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ものづくし

(10/24 1999 〜 11/30 1999)

もの (material) にまつわる憶い出いろいろ
求めるべき義務と、抱きしめるべきざらつく現実をかかえて地上に戻される!

味の招待席(10/24 1999)

 米朝師匠ですな。

 普段からできるだけ料理は自分で作るようにしている。アレがナニだというよりは、何となく楽しいからという方が強い。初めての一人暮らしだからなんだろうなあ、きっと。で、今晩はいい牡蠣が手に入ったので牡蠣とホウレンソウでクリームシチューを作ることにした。当初は牡蠣とホウレンソウのグラタンになるはずが、よく考えたらグラタン皿を持っていなかったから、という結構情けない理由なんだけど。
 下拵えとしてホウレンソウは湯がいてから笊にあけて湯を切る。ホウレンソウとかチンゲンサイとか、青い野菜は買った日にこうやって湯を通しておいて、使わない分はラップに包んで冷蔵庫に入れておけば一日二日は保つので一人暮らしでも案外敷居の低い食材ではあるね。牡蠣は白ワインで軽く湯がいて、これもまた笊にあけて湯を切る。今回湯がいた後のワインはそのまま置いておいてシチューを煮込む際のスープとした。他の具材として適当な大きさに切った玉葱としめじでもって、あとはルウの外函に載ってたレシピ通り作る。ホントはバターと小麦粉と生クリームとでホワイトソースも自分で作れれば一番だったんだけどね。火加減調節が激しく大雑把な電磁コンロにも負けず一時間ほどコトコト煮込んで完成。バケットを添えて召し上がれ。
 初めのイメージとしてはホワイトソースの上に緑のホウレンソウがぷかぷか浮いているのを狙ってたんだけど、ホウレンソウはとろとろに融けてしまっていた。そういった用途ならブロッコリーの方がよかったんかな。ちょっと見栄えが悪くなってしまったけど味についてはイメージ通り。うーん、極楽(^_^
 さすがに貝類はちょっと怖いからその日のうちに食べ切らなくちゃならない。その分ややコストパフォーマンスは悪い気もするけどま、たまにはね。

 あらかじめ組み合わせとその結果生み出されるものをイメージし、でも結局のところはライブ乗りの出たとこ勝負で自分のイメージをよい方に裏切ろうとする。そんなあたりわたしにとっての料理は画を描くのと根っこでは繋がっているんだと感じる。
 でもこうなるとうちのコンロが電磁式なのがどうにもこうにも。ガステーブルのおうちに住みたいよぅ。

 ほな、今日はこの辺で。

21世紀に間に合いました(11/7 1999)

 きのう、自動車教習所を卒業した。通い始めたのが7月だから足かけ4カ月ほど掛かったことになる。ま、土日しか行けなかったのだからしょうがないか。時間オーバーはしてないぞ。
 学生時代は別に自動車運転免許が必要だとも思っていなかった。「ちょっと古い、クルマ」にココロひかれたり小道迷子『風します?』を読んで二輪免許が欲しくなったことはあっても、ね。それが宗旨変えすることになった理由というのは、まあ業務上の必要に迫れられてのことなんだけど。でも、教習所でアクセルを踏み込んだりクラッチを繋いだりしているうち、気持ちに変化が生まれてきた。スピードというよりもむしろ、内燃機関を自分の手で操作することが堪らなくファンな行為だったことを知る。けだし自動車とは「石油で走る鉄と硝子の箱」というそれ自体はなはだ20世紀的な存在だったのかもしれないね。
 しかしこの辺だと駐車場代がやたら高価くてとても車なんか持てないね。カプチーノとかsmartとかボクスターとかアルファロメオ スパイダーとかマツダ ロードスターとかエリーゼとか、色々気になる車はあるんだけど(二座以外の車にはあんまり興味がないなぁ。AUDI TTかトミーカイラマーチぐらい? 三列シートとかは論外ね)。
 あと今回の経験で免許産業にケーサツ関係者がべったり癒着していることなど色々知ることができたのだけどそれはまた、別の話。

