最新の治療

脳梗塞

平成13年6月に世界初の脳保護剤であるラジカット(三菱ウルファ-マ社)が使用可能となった。これは脳梗塞になった場合に、梗塞巣の周囲でまだ生き残っている部分(ペナンブラという。詳しくは脳卒中を)を救う効果がある。発症24時間以内に使用しなければならないが、この薬剤を使用することにより後遺症が軽減することが証明されている。
また、脳梗塞の超急性期(発症から3〜6時間以内)の場合には、つまった血管の中にマイクロカテ-テルという細い管を挿入し、つまった部分を薬剤を使用して溶かしてしまい、血流を再開通させる
急性期血栓溶解術も行なわれ、患者の重篤な状態を改善させることができる。当院でも積極的に施行している。
ただ、平成17年10月より、
tPAという脳梗塞の原因となる血管に詰まった血の塊(血栓)を溶かす効果のある薬剤を使用することができるようになった。脳梗塞の発症後、早期に投与すれば約4割の患者が後遺症なく社会復帰できるとされる薬剤である。今回、適用が認められたのは三菱ウェルファーマの「グルトパ」と、協和発酵の「アクチバシン」で、すでに心筋梗塞の治療薬として使用されていた。
脳卒中最新情報も参考にしてください。

片頭痛

平成13年8月にトリプタン系製剤である、イミグラン錠(グラクソウルカム社)とゾ-ミック錠(アストラゼネカ社)が発売され、平成14年6月からはレルパックス錠(ファイザ-社)も登場した。今までは、一般の鎮痛剤や、エルゴタミン製剤という鎮痛剤しかなかったが、セロトニン受容体作動薬であるトリプタン系薬剤は、効果発現も早く有効率も高く(15〜30分で効果発現し、約80%は有効)、片頭痛で悩んでいた患者の福音となるものと考えられる。イミグランの注射薬は以前からあったのだが、病院にいかないと投与できない不便があったが、経口剤となったために汎用されるものと考える。平成14年7月よりはゾ-ミック口腔内速溶錠が登場して水なしで服用可能になり、平成15年6月よりはイミグラン点鼻液が、9月よりはマクサルト錠マクサルト口腔内速溶錠(エ-ザイ社)が発売されるなど、製剤の種類も服用方法もどんどん増加して便利になっている。

未破裂および破裂脳動脈瘤

突然の激しい頭痛と嘔吐で発症するくも膜下出血は、その原因の80%が脳動脈瘤の破裂による。この脳動脈瘤は成人の約5%に存在するとされ、現に脳ドックでの発見率は5%前後になっている。この破裂する前の未破裂脳動脈瘤に対して、破裂する可能性が高いので(年間約1〜2%)手術をした方がよいとする意見と、破裂する可能性は低いので(径が1cm以下では年間0.05%)治療は不要とする意見があり、決まった治療法はないのが現状である。今までは動脈瘤は開頭術にてクリップをかける手術が根治術であったが、最近は血管内手術というカテ-テルを使用した治療法が施行されている。動脈瘤に関しても、コイル(GDCコイル)を詰めて破裂を防止する手術が普及し、2000年には動脈瘤の根治術の約10%を占めるようになった。もちろん、当院でも両者を行なっている。

術前(左)では前交通動脈に動脈瘤(→)が認められるが、術後(右)では動脈瘤内にコイルが入り、動脈瘤は写っていない(→)


顔面けいれん

一側の顔面、特に眼瞼(まぶた)周囲にピクピクとした不随意運動が出現する疾患で、主な原因は顔面神経が動脈硬化で蛇行した動脈によって圧迫刺激されることによる。今までは、神経血管減荷術という開頭手術が主な治療法であったが、平成12年よりはボツリヌス菌のA型毒素であるボトックス(アラガン社製)の筋肉内注入が保険適応となった。有効率は約90%であるが、有効期限が約3-6ヶ月で、繰り返して注射しなければならない。しかし、手術の危険性を考慮すれば、患者には福音である。投与するには訓練を受けた専門の医師が必要で、当院でも砂田医師が施行している。

脳血管奇形

脳に存在する血管の奇形が原因で出血して脳内出血を生じる場合がある。従来はこのような血管の奇形は手術で摘出するか、血管奇形を含んだ広い範囲に放射線をあてるような治療がなされてきた。最近では、血管奇形だけに放射線をあてることができる方法(これを定位放射線治療という)と装置(ガンマ-ナイフ、エックスナイフ、サイバ-ナイフ等)が開発され、安全に治療することができるようになってきた。また、血管奇形の部分に非常に細いカテ-テル(マイクロカテ-テル)を血管内で誘導し、そこから特殊な物質を注入して血管奇形を固まらせてしまう手技(塞栓術という)も広く行なわれるようになってきた。

頸動脈病変

近年、食事の西欧化が進み、脳卒中の原因として頸動脈(首に手をあてた時に触れる太い動脈)に病変が存在することが増加しています。これはコレステロ-ルに代表される脂質が血中に増加することにより誘発されると考えられています。頸動脈に狭窄(狭くなること)が存在した場合、その血管の壁についた脂質の塊を取り出して将来起こる脳卒中を予防する手術(内頚動脈内膜剥離術と言います)をしてきました。しかし、最近は血管内に入れたカテ-テルを使用して狭窄を改善する手術(血管内手術による内頚動脈拡張術)が開発されてきました。その際にはステントという金属でできた網状の中空の管を血管内に留置するのです。切らずになおすという概念が脳神経外科の世界にも広がりつつあります。


左:内頚動脈の著明な狭窄がある
中央:矢印がステント
右:ステントを入れた後。内頚動脈の狭窄は改善している

左と右の写真はコンピュタ-処理で骨が消えて、血管内の造影剤だけが見えるようになっている(DSAを参照)

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