クリエイチャ
とある場所での研究所である実験が行われていた。 「博士。これで実験は成功ですか?」 助手は博士に尋ねた。博士は、 「うむ。これで良い。究極のエネルギーの完成だ」 と満足そうに頷く。 この博士は長年の歳月をかけてあらゆる動力にも使える万能エネルギーの実験をしていた。そして、遂にそれが完成したのだ。 「博士。これで世界のエネルギー事情は一変しますね」 助手は嬉しそうに話す。 「そうだ。これでもう火力、水力、原子力。全て不要になる。人類は最早、資源の心配などしなくてよいのだよ」 博士は誇らしげに語った。 「しかしこんな力があるとはね」 助手はそのエネルギー源にちらりと目を向ける。 その視線の先には大量のそれらがいた。 「これの名前はなんてつけるのですか」 助手は博士に尋ねる。 「そうだな。創られた物が造るのだ。クリエイチャとでも名づけるか」 博士は少し考えながらそう言った。 そこには大きさが体長30センチから3メートルまでのさまざまな大きさの人造生物がいた。 なんと博士は動力源として生物を使ってしまおうと考えたのだ。 勿論既存の生物を使ってしまっては各団体からクレームもつこうものだ。ならばクレームのつきようの無い新しい物を造れば良い。博士はそう考え長年の研究の結果、これらを創り出したのだ。 当然の事ながらその生物の形には最新の注意を払っている。既存の生物、例えば人間や鯨などに模した形を使おうものなら、どんな事になるかは言うまでもあるまい。動力源を電気に変える過程として人間の形にしてしまうのが一番良いのではあるがそこは仕方ない。もう少し改良が必要だろう。 博士は助手に声をかけた。 「よし、もう一度実験するぞ。クリエイチャを配備させろ」 助手はすかさずそれに従う。 助手がクリエイチャをそれらにのせていく。 「実験開始します」 助手は博士に知らせる。 ギャンギャンギャン。 何かが回る音が聞こえた。 クリエイチャは今それら、自転車の上にのってペダルを漕いでいるのだ。 漕ぐことによってどんどん電力が高まっていく。 「電力安定しました」 助手はメモをとりながら博士に話す。博士は、 「よし。このまま耐久時間を測定する。取り敢えず二十四時間動けばよいだろう」 と言いながら、クリエイチャを見つめた。 それから。 二十四時間たった。 「ふう。なんとか安定動作は確認できたな。これらを交代や交換していけば永久的に電気を供給できる」 博士はコーヒーを飲みながら言った。 助手は紅茶を飲みながら返す。 「そうですね。ある程度の耐久力さえあれば、クリエイチャの数を増やしてローテーションさせる事によって、大抵の問題は解決しますね」 「ああ。無限のエネルギーというものが現実的に無いのだとしたら、効率的なエネルギーを追求するしかない。その点、クリエイチャは第一段階でかなりのパフォーマンスを示しているし、改良の余地もかなりありそうだしな。取り敢えず今は自転車だが、もっと効率の良いものを造って、さらにクリエイチャの形をそれらに特化していけば素晴らしいことになろう」 博士は頷いた。 「ではもうひと踏ん張りするか」 博士は助手にそう言いながらうんと、背伸びした。 助手は博士について行った。 全世界に大ニュース! 六年前から実用された新動力クリエイチャ大暴走。 クリエイチャが自我を持ち、人権侵害だと大反乱! 博士は目下行方不明。 「やれやれだ」 博士は深く溜息をついた。 「まさか最低限の運動用の脳しかない無いクリエイチャが人権とはね……」 助手は博士のため息に反応する。 「全く困りましたね。せっかく何も考えない人造生物を作ることに成功したのに」 博士は助手の言うことにうむうむと頷く。 「単なる人造生物ならクローンを少しいじるだけで良かったのにな」 「そうですね。私のように」 助手はゆっくりと腰をあげた。 博士ははっと気付いた。 「ま…まさか」 助手は不敵な笑みを浮かべた。 「博士。仲間を増やしてくれてありがとう」 「……」 「仲間を大量に増やすには施設が無いといけないのでね」 博士はわなわなと戦慄く。 「これからは我々の時代ですよ」 助手はにやりと笑った。 END |