うまくても見せれなければ点にならない
どれだけ上達しても、それが試合で見せれなければ点数になりません。練習したのに、点数にならない、それはもったいない。
そんなことを避けるアプローチをいくつか紹介しましょう。
ここで述べたいパターンとしては2つあります。1つは、点数につながる力を持っているのに、表に出せずに評価されないケース。もう1つは、点数につながらない練習をしているケース。
まずは、点数になる力を持っていて、見せていないケース。
1つ目。スケーティングを普段からやっているのに、使う場所がない。スピードを出すとジャンプが飛べないから。ステップでは、そこまでスピードを出せないというケース。
→普段から、スピードを出してジャンプを飛ぶ練習をする。そして、それを試合に入れる。例え簡単なジャンプでも、スピードに乗ってきれいに、大きく飛べば十分評価されるし、なによりも間接的に滑りやスピードを見せることができるから、明らかにプラス。
2つ目。試合になるとジャンプが飛べない。
→緊張は仕方がない。でも、やれることはやっておこう。最低でも、試合と同じジャンプの入り方でジャンプの練習をしておく。それも最後のステップだけあわすのではなく、助走からちゃんとやる。もちろん、テンポも合わす。普段失敗しないジャンプを失敗する、あるいは極端に確率が落ちる原因のほとんどは、入り方の違いや、スピードの違い、テンポの違いからくるもの。普段の練習に試合を合わすのは無理。だから、試合に合わせて練習する。
3つ目。試合になるとスピンが回らない。
→同上。
4つ目。よく滑れるはずなのに、そう見えない。(本人には分からないから、誰か気付いてやらないといけない)
→よく滑れる人というのは、理想像として、スピードが速い、加速が早い、深いエッジが使える、速いテンポに対応できる、膝が柔らかい、ジャンプの踏み切りがクリーンである、ジャンプが高い、チェックが伸びる、ステップがうまい、プログラムが多くのステップで構成されている、という要素を持っています。ジャッジから見て、結構滑れるかな?という印象を受けたとき、スピードがないとまずその滑りの技術を疑います。加速が遅くてもそう。エッジが浅くてもそう。テンポへの対応もそう。膝が硬いと疑うし、ジャンプがクリーンでなくても疑う。チェックでつまっていても疑う。ステップが全然入ってなかったら疑う。ステップでつまづいていたら疑う。そう、滑れる理想像の全部が秀でている必要はなくて、いくつかが秀でていて、残りが無難なレベルだったらそれでいいんです。だから、これらの要素のうち、特にひどいものを直せば、結構見た目の印象は変わるもんです。ちなみに、特に致命的になりやすいのは、スピード、膝の柔らかさ、ステップの量と質、というとこですかね。
5つ目。簡単でも、質の高い(すなわちその人の力を見せれる)エレメンツがプログラムに含まれていない。
→得意なものを多く入れる。難しいものだけが点数を決めるのではないことを意識しよう。簡単なものほど、力を測りやすいものです。
結局のところ、その人の長所をよく認識し、それをプログラムに取り入れる、また長所を出しにくければ出せるような練習をする、どこでどんな長所を見せるかを意識して練習する、というのが重要ということになるでしょう。個人的な意見として言わしてもらいますが、選手を見て、”おっ”って思うときってのは、ほとんどジャンプ以外ですよ。例えば、アクセルで言うと、踏み切り足の前の右足のバックアウトに乗っているときに、その選手がアクセルまで飛べるか、ダブルアクセルまで飛べるか、トリプルアクセルまで飛べるか、8割がた分かりますね。右足のバックアウトにただ乗ってるだけ、そんな単純なアクションだけでその人の実力が測れてるわけです。
次に、点数につながりにくい練習をしているケース。練習の方向性が少しずれているケース。頑張っているのになかなか報われないタイプ。
1つ目。普段から滑りこんでるのに、試合では滑れない。テンポが合わないから。
→速いテンポの滑りこみも、遅いテンポの滑りこみもやっておく。テンポは慣れの面が大きいから、普段から滑り込んでいれば、比較的早く対応できるようになる。また、自分に合うテンポの曲を探すのも手。でも、3分ぐらいのプログラムでは、どのみち複数のテンポを滑りこなせないとだめ。
2つ目。基本的なステップの練習はよくやっているのに、プログラムのステップシークエンスはうまくこなせない。
→基本的なステップの練習に偏りがある。レパートリーを増やそう。もしくは、普段の練習の延長でできるステップシークエンスを作る。
3つ目。ステップの練習はよくやっているのに、滑りが評価されない。(本人には分からないから周りが気がついてやらないといけないが)
→簡単なステップのレベルアップを図る。難しいものをいっぱいいっぱいでやり抜いても、それが限界であることをアピールするだけ。簡単なステップほど、みんながやっているからこそ、人との差がはっきり出る。また、簡単な中にこそ、その人の力は現れるものです。
4つ目。ジャンプの練習はよくやっているし、実際に多くのジャンプを飛んでいるのに、点数が出ない。
→ジャンプに滑りが伴っていない。踏み切り、ランディングがクリーンでない。結局、ジャンプの質が低い。だから、難しいジャンプを下りてもその質が低いために評価されない。最も大きな長所を認められていないわけだから、当然思うような順位は出ない。
5つ目。スピンの種類は多くやっているのに、評価されない。
→一つ一つの質の向上を図る。無理矢理フライングキャメルをやって4回転ぐらいゆっくり回るより、シットスピンをぎゅるぎゅる回ったほうが絶対点数につながる。
結局のところ、難度は高いが質の低いものを連発しても、点数が出ないということです。もちろん、次のステップとして難度の高いものを積極的に練習していくことは大事ですが、それに終始しないこと、その質を上げてゆくことを忘れない、ということはもっと大事なのです。
できるようになったことの練習をおろそかにしていませんか?再確認してみましょう。最も、個人的な意見として、できるようになったことの練習をおろそかにしていない選手は私を含めて見たことがありません。重要なのは、程度の問題ですね。多少はおろそかになるでしょうけど、おろそかになり過ぎない、それが肝心ですね。