はじめに。このページの内容にはかなり”とげ”があると思う。
本当に理解して欲しいからこそ、強く書いた。それはご了承いただきたい。
はっきり言おう。最近の学生スケーターはほとんど全員武器を持っていない。武器がないから、安定して順位が出ない。
しかし。
この事実は、裏を返せば、ただ1つ強力な武器を持つだけで、一気に順位が上がるという、大きなチャンスがあることをも意味している。
武器を作る、すごく漠然とした表現だが、その方法は決して簡単ではない。簡単であれば、既にみんなそれぞれ武器を持っているだろう。簡単には得ることができないからこそ、武器になるのである。
では、具体的に武器とは何か。例を挙げよう。
・圧倒的なスピード
・目を離したくなくなる表現力
・深いエッジ使い
・見るものを魅了するジャンプ
・同じくスピン
・その他もろもろ
まだまだ漠然としている。それだけなら、誰でもわかる。次が問題である。どこまでいけば武器になるのか。
関西インカレA級、同じくB級、関西学連新人戦レベル(以降C級と表記)に分けて考えよう。
まず、スピード。どんなクラスであっても、そのクラスの中で目立って早いこと。これが大前提。C級なら、フォアクロスでもいい。でもB級では、最低でもバッククロスまで、A級でならステップも含めて、スピードが出ていないと武器にならない。
表現力。これは言葉にできない。だから省略。ただ言えることは、見るものに何か感じさせるということが大前提。
深いエッジ使い。これも、レベルに応じて、深さが変わる。要素的にも、C級なら、フォア・バッククロスが深いこと、ステップで乗りわけができているだけで武器になる。B級なら、ステップも深くないと武器にならない。A級なら、それに合わせてスローパートとかで粘りのある滑りを披露しないとだめだろう。
ジャンプ。C級なら、男女とも、サルコウで十分差が出る。そう、サルコウは武器になる。かつて新人戦女子で、圧倒的な武器となるサルコウを見たことがある。そして、その女の子は実際に優勝した。当時僕はジャッジではなかったが、その試合で最も印象に残ったのは、そのサルコウであった。僕は、今でもそのサルコウが勝因であったと信じている。次にB級なら、女子はサルコウも十分武器になる。でもそんなサルコウをインカレB級で見たことがない。理由は簡単。上のほうのジャンプに意識がいって、サルコウが完全におろそかになっているからだ。これがとにかくもったいない。ある程度滑れる人間だったら、サルコウを改善しつづければ、2年のインカレでは十分武器になるレベルになるのに。B級の男子では、さすがにサルコウは武器にならない。武器になるのは、ループからだ。そう、ループで十分。本当にいいループは、やっと下りたようなアクセルに負けない。もちろん、本当にいいアクセルを下りる人間がいたら、ループだけでは勝てないが。実際には、武器になるループを飛べる人間がいないのに、武器になるアクセルを飛べる人間がいるはずがない。次にA級。A級には昔からスケートをやっている経験者も多い。ここでは、学生スタートの人間に話を絞ろう。実際、その中での武器を持つことが、経験者に勝つための道でもあるから。A級女子なら、ループ以上。当然、B級以上により質が求められる。アクセルを下りると順位がぐっと上がる印象を持つ人も多いが、実際にはちょっと違う。みんな武器を持たず、どれも似たり寄ったりの中にいるから、まがいなりにもアクセルを下りれば順位が上がるだけである。アクセルによって混戦から抜け出した人間は、アクセルがなくとも混戦から抜け出せる力を持つ人間には勝つことはできない。
次に、A級男子。まだ、十分ループは武器になる。しかし、本当の武器となるのはアクセル以上だろう。スピード、高さ、飛距離、これを兼ねそえたアクセルは、それ1本で学生チャンピオンになる資格がある。逆に、それを簡単に会得することはできないだろう。
ジャンプが長くなったが、結局のところ、サルコウでも十分武器になるのに、そのための練習をみんなしていないことを指摘したいのだ。みんなただ確実に飛ぶだけ、そこで練習を終えているのに問題があるのだ。飛んだら終わりではなく、その質を改善しつづけなければ、本当の意味での上達はありえない。
次に、スピン。スピンに関しては何が武器になるのか、勘違いした人が多い。ただ難度が高いだけでは、点数にならない。3回転しか回らないフライングキャメルは、選手たちから見ればすごいと思うかもしれないが、ジャッジから見ればそうではない。それは、そこまでしかできない、その程度の技術しか持っていないということをアピールするだけで、質の低いスピンとして、マイナス要因となるだろう。6回転止まりかけながらやっと回っても同じである。大事なのは、回転が速いこと。ポジションが美しいこと。単独のシットスピンですら、その質によってはA級で十分武器になる。深く座ってぎゅんぎゅん回っていれば。そう、スピンもまた、6回転なり8回転なり回ったら終わり、ではなく、常に回転速度、ポジションなど、改善を続けなければならないのである。それをやって、初めて武器となりうるのである。
さあみんな、武器を作ろう。当たり前のようにできるものから、武器は作れるのである。そして、絶対に失敗をしない武器こそ、試合における生命線となるのである。それを持つものは、順位が大きく崩れることはない。どれだけの不調であっても。
最後に。特定のものに対し練習量を増やす=武器を作るではないことに注意されたい。やみくもに練習しても、武器は作れない。武器にするにはまず何を改善する必要があるか、それを分析する必要がある。ジャンプで言うならば、まずきれいなエッジに乗って飛ぶことから始めないといけない場合もあるし、ただスピードを上げていくだけでそこに到達できる場合もある。ターンの練習から始めないといけない場合もある。最悪の場合、原型を壊して一から練習しなおす必要がある場合だってある。何を改善する必要があるか、分からない人は僕に言ってくれたらいい。別に大学なんてどこでもいい。ただし、それまでやってきたことを一気に否定される可能性があるということは覚悟してもらいたい。それを覚悟した上で聞きに来るのならば、僕はこれまで培った知識を総動員して、全力で分析しよう。