SF書評 2004

高橋しん: 最終兵器彼女

『イリヤの空、UFOの夏』後遺症の関係で一気読み@まんが喫茶。

SF度は臨界値を下回る。作品世界とか最終兵器の設定に関し説明は一切無し。この手の作品群=セカイ系はエヴァ以降増えたのだとか。本作はセカイ系の代表作らしい。結局、セカイ系って何なのか、調べても良くわからなかったりするが...

連載中は第1巻を買った記憶がある。1巻の途中までは単なるヌルい恋愛ものかと思っていた。それと、2巻のふゆみ先輩の話あたりで読まなくなった記憶有り。なので1巻はブックオフに売っちゃった。

通読してみれば、評価を得るに値する作品であるとは思った。でも基本的にラブストーリィであり、二人の高校生の物語であり、キャラも濃すぎて入り込めないくらいなので多くを語りたくもない。もともとが短い話だったことによる全体のまとまりの良さ。そこに挟まる脇役エピソードも物語の厚みを増してる。特にテツとあけみは印象に残った。

絵柄もストーリィも違うが、同時期の『ザ・ワールド・イズ・マイン』にやや通じる、性描写と戦争描写にはマンガならではの雄弁さがある。それに妙な熱気があり、伝染する。やはり絵には敵わない。その中に時折見られる高橋しん的な軽いお笑いが気に障るというより、妙な怖さを感じる。などなど。文庫化されたら買って再読しようかな。

秋山 瑞人: イリヤの空、UFOの夏

弟の友達のを一気読み。

いわゆるライトノベルSF。もろにライトノベル・レーベル(電撃文庫)からの出版なので、「SFが読みたい! 2004」出版までは全く網にかからず。この中の若手座談会メンバーが冲方丁、小川一水と秋山瑞人だったので、ちょっと気になってはいた。しかもこの座談会で、かなりネタバレされてたので、最初と最後を読んでから間を読むという、いいかげんな読み方をしてしまった。

類似作品として『最終兵器彼女』あたりを思い浮かべつつ、エヴァみたいな風味もありそうな全体の印象。中盤まではライトノベル全開。キャラ描写も良いので、お笑い色が勝った学園ものボーイミーツガール・ストーリィが中心と思える中に、妙にハードな世界設定(冷戦がさらに進んだような微妙な異世界)、マニアックなエアフォース系&UFOテクノロジータームを多用した描写が混じり、ヒロインの謎部分の比重が徐々に高まっていく。これらのSF系ネタは基本的に”匂わす”だけであって、最後まで全てが明らかにされることは無い。でも、この作者、このストーリィにあっては、その辺は全然OKな感じ。そしてエンディングに至るもヒロインの去就は一応明かされず、明示的にハッピーエンドやバッドエンドにはなっていない。座談会でも、おそらくそこら辺を小川一水がつついていたのが読前から印象にあった。作者のスタンスの違いが明確で面白くはあるのだが、完全にネタバレで読んでたわけで、ちょっと残念。ちなみにエンディングに関して、個人的には多分、作者と同じ見解。

全部読んだ後では割と気になる作品になってしまった。手元に買い置くか思案中。また、SF的には「読みたい」順位が冲方1位、小川2位、秋山7位は納得。個人的には小川、冲方の順で、秋山は別座標軸。

webでイリヤ情報探索中。SFで、こういうことするのは『航路』以来。

笠井潔の書評へリンクを張っておく。あまり好意的でもない書評。ていうか、評者の読み方には疑問がある。

とはいえ、この書評に対して大森望は冗談説を冗談ぽく主張している。

シオドア・スタージョン: 海を失った男

初めて八王子図書館で借りた。大森望推奨、「SFが読みたい! 2004」Best10入りあたりが動機。

短編集だが、全体の感じは何とも例えようがない。強いて言えば、やはり愛について語っているような...。作風はホラーもあればSFもあり、主流文学的なものもいくつか。表題作は何だかわからなかった。訳はこなれてる。他のも読んでみようという気になっている。

ラリィ・ニーヴン: 中性子星

図書館で借りた。ノウンスペースシリーズ短編集。ほとんど読んでない数少ない巨匠の一人。高校の頃読んだ『無常の月』は良かったけど。

表題作はいいけど、全体に訳がさえない感じ。いま一つ印象に残らず。