学生の試合の講評で、よくスケーティングが、エッジワークが、滑りがどうのこうのって聞きませんか?
でも一方で、全日本選手権とか、世界選手権とかをテレビで見てると、なんかジャンプをどこまで飛んだか、どこまで成功させたかで
順位が決まっているような気もしますよね?
では、このギャップはなんなのでしょう?どちらが正しいのでしょう?
答えは簡単、両方正しいのです。
ではギャップはなぜ生じるのでしょう?これも簡単、滑りの技術が伴っていない人間は、その上位争いに加わることができないというだけです。
すなわち滑りの技術が弱いという時点で、同じ土俵には立てないのです。滑りの技術がある程度近いレベルだと、
滑りの優劣よりもジャンプの優劣の方が影響が大きくなってくるのです。
実際、アメリカの選手が4回転3つ飛んでもヤグディンには勝てなかったですよね。というか勝てるわけないですよね。
勝負の土俵に立つには、最低限、勝負する相手に張り合える滑りの技術が必要なのです。
では、なぜ滑りの技術がそれほど重要なのでしょう。これにはいくつかの見解があります。当然、私の知らない見解も多くあると思います。
あくまでも個人的な意見として、いくつか挙げてみましょう。
まず、フィギュアスケートの存在意義を考えてみましょう。美しく踊りたいなら、バレエでもいいですよね。ジャンプもスピンも似たようなものが
ありますよね。ダイナミックな技をやりたいなら、体操がありますよね。あっちの方が縦回転とかひねりとか、はるかに変化がありますよね。
ちょっと系統は違えども、新体操もありますね。
では、スケートでは何ができるでしょう。
そう、滑ることができるのです。
と、これだけ言うとただのバカで終わってしまうのですが、この当たり前のことが重要なんです。
ジャンプなら、スピードがあって、きれいなカーブに乗って、そのスピードとカーブをうまく生かして高く飛ぶ、これは他競技にはない
醍醐味だと思います。そして、ランディングがこれほど優雅な競技もないでしょう。
スピンも、滑れるからこそ、早く回ることができますよね。
そして、ステップに関しては絶対に他の競技ではまねのできないことができます。
でも、滑りを伴っていないステップなら、別に陸上のダンスと何ら変わりないですよね。
そう、滑りを伴っていないのならば、何もスケートでなくてもいいのです。
では、別の角度から見てみましょう。
ジャンプの練習をしていて、スピンやステップが上達するでしょうか。また、スピンの練習をしていてジャンプやステップが上達するでしょうか。
確かに、全く無関係ではないです。でも、ほとんど無関係ですよね。
でも、滑りの技術の練習、つまりコンパル、スケーティング、ステップの練習をすることで、ジャンプやスピンの上達は明らかに早くなります。
確かに、学生スケートはざっくり言って4年ぐらいしかないですから、ずっと滑りの練習だけするわけにはいきません。
もし4年間でどこまでうまくなれるか、それだけを求めるなら、練習メニューをジャンプ・スピンと滑りの比で考えると、
1年目が1:9、2年目が3:7、3年目、4年目が5:5ぐらいでしょうかね。もちろん、息抜きも必要ですから、
この比がベストというわけではないです。面白くなかったら練習の絶対量が減りますからね。
でも、滑りの練習量が十分な人間は一人もいないということです。
さらに別の角度から攻めてみましょう。
世の中には、なにもジャンプやスピンに魅せられてフィギュアスケートを始める人間ばかりではないです。
そう、ジャンプやスピンではなく、プログラムにかける人たちです。
確かに、学生からスケートを始めて、トリプルアクセルが飛べるわけではありません。トリプル2つ3つは飛べるとは思いますが、
それが可能な、環境に恵まれた人間ばかりではないですよね。
でも、プログラムなら、そこに自分のスケートの価値を見出すことができるでしょう。
学生から始めた人たちでも、観客を魅了すること、観客を楽しませること、観客を感動させることはできます。
でも滑りが伴っていなければ、自分をうまく表現することはできないのです。
いくら上半身の使い方がうまくても、下半身が止まっていては観客には何も伝わってきません。
結論。
そう、何を目指しても、必ず滑りの技術は必要なのです。逆に、滑りの技術をきっちり磨いていれば、
後からでも自分の目指す方向を変えることもできるのです。
滑り滑りと口うるさいと思われている人も大勢いるとは思いますが、本人のためを思うからこそ、
口うるさいと思われるであろうことを承知で、繰り返し言っているという事を知っておきましょう。