手はほとんどが長時間インストラクターに
ついてみっちり指導を受けているため、当然ながら私が口を出す余地も必要もありません。

また、インストラクターではなくとも、現役の選手が大学に所属し、そのクラブで指導をしている場合にも同様に注意を
払っているつもりです。小さい頃から質の高い指導を受けてきているわけですから、私の知らないノウハウもきっと
いっぱい知っているはずです。事実、そういう環境に置かれた学生は、私が思っているものと大きく異なる成長の仕方を
することがあります。最近そのような傾向で成果を出している大学には、例えば近畿大学や関西大学が挙げられます。
京都の大学は内情を知りませんが、同様の大学もあるでしょう。
そういう大学においては、まず第1に、エレメンツの指導は厳禁としています。インストラクターについている人同様、
エレメンツはむしろ聞かれても困ります。先輩に聞いてください。
ただ、そういう大学でも、必ずしもスケーティングがいいとは限りません。スケーティングに関してであれば、助言を
求められれば、助言しますし、指導もしてもいいと思っています。衝突してマイナスができることはまずないからです。

そういうあたりに注意して、指導する相手も内容も選びながら教えることにしています。その結果クレームが
出ていないのか、それともジャッジだからあまり関係を悪くしないように言ってくれないだけかは残念ながら
分かりませんが。
ここまで書いといて言うのもなんですが、今回そういう類のクレームがきたわけではありません。そういうクレームが
こないように、その辺は気を配っているつもりです、と言うだけの主張です。

次にジャッジとしての立場を語りましょう。
・・・と思ったのですがただでさえ長い文がもっと長くなるのでやめときます。
が、1つだけ言わせてもらいます。
ジャッジに対して不満を持つ人は、必ず点数を分析してください。ほとんどはそれで解消します。
「点数が低い」と感じる時のほとんどは、基準点が低い場合です。第1滑走者に至っては、基準点を作りにいくところで、
その日のジャッジ、選手層によって基準はまちまちになります。そして、基準点が1.0高ければ、全員の点数は1.0上乗せに
なりますし、逆に基準点が1.0低ければ、全員の点数が1.0下がります。大雑把に言ってですが。
基準点が低いとき、僕は点数を出すときに心の中で、「ごめんな、基準点が低いからこの点数になっちゃうねん」とお詫びを
言いながら出します。逆に、基準点が高いときは「きまえよー点数出てるけど、ほんとはもうちょっと低いんやで」と思いながら
点数を出します。いつも得点調整の時は、自分の思っているより低い点でないように祈っています。
ジャッジの仕事は相対的に正しい点数を出すことで、絶対的に正しい点数を出すことではありません。
不満を持つ人のほとんどは、絶対的な点数に対する不満で、その時点で問題です。一人のジャッジの点数が0.5低かったと
しても、それ以外の人はみな1.0低いならば、その人は0.5も高い点数をつけてくれているのです。自分に高い点数をつけて
くれている人が、必ずしも高い評価をしているわけではありません。
短くするつもりがやっぱり長くなってしまいました・・・


さて、ここからが実は本題です。なぜ私がリンクに行って学生を指導しようとしているのか、その思いをぶつけたいと思います。

関西学連に所属する大学の多くは、全くの未経験者が入部し、同じく未経験者から始めた上級生が、その指導に当たります。
大学の伝統に従って指導をしますが、年月の経過と共に、伝統は薄れてゆきます。逆に、インストラクターの指導を受け、
伝統になかったものを吸収し、それをクラブに反映することで伝統を変えてゆく、つまり新たな伝統を作るものが現れたりします。
また、大学間の交流も盛んです。私自身も、多くの他大学の先輩に教えてもらいました。自分の大学の伝統に染まって練習
しているものにとって、他大学の先輩に教えてもらう情報は貴重です。欠点を補える可能性が多々あるからです。
しかしながら、近年クラブの人数の減少や、リンク環境の悪化などにより、教える環境そのものがかなり弱まりつつあります。
あまり教えてもらえなければ次に後輩を教えることも難しくなります。
それを少しでも助けることができればと、私はリンクに行って後輩を教えています。そう、昔から同じように、卒業してからも
リンクに現れて後輩を教えてくれるOBはたくさんいました。今、私はそのうちの一人にすぎません。

エレメンツは伝統が消えてもインストラクターの方々に学べばできるようになります。そこから、新しい伝統も作ることができます。
しかし、滑るということはなかなか教われません。どの大学も、リンク環境の悪化が引き金となり、滑る技術は低下の一途を
たどっているように思えます。
ゆえに私は声を大にして滑る技術の重要さを語り、その指導を強化しようとしています。そして、それに同調してくれる
学生たちが、徐々にですが確実に滑る力をつけてきていると思っています。

これまでこのような活動は、兵庫県の学生合宿を中心に行ってきました。が、個人的な意見としては、兵庫県という
限られた枠組みではなく、やる気があるならばどこの学生に対しても教えたい、ずっとそう考えてきました。
ずっとやろうやろうと思ってきて、今年ようやく、スケーティング講習会を開こうと決断しました。
背景を知らない人から見ればうまくもないのに何様のつもりだ、そう見られても仕方ありません。
が、頑張っている学生のスケーティングを鍛えたい、と私が考え、その指導を受けたいと思う学生がいるのならば、
壁を作らず望む学生すべてに、指導をしたいと思います。
この講習会がいつまで続くかは分かりません。無駄な講習会であれば、すぐに自然消滅するでしょう。
それはそれで構いません。それは私の力不足です。
が、これまで兵庫県の学生合宿で確実に効果を上げてきており、今回はさらにメンバーも選抜(やる気がある者という意味で)され、
回数も多くでき、このような条件下であれば、必ずこの試みは成功すると信じています。

私は関西学連の中で、すばらしいスケート人生を送ることができました。
これからも、同じように感じてくれる学生が一人でも多く現れるように、最善を尽くしたいと思います。



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