膝・足首のねじれによる故障


どんなスポーツにも怪我はある程度発生するものだか、ここではフィギュアスケートで特に起きやすい、膝・足首のねじれによる故障について触れよう。
まず、最も典型的な例が、ジャンプの着氷時のねじれ。これは、捻挫のような瞬時に痛めてしまうものだけでなく慢性的に疲労がたまっていって痛めるケースもある。
まず、メカニズム。人間の関節は、ねじれの力が加わりながらの関節の曲げ伸ばしに弱い。特に、もともとねじれを許していない膝はそうだ。ジャンプのランディングでは、回転力が加わりながら、ランディングで耐えなければいけないので、ちょっとしたことで膝・足首に負担がかかりやすい。きっちりと回転を止めることも大事だが、できるだけエッジがロックされないように注意しないといけない。このエッジがロックされることを避けれれば、ほとんどこの故障は起きない。
では、ここで言う、エッジがロックされるとはどういうことか。ここでは、エッジが氷にかかり、回転を止めてしまうことを意味している。エッジが回らなくなって、上体には回転が残っているのだから、いくつかの関節にねじれの力が加わる。そして、ジャンプのランディングでは、自分の体重を支えるため、膝や足首を曲げてゆき、結果的に関節の故障につながる。
これは、何も氷上だけではない。陸上でのジャンプの練習でも起こりうる。特に、リンクのロッカールームのように、エッジでそのまま歩けるようにゴム板が引いてある場所では、摩擦が強く、故障につながりやすい。やるなとは言わないが練習方法をよく考え、検討したほうが良い。
氷上でも陸上でも言えることだが、レッスン生の真似をすることが必ずしもいいことではないことを理解してもらいたい。小さい子たちは体重も軽いので、多少エッジがロックされようが、故障にはつながりにくい。また、陸上でも同様である。そして、そういう怪我をしにくい時期にやり方を覚えてしまっているのと、体が成長しきったとこから練習を開始するのとでは、全く勝手が違う。小さい子らがやる以上に、細かいことに注意して、正しいことをやる必要がある。そこは、よく覚えておこう。
では、実際に氷上ではどういうケースで発生しやすいのか。どういう練習をしてゆくと発生しやすいのか。
まず、回転軸が太いと起こりやすい。軸は、振り回してジャンプを飛ぶと太くなる。無駄な力を使わず、最小限の回転力でしっかり細い軸を作って回る、難しいことだが早い段階からそういう練習をしていった方がいい。とにかく早く飛びたい、という気持ちが先行するとどうしても振り回してしまうので、あせらないということも肝心。あせったほうが結果的に上達は遅くなるから。
そして、回転が足りていないのに無理矢理片足で下りようとすると発生しやすい。これも、早く飛びたいという気持ち、あせり、とかが影響してくる。まず、きっちりと回りきることを覚える。それには、片足で下りる必要は全くない。着氷は両足でいい。それも、両足同時、だ。両足同時に下りることで軸がまっすぐであることを確認できるし、衝撃も和らげることができる。いざいがんだときにも対応しやすい。そして、10回飛んだら、10回ともきっちり回りきれるようになって、初めて片足で下りる練習を始めるのである。←これ特に重要。重要重要。僕がここまでアピールするぐらい重要。中途半端な回転のまま下りる練習をすれば、下りようとするときに無意識に回転を止めようとするから、絶対に回りきるわけがないんだから。そしたら、回転不足のものを無理矢理下りようとする練習に変わり、それは大人がやる以上は、故障へ一直線としか言いようがない。打ち身とかはまだいい。ここで言っているような、ねじれの故障は、故障したものしか分からないやっかいな怪我なんだから。
とにかく、フォアで下りてきて、インスリーするジャンプは学生にはご法度。90度回転が足りないのも結局同じ。小さい子らなら、その延長で回転不足を徐々に直していく練習方法もありうるが、学生の場合、怪我のことを考えると得策ではない。実際、学生でインスリー下りを一度やり出した人は最後までそれが直らないケースも多いんだから。というか、完全に直ったケースをほとんど僕は知らない。注意してくれ。


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