深夜の散歩が好きだ。
僕はてくてくと夜道を歩く
静かな夜が好きだ。
出来れば月がこうこうと僕を照らしてくれればいい。
受験生だった。
ちょうど昨日まで。
でも今は開放されている。昨日までの出来事が僕の脳裏に浮かぶ。
案外あっけなかったなあ。
今となっては何であんなに必死だったかもわからない。小学生に始まり、中学、高校、そして大学。何か今まで受験しかした記憶が無い。
一つの受験が終わる時、それは次の受験の始まりだった。
それって、もしかしてつまらなくない?
僕は僕に問いかける。
いや、そうでもない。
僕は考える。繰り返しだけど、同じ事をしてた訳じゃない。ちょっとずつ起こる日々の変化はそれだけで愛おしい。変化ばかりの毎日じゃ息をするのも大変だっただろう。
知らないことを知るのは楽しかったし、やりたい事ができないのは悲しかった。半分半分だ。
そんなもんじゃなかろうか。
理屈をこねても、結局は何も変わらない。
僕達は本能的にそれを知っている。
だから。
すすむ。
でも、いつも止まらずに進めるなんて訳が無い。
そして、立ち止まる。外に出る。空を見上げる。
空では星が瞬いている。一つ一つが太陽だ。
月は満月だ。人が住んでると昔は思っていた。
今は?
知ってしまったのか、思い込んでいるだけなのか。
この空は千年前と同じなのだろうか。
外では取り留めの無いことが頭に浮かぶ。
それを人は哲学と言うのだろうか。それとも単なる夢想と呼ぶのだろうか。
小さな時から同じ事をぐるぐる考える。
答えは、出ない。
きっと出てしまったらつまらないのではなかろうか。
それは夢中だったおもちゃに飽きてしまうのに良く似ているのではないだろうか。
そんな事を考えながら、僕はてくてくと道を歩いて行く。
こんな事を考えるのも今日で最後だなんて不思議だなあ。なんて考えながら僕は迎えを待った。
彼らは来た。
僕は彼らとてくてくと夜道を歩く。行き先は知らないけど知っている。
人は皆そこに行くのだ。
僕は全てから開放された。
了 |