ずばり、新人戦のキーポイントは、スケーティングです。これは、今も昔も変わっていません。今年も、スケーティングのレベルで、勝負が決せられるでしょう。
では、なぜ新人戦は滑りで勝負が決まるのでしょうか。
別に、これは新人戦だから、滑りを見るというジャッジの意図はありません。ジャッジは試合前に何を中心に見る、ということは打ち合わせをしません。よって、その日、来た人間によって何を見るかは違うのです。
理由は結構単純です。これは、関西学連新人戦独特の、選手層から決まってくる要因でしょう。最近は少しずつ変わってきていますが・・・。
当然新人戦ですから、大して滑れない人がほとんどです。スケートを始めて、1年までですからね。でも、その1年間でかなり滑りこんでくる選手が必ず出てくる、関西学連はそういうところです。そう、滑りだけを見れば、一人前になってくる選手が結構出てくるのです。氷上という不安定さに苦しめられている人間が大勢いる中ですから、滑りをものにしてきている人は、目立つし、実際それだけレベルの差があるということでもあります。
しかし、その反面、エレメンツはどうでしょうか。ほとんど誰もが、一人前にはなりません。ジャンプの種類だけを見れば、男子も女子も上のほうはシングルルッツぐらいは飛んでくるでしょうが、その質を見ると、一人前には程遠いのが現実です。そう、言ってしまえば、ジャンプには差がないのです。
ループまでしか飛べない選手と、ルッツまで飛ぶ選手、それ自体の差はほとんどないのです。ただ飛ぶだけなら。
スピンはもっとレベルが低い。新人戦だから、と言ってもいいでしょう。そもそも、年が明けてからやっとスピンが回り出す、それくらいの人も多いですからね。
つまるところ、こういうことです。3回生のインカレでの、平均レベルを100点としましょう。それぞれの要素について、新人戦でトップクラスのレベルを持つ人間は、どれくらいまでくるのでしょうか。単なるスケーティングは100点を越える人間も出ます。ジャンプは、せいぜい50点、スピンは30点、ステップは、70点ぐらいでしょうね。言いかえれば、新人戦にみんながやってくるエレメンツは、点数で言えば大した事がないのです。
だから、ジャンプでは差はつきません。でも、スケーティングは明らかな差がつきます。
当然、これには例外もあります。まず、スケーティングがあまりできていない人間が集まれば、スケーティングでは差がつかず、エレメンツの差の方が大きくなるでしょう。でも、それは優勝争いにはこないはずです。
また、もし本当に新人戦で十分な質のエレメンツをやってこれる人間がいれば、それもまたスケーティングの差を越えてエレメンツの差で順位が決まるでしょう。単純に2つ、エレメンツと滑り、で分けるなら、より顕著に差がついた要素で勝負が決まるということです。そりゃそうですね。滑りの差が0.1ぐらいで、エレメンツの差が1.0ぐらいあれば、エレメンツの方が勝ちますよね。逆もそうですよね。
さて、この話はその続きがあります。AさんとBさんがいました。新人戦は、Aさんの方が滑りが上、Bさんの方がエレメンツが上で、滑りのレベルの違いでAさんが勝ちました。問題は、その後の試合です。Bさんはエレメンツが更に格段に上達しました。でも、滑りはそれほど変わりませんでした。恐らく、BさんはAさんに、勝てません。もともと滑りの差が大きくあるのだから、それが顕著であるうちは、エレメンツでよほどのことをやらないとAさんには勝てません。実際にはこれはほとんど不可能です。Aさんも、エレメンツは上達しますから。そう、新人戦で滑りの差で敗れたならば、次までに、滑りの実力差を縮めでおかないといけないということです。
新人戦の鍵は、スケーティングです。でも、それ以外の試合でスケーティングが鍵にならないわけではありません。一般論として、新人戦は滑りの差が表に出やすく、インカレなど、特にA級は滑りの差が比較的小さくなり、エレメンツの差が大きくなってくる、それだけの話なのです。逆に、滑りの差を縮めれない選手は、ずっと上の争いに加わることができないということを覚えておきましょう。
逆に。
だからと言って、新人戦で滑りにすべてをかけてきて、負けた人。それは、滑りの差をそこまで表に出せなかったとして、修行不足だと思ってください。決して、エレメンツの差が勝ったとは思わないように。あくまでも、滑りに差がないから、エレメンツで負けるのですから。そこまでのレベルに滑りが達しなかっただけです。