脳卒中という言葉は昔から使われているなじみの言葉ですが、その意味は脳が原因で突然に(卒)あたる(中)ということです。中風(ちゅうぶ)とお年寄りは言いますが、これも悪い風(風)にあたって(中)倒れることをさします。要は突然に起こる脳の病気を言うわけで、現代用語では”脳血管障害”と呼びます。外国でもstroke(ストロ-ク)と言い、これも”神の一撃”という意味であり、場所は違っても人間は同じことを考えるのですね。
脳卒中については様々なホ-ムペ-ジがあり、それらを参考にしていただければ結構と考えますが、気になる部分を列挙しますと・・・
1.日本での脳卒中(平成9年統計より推測)
ペナンブラとは医学の専門語で、脳梗塞の周囲で、血流が低下しているが、今だ神経活動は続いている部分をさします。左の図では、黒くなった部分は脳梗塞の中心部分で、その周囲の黒線で囲まれた大理石色の部分がペナンブラです。このペナンブラの部分が助かれば後遺症は小さく、助からずに脳梗塞になって神経活動も低下してしまうと後遺症が大きくなるわけです。
このようにペナンブラの存在は非常に重要であり、ペナンブラの範囲がどのくらいあるのかを画像でとらえることと、その部分を救うような治療法が非常に重要であることがお分かりいただけると思います。
3.脳梗塞の一般的な経時的変化(PETによる観察)
上から脳梗塞発症5時間後、発症7日目、発症28日目。
左から脳血流量、脳酸素消費量、酸素摂取率(血液から酸素を抽出する割合)。
色調解析で、赤、黄、緑、青の順に高値から低値に。
この画像では向かって左が脳の右になることに注意(足下から見上げていることになる)。
見なれない画像と思いますが、これがポジトロンエミッショントモグラフィ(ペットと医療用語では言います)の画像です。最新鋭の器械で、世界で約300台、日本にその1割があります。通常私達が見ることが出来ないような脳の変化を見ることができます。この画像では、脳梗塞になった直後は、左上の脳血流の画像で青くなった脳血流の低下部位では、右上の画像のように酸素の摂取率が非常に亢進している。これは少しでも多くの酸素を血液中から取込もうと脳神経細胞が作用しているからである。この酸素摂取率の亢進している部分こそペナンブラである。しかし、血流の改善がないと、この部分は梗塞になってしまい、右下の画像のように慢性期には酸素の摂取率が低くなり、正常化してしまうのである。
4.脳梗塞の分類
脳梗塞とは脳血管が何らかの原因でつまってしまい(専門語で閉塞すると言います)、その血管によって栄養されていた部分の脳神経細胞が傷害される状態です。脳梗塞にはおおきく3種類があり、大きな脳血管自身が動脈硬化によって閉塞してしまうアテローム血栓性脳梗塞(図の中)、脳内の小血管が閉塞するラクナ梗塞(図の左)、心臓や頚部の血管にできた血液の塊がその場所からはがれて、血流に乗って先のほうの血管につまってしまう脳塞栓(図の右)です。前2者は脳血栓、最後は脳塞栓と表現され、混乱される方も多いようですが、いずれも脳梗塞です。読売ジャイアンツの長嶋茂雄氏や元首相の小渕恵三氏がなったことで有名になった心臓が原因の脳梗塞とは、まさしくこの脳塞栓なのです。
5.脳梗塞の一次予防、二次予防
一次予防とは脳梗塞にならないように予防すること。二次予防とは、一回脳梗塞になった方が再発しないように予防することを指します。高血圧、糖尿病はいずれの場合にも危険因子であり、ちゃんと管理しないと脳梗塞になってしまいます。二次予防には薬が重要です。特にアスピリン(商品名:バイアスピリン、アスピリン81)は再発の危険性を約25%も低下させます。チクロピジン(商品名パナルジン、第一製薬)も再発予防効果は高い薬剤です。ただ、飲みはじめた頃に肝臓障害を生じやすいので、少し注意しなければいけません。心房細動という不整脈がありますが、この方は高率に脳梗塞(厳密には上記の脳塞栓)を生じやすいのですが、その予防にはワ-ファリンという薬剤を使用します。この薬剤は同じ量を服用していても効き過ぎたり、効き足りなくなったりしますので、常に血液検査(プロトロンビン時間)を測定してその量を調節しなければいけません。また納豆が食べれない(ワ-ファリンの効果が無効になる)ことも有名ですね。
脳卒中の最新情報も参考にしてください。
6.最新の話題
まだ動物実験などの研究段階なのですが、脳梗塞になって障害を受けた脳に、ある種の細胞(神経幹細胞など)を投与すると、細胞が再生することがわかってきました。これは従来の医学の常識をくつがえすセンセ-ショナルなことなのです。国家プロジェクトとして行なわれており、数年後には脳梗塞の治療が根底から変わる可能性があります。