ひよこ



 奴の誕生日が近いのだという事に、突然、気付いた。その場にいた3人で、顔を見合わせて、何か用意する事にしよう。と決めて、それぞれその場を離れた。
 日本に来たのは、ちょっとした気紛れのようなものだったのだが、気紛れが重なった人間が他にもいたのは驚きで、気紛れを起こさなかった人間がたった一人という状況には、皆で笑ってしまったものだ。
 それで、なんとなしに出掛けてきた先で、「物産展」なるものが開催されていて、物珍しくそれを眺めていたところで突然思い出したのだ。
 赤茶の頭の、今回の仲間はずれが、もうすぐ誕生日を迎えるのだという事に。
 今更、誕生日も何もあるかよ。と、言い出す者がいるかと思いきや、誰一人としてそれを否定する事もなく、人として自分が生まれてきた日を誇らし気に告げ、それを祝うのは、当然の事となっていた。だから、毎年それぞれ、プレゼントを用意する。会える場所にいれば手で渡し、会えない場所にいれば送りつける。
 だから、自分の誕生日には、某かの贈り物が届くのだと、彼は期待しているに違いない。わざと一日遅れで送りつけてやるというのも、意地悪としては楽しいかもしれないが、祝い事に意地悪を持ち込んでも意味がないし、それなら何もやらない方がましだというものだ。
 そんな事をぼんやり考えている間に、確か、去年はなんとか言う、チョコレートの菓子をくれてやったのだと思い出し、今年も何か食べるものにしようと決めた。有り難い事に、ここには様々な種類の食べ物が揃っていて、どんなテーマで品を選ぶかと考えつつ、辺りに視線を配った。
「……?」
 ぽつり、とそこに置かれていたその白い丸い物体に首を傾げ得ると、すかさず売り子がにこりと笑って声を掛けてきた。こういう場にいる人々は、客の興味を素早くキャッチするものらしく、自分の暮らしてきた世界との違いに、時折戸惑う事もある。だが、今回に限っては、その態度は大変有り難かった。
 説明を聞いたところ、それは「卵」を示しているらしいことがわかった。
 そして、それを聞いて、ふと思い付いた。
 あの鳥のような彼には、なかなかいいネタだと思う。ならば、その関連でもう少し品を見繕う事にしようと、とりあえずそれを購入して辺りを歩きはじめた。
 
 
 
 
「なんだか、大荷物になったね…」
「……そうだな。」
 3人が揃って何やら大きめの袋を抱え、別れた場所へ集まった。それでも、全員が何を買ったのかを告げる事はせず、それを抱えて家路につく。
「でも、揃って日本から品が届いたら、驚くだろうね。」
「仲間はずれにして、何処かへ行ったんだろう。なんて、言い掛かりをつけてくるかもしれねぇぞ。」
 笑ってそう返しながら、やはり、一人だけいない彼の事を、皆が惜しく思っていたのだな、と思った。
「まぁ、これだけ物が届けば、御機嫌になるだろうけどな。」
 そう言ってやると、彼等は納得したように頷き、俺は、この買い込んだ品に、どんな仕掛けをしようかと、思案をはじめた。
 多分、彼がそれを待ちわびているのは間違いないから、まっ先に彼が電話を寄越すように仕向けようと思う。でないときっと、彼は自分への連絡を最後に回そうとするに違いないから。




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24同盟の24祭に出品する作品の前振り。そちらの話は、お祭り開催してしばらくしたら、こちらにもアップします。流石に、一月待つと、ネタが腐るから……
 
実は、1日だけ掲示板にアップされておりまして、保存したら意外に長かったので、チョコッと加筆して作品としてアップする事にしました。
なにせ、掲示板作品なので、製作時間20分とかそういう世界ですので、文章おかしいのは目を瞑って下さい。視点が確定していないのが、最大の敗因だというのはわかっているので…
彼が何を選んで、どうやって送ったのかは、ジェットバージョンを見ていただければわかるので、お楽しみに〜

(2003.1.31)


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