学生は、すぐ目前にあるものだけを見て練習をする。試合があるから、それに使うものをあせって練習し、とりあえずは完成させようとする。スピンに関しては、その延長でも悪くない。遠回りになることはあまりないからだ。
しかし、ジャンプ、ステップに関してはそうではない。目前の練習にとらわれて、長い目で見た場合は遠回りをしているケースが非常に多いのだ。これは、練習している本人が気付くのはほとんど不可能だ。だからこそ、周りがそれを教えてあげなくてはいけない。特に、試合前には、指導者まで一緒になって、先を考えた練習を忘れ、その時点での技術不足をごまかす方向に走ってしまう。指導者の方がそう動けば、もはや誰も止めることはできない。
まず、ジャンプでは、試合が近いからと言って下りにいくのは結果的には遠回りになるケースが多い。確かに、いつ下りても不思議でないジャンプを飛んでいたならば、試合前だと言って下りにいかせるのも悪くはない。しかし、下りるわけがないジャンプを下りにいかせることは、回転不足でも片足で無理矢理下りる癖をつける上、それ自身が怪我の原因にもなりかねない。そもそも、試合1ヶ月前に初めて下りたジャンプを試合で成功させようとは、考えが甘い。それまでの計画作りも甘い。試合1ヶ月前に下りなかったら、そんなジャンプはプログラムから抜いたほうがいい。そして、その空いた時間を、既に飛べているジャンプの質を上げる練習にまわせばいいのだ。
ステップもしかり。基本ができていないうちに無理矢理ステップをさせても、結局力ずくで片付ける癖がつくだけだ。それよりは、基本的なステップの練習を多くさせ、簡単なことをきっちり身につけさせる方が良い。そして、その基本的なものを多用してプログラムを構成してやればいいのだ。その時の力に応じたプログラムを作ってやれるのも、指導者の大事な仕事だ。
語弊がないように断っておくが、僕は別に試合前に試合の練習よりも将来につながる練習を重視しろ、と言っているのではない。遠回りになるような練習が必要ならそんなものはプログラムに極力使わず、試合へ向けた練習と将来へつながる練習が極力同じ方向に向かう努力をしろ、と言いたいのだ。そういう練習の方向性でも、それによって順位が下がるということはないだろう。しかし、逆は多いにありうる。将来につながらないということは、何か重要な力の向上をしていないということだから。
さあ、もっともっと先を考えて指導内容を考えてくれ。