 で、その日の晩はたつろ君と吉祥寺は米吉ていう創作料理の店で食餌。大根と炊き合わせた豚の角煮がとろけるように柔らかかったり、はんなりとしているのにしっかりと味付けの芯がある釜飯。う巻きの触感設計が絶妙だったり、秋の香を存分に感じさせてくれる舞茸と銀杏の天麩羅など、いま憶い出しながら列挙しているだけでも陶然としてしまうような料理の数々。器にすごく凝っていることなども併せ、あくまで居酒屋というベクトルを崩すことなく非常に高い次元でバランスを保っている、すごく好い店だった。すいすい喉を通る地酒を呑みながらロシアの神話やミステリとしてのシュレディンガーの猫など馬鹿っ話で盛り上がる。
 店を出たあと酔いざましに井の頭公園まで歩く。通りを歩くうち、さっきの店も吉祥寺だから成立できたのかもしれないなと感じた。夜にあっても、なんだか溌剌さを放つ街。夜の新宿や渋谷の頽廃とはまったく異なる色を持つ大気。たつろ君が以前下宿していた関大前に近い雰囲気を持っているね、というところで意見が一致する。
「ここに来るとなんだか帰ってきたような気がする」
 そんなことを言う。まったくそうだと思う。カイシャへの便さえ良ければ中央線沿線へはすぐにでも越したいところではあるんだけどなあ。
 辿り着いた夜の井の頭公園はアベックで一杯だったのでそうそうに退散(^_^;。個人的には池のほとりのニセモノの木が見られたので満足。

 その後三鷹のたつろくん邸にお邪魔して泊めてもらった。途上借りて帰った『8mm』は、うーん。『セブン』と比べちゃうと主人公が激昂する動機が不充分と言う印象。結局ニコラス・ケイジとその家族は彼ら自身がのっぴきならないところに至ってしまったわけでもないしなあ。スナッフフィルムという題材を除けばありふれたB級アメリカアクション映画だね。
 名のみ聞いていた『FLAT』を見せてもらう。すげえクオリティ。ちょー欲しくなる。知らない名前が多々あることに世界はまだまだ広いなあと慨嘆。うーむ、ふつふつと湧いてくる(何がだ)。

 かようにして、私の25回目の誕生日は暮れたのだった。愛すべき混沌的状況であることだなあ、まったく。

翠/玻璃(11/13 1999)

 午前11時のヒカリの中。試薬瓶が水滴を纏ったまま作業台の片隅に置かれてゐた。型に流され四角柱に形成された透明の珪素化合物。光と影との境界線上に佇みながら、光に融けこもうともせず静かに向かい合う。抗うよう――惹かれるよう。

 『鳩よ!』11月号は尾崎翠の特集ということで購入。尾崎翠ってのは、きっとひとつの「体験」なんだろうと思う。いまなお無名の霧の中にある表現者だから誰にとってもその出逢いは不意のものになる。だけど(だから?)何刻までも忘れられない。私も出逢って以来8年を経ながら尾崎翠について何か書こうとすると胸の奥にちくちくする痛みを感じる。それはどうにも言葉にしづらい感覚で、敢えて言うと恋にも似たものなのかもしれない。尾崎翠その人ではなく、彼の女の文章、もっと言えばその文字・活字に対する恋心。

人間が恋愛をする以上は、蘚が恋愛をしないはずはないね。
(第七官界彷徨)

 特集自体はそれぞれの尾崎翠体験を持つ筆者になるテキストもさることながら、ヒラチイサオの写真と尾崎翠の文章(の一節)とのコラボレーションが尾崎翠的空気をごく自然に伝えてくれていてとても好かった。結局、理解しようとする試みのひとつ上のところを彼の女の文章は、冬の風のように、少し哀しい貌をしながらひらりと舞っているのだ。あと