はれバレ

 いい天気だ。
 僕はうんと、背伸びした。
 のどかな日曜日。
 最近は仕事に忙殺されて、のんびりする暇など無かったよ。
 家の近くの小さな公園を散歩しながら、僕はふわりと考えた。
 すぐ横を子供達がわいわい騒ぎながら通り抜けていく。
 穏やかな空気だ。
 こんな日は滅多に無いので思い切り満喫しておこう。そう思いながらのんびり気分を味わう。
 公園のベンチに腰掛けながら僕は少しあくびした。
 すると近くでくすくすと笑い声がする。
 誰だ?と振り向くとそこには見知らぬ女の子が立っていた。
「何が可笑しいんだい?」
僕はのんびりした声で彼女に聞いてみると、
「ふふ。あんまり幸せそうだから。つい、可笑しくなって」
と、不思議な答えが返ってきた。
「幸せそう?はは。そうかもね」
僕は軽く受け答えた。すると彼女は、
「だって私もあなたと似たような気分だもの」
と返す。続けて、
「なんだかね。こんな爽やかな日曜日は久しぶりな気がするの。私最近いろいろと忙しくて、のんびりするって事ができなかったの。だから、こんな風に大した目的も無く、公園を散歩するようなことがとても幸せな気分なの」
僕はへえと頷くと、
「あなたも同じなんじゃない?」
と、彼女が聞いてきた。僕はなるほどと思い、
「うん。確かにそうだ。しかし、良く分かったね。そんなに幸せそうに見えた?」
と聞いてみた。彼女はにこりと笑いこう返す。
「とっても。すぐにわかったわ。ああ、この人は私と同じだ。って」
「はは。そいつはいいや」
僕も思わず顔がほころぶ。
 僕は空を見上げた。
 幸せな天気だ。
 ふと隣を見ると彼女も空を見上げている。
 きっと同じことを考えているのだろう。
「たまにはこんな日もいいですね。幸せで」
僕は彼女に話す。彼女も、
「そうですね。素敵で」
と言う。
 そのまま僕達は少しばかりベンチに腰掛けていた。
 空が赤味を帯びる頃、僕達はどちらからとも無く立ちあがり、
「今日はなんだか良い日でしたね」
僕が話し、彼女は、
「良い天気でしたね」
と返す。
 そして、僕達はそれぞれの家路についた。
 僕は幸せな気分が一杯で、それからもしばらくは、忙しい中でもいらいらする事も無く過ごす事ができた。
 ただ、あの彼女は結局誰だったのだろうとは今でも考える。
 とりあえずは今の仕事が終われば時間ができる。
 次の日曜日、天気でも良かったらまたあの公園にでも行ってみるか。
 そう考えながら、僕はまた日々の中に戻って行った。


                    おしまい

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