ISU規定の点数調整について


試合では、必ず最初に”ISU規定に基づき、得点調整を行っております・・・”ってアナウンスが入りますよね。これの意味と、そこから起きる現象をちょっと説明しましょう。
まず、規定の話。規定では、減点前の第1採点、第2採点それぞれにつき、各ジャッジの出した点数の中央値を基準点にします。
よって、

2.5 2.7 2.5 2.9 2.6
2.3 2.6 2.3 2.7 2.6

としますと、第1採点の中央値(平均じゃなくて、真中の値)が2.6、第2採点の中央値が2.6となります。そこから、ジャッジの裁量で上下させたり、減点が入ったりします。

さて、ここからは得点調整が全体の点数に与える影響をいくつか挙げましょう。
1つ目。上の例では、全体的に0.2ぐらいプレゼンが下がっていますよね。でも、基準点は下がってませんよね。結局、全体的にこの人のプレゼンテーションは0.2ぐらい下げよう、と感じていても、その基準の人ぐらいを平行点ぐらいにする、という基準になりますね。結果、この試合でのプレゼンが全体的に上がったりもします。
2つ目。1番と3番ジャッジは、この人に大体2.4の点数をつけました。4番ジャッジは、大体2.8ぐらいの点数をつけました。基準点で2.6をみんなが出しました。さて、ここからが問題です。例えば参加者30人の試合で、全ジャッジが最終的にこの人に15位ぐらいを付けたとしましょう。すると、基準がそろっているので、全ジャッジがだいたい同じ基準で点数を出すことになり、点数から評価が分かりやすい試合になります。ところがです。この人の評価が割れていたらどうでしょう。例えば、1番ジャッジは10位と考えた。3番ジャッジは、20位と考えた。4番ジャッジは、10位と考えた。そうしましょう。すると、1番ジャッジはその試合で10位ぐらいの人に最初2.4を出そうとして、調整で2.6を出したことになります。3番ジャッジは、20位ぐらいの人に2.4を出そうとして、2.6になった、4番ジャッジは20位ぐらいの人に2.8を出そうとして、2.6になった、ということですね。すると、得点を調整したおかげで、10位と考えた1番ジャッジと4番ジャッジは、試合を通して、同じぐらいの点数を出していくでしょう。危うく、大きく差が出るところを得点調整でカバーしたjことになります。しかし、3番ジャッジは、他のジャッジよりも評価が低かった。最初出そうとしていた点数も、実際低かった。しかし、得点調整でかさ上げされ、結果試合を通じて全体に高い点数を出すことになった。
言いかえれば、たまたま自分が他のジャッジよりも評価が高かった選手が1番に滑ると、その人の点数は試合を通じて全体に低くなり、逆にたまたま自分が他のジャッジよりも評価が低かった選手が1番に滑ると、その人の点数は試合を通じて全体に高くなります。
全体に低くなったとき、”あの人は評価が厳しい”、なーんて言われるのははっきり言って心外ですね。いや、実際に言われたこともありますし、他の人に対して言っているのもよく聞きます。内心、自分のやっているスポーツの点数のつけ方ぐらい勉強しとけ、と思うところですが、最近はそういうことは教えない大学が増えてきてますからなんとも言えないですね。僕は、フィギュアスケートは、選手が最もルールを理解していないスポーツであると思っています。また、それを恥ずべき事実だと思っています。みんな、それくらいは勉強しましょう。

そう、自分の点数を高く出してくれたジャッジが自分を高く評価しているわけではないのです。みんなに高く出していれば。逆に、一番点数の低かった人が一番高く評価してくれていることもあります。そう、みんなにもっと低い点数を出していれば。
そこは、理解した上で、点数を見ましょう。決して合計点で順位が決まるのではないですから。(たまに上下を切り捨てた合計点で順位が出ていると思ってる人がいますが・・・体操じゃないんだから。)


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