10holes harmonica、またはブルースハープ。その名の通り、10個穴の空いたハーモニカです。 主にRockやBlues、そしてCountryなどで使用されているアレです。

独特な音色により愛好者やファンも年々増えては来てると思うのですが、なんとも奇妙な音配列により、 演奏するジャンルによって極端に難易度が変る困った楽器でもあり、演奏者を苦しめます。 このハーモニカを幅広い音楽ジャンルに渡って演奏するには、いろいろ知っておかなければ 成らないことがありそうです。

さて、その音配列を下に紹介しましょう。

C Major keyの音配列
穴番号12345678910
吸音DGBD(レ)F(ファ)A(ラ)B(シ)DFA
吹音CEGC(ド)E(ミ)G(ソ)C(ド)EGC


 はて、いきなり”C Major key”とか出て来てしまいましたが、いわゆる長音階の事です。 10HolesにはKeyというものがあり、メジャー配列だけでも12Key(12本)存在します。 上のC MajorKeyで例を挙げると、4穴の吹音Cから7穴の吹音Cまで演奏すると奏でる音は おなじみのドレミファソラシドになります。C MajorKeyに限らず、どのMajorKeyを演奏してもドレミファ ソラシドと聞こえるのですが、違いは4穴吹音、ドレミファソラシドのドと聞こえる音が Cなのか、Dなのか、はたまたEbなのかによって違います。CならばC調、DならばD調といった具合 になり、それぞれそういう配列のMajorkeyが別に存在します。

 例えば、ピアノなどはクロマチックスケール(半音階。ドからドまでの1オクターブを平均的に 12に分割したもの。白鍵と黒鍵を順番にすべて選択した音階です)を簡単に出せますが、 10Holesと言うのはその中からあらかじめ7つの音を選択してある楽器ともいえます。 良く言われる"ドレミファソラシド"もその一種であり、マイナー音階である"ラシドレミファソラ" と聞こえる音階もそうです。そして選択しなかった残りの5つの音は、あるテクニックに より出していくことになります。後に述べますが、ベンディングとか オーバーブロウというものです。

 半音階がクロマチックと言うのに対して、この7つの音選択はダイアトニックと呼ばれます。 そして10holesは、ダイアトニックハーモニカ、といえます。


*何故ダイアトニックなのか?*

ダイアトニックな音階(例えばドレミファソラシド)で作られた曲が多いからでしょう。 そしてその曲を演奏する為に割り切った構造にした、とも考えられます。 無駄な音が入ってないという事は、時としてミスを少なくし、演奏が易しくなります。 が、逆にいえば、それ以外の音も頻繁に出てくるような曲に対しては演奏が難しくなる部分も あるのだ、といえます。10holesに限らず、ハーモニカにはKeyと言うものがありますが、 その意味は、"使わない音は省いて演奏の手軽さを求めた"と取れなくも無いです。


さて、低音部でも見てみましょう。

C Major keyの音配列
穴番号12345678910
吸音D(レ)G(ソ)B(シ)DFABDFA
吹音C(ド)E(ミ)G(ソ)C(ド)EGCEGC


低音部、穴番号でいうと1〜3番になりますが、この音域を演奏しても、ドレミファソラシド とはなりません。聞こえてくるのは、ドレ ミソ ソシ、です。なんじゃコリャ?と思うかもしれません。
何故このような配置なのかは不明ですが、よく見ると1.2.3番を同時に吹くととドミソの和音 (Cの和音)吸うとソシレの和音(Gの和音)が奏でられることが解ります。(C Major Keyの場合です)

 これは、C Major Keyで演奏される曲に頻繁に使われる和音でもあります。 例えばブルースやロック、カントリーなどの分野では、これを利用して和音とリズムに よる演奏も良く聞かれますし、それが通例となってる部分もあります。その中でメロディ を吹く為にはやはりベンディング というテクニックが必要になる訳ですが、この辺にも割り切りというのを感じます。 気軽に手軽に演奏を楽しむ上での省略とでもいいましょうか、ある限られた範囲内の 演奏において、極めて簡略な構造を持っている、と言うことになります。



最後に高音部です。


C Major keyの音配列
穴番号12345678910
吸音DGBDFABD(レ)F(ファ)A(ラ)
吹音CEGCEGC(ド)E(ミ)G(ソ)C(ド)


ここでも音が抜けています。シの音ですね。これもベンディング によって出すようになります。この辺はなんともウーム、なのですが、小さくまとめる為に便宜上省略したとしか思えません。 そして吹き音にはすべてドミソドミソドミソドと言ったようにCの和音がまとめられてる事になります。



ここまで、C Major Keyの音の配列を紹介してきました。たった10穴のハーモニカで 実に3オクターブの音域を兼ねる楽器ではありますが、このように音が抜けてる部分が ありますし、それをベンディング によって補うことによって10Holes独特のサウンドを奏でることになるわけです。

ではベンドが出来なくては10Holesは演奏できないのか?確かにベンディングができれば それは10Holesの一つの魅力になりますが、先にも話したとおり、ある範囲内で極めて 簡略に、手軽に演奏できるように割り切った構造をしている訳ですから、演奏する曲に よっては簡単に吹けるものもあります。 そしてC Major Keyの場合、ドレミファソラシドで作られた曲がそれに該当する訳ですね。