レスキュー ディープダイビング
ダイビングをはじめると、そのうちにより深い場所、より流れの急な場所に興味を持つ。スキルアップなのか、探究心なのか。ディープダイビングが危険を伴うのは、窒素酔い(中毒)のほか、酸素中毒というキーワードを忘れてはならない。多くのレジャーダイビング団体で最大深度を約40mと決めているが、これはダイビングで酸素分圧が1を超える深さである。※1 また、急性酸素中毒の危険性が非常に高くなるので、特別な場合でも酸素分圧が1.6以下(70m)であることwikipedia 酸素中毒とある。
まず最低限の知識を得てから、自分をよく知るインストラクター等と相談しリスクを理解した上で楽しめばよい。少し技術的だがインターネット上で入手できるドキュメントとしては、US NAVYのダイビングマニュアルがある。
※1 空気ボンベは酸素分圧0.21。これに気圧を掛ければいい。0.21×5≧1.0
普段潜る慶良間でも-40mを超えることは珍しいことではない。例えば、下曽根の根の下や高内瀬の底など、-40mラインは普通に存在する。日ごろより「窒素酔い」というものには鈍感であったが、それを意識したのが、初めて-45m以上に潜った時であった。
それは、被写体に向けて写真を撮る際に、レンズ越しに被写体が小さく見えた時のことだ。使い慣れたカメラ(ハウジング)であるのだが、いくらカメラのセッティングをチェックしても異常はない。おかしいなぁと思いつつシャッターを押すが本人は納得していない。-20mまで戻ってきたときだろうか、ふとカメラのセッティングを見るとズームがワイド寄りになっている。これでピンときたのが窒素酔い。-45mの地点でカメラの「ズーム」の存在を思い出せなかったのである。
本人が意識した窒素酔いは、これ以後ない。
上の経験をした後、一度ディープダイビングが可能なのか、また自身の窒素酔いがどの程度なのかを知るために、とりあえず今後潜る可能性のまずない-60mを目指してみた。
-50mを超えてからは、自分のエキゾーストノイズが大きく聞こえる感覚があった。慶良間では、このあたりからオキナワサンゴアマダイが普通に見られるのだが、海が暗く、写真を撮る気持ちにならなかった。この「ノイズが大きく聞こえる」「暗く撮る気持ちにならない」というものが窒素酔いの影響かは、判断できない。
-52m位になると底に到達。50m程度水平移動しながら更に深い所を目指した。到達できたのは-57m。最大深度付近での滞在時間は数分である。※2,※3
この際の減圧停止は、浮上速度が厳密に守れていないことも考慮し4段階で行っている。ダイブコンピュータでは条件が緩いと考え-30mまではゆっくり浮上し2分滞在、以降、-20m,3分、-10m,10分、-3m,30分で減圧を行った。Decoアラームを消した上であるのは言うまでもない。トータルで1時間近いダイビングになったが、それでも200気圧10リッターの普通のタンクで潜れたのは、以降の安心にもつながっている。
※2 US Navy ダイビングマニュアルによると、-54mまで5分間の無減圧潜水が可能。少し意外なテーブルだが、更新頻度の高いUS Navyのダイブテーブルだから信頼度は一番かもしれない。但し海軍部隊のテーブルなのでマージンは最小限だろう。
※3 潜水士のダイブテーブルだと-60m,5分超えでガス圧計数1.5、1日のダイビング活動は70分制限とある。ガス圧計数だけを見ると-14mで30分超えと同じである。浅く長く潜る場合もリスクが多いことは認識すべき点である。(潜水士のダイブテーブルは根拠があまり議論されていないようだが。)
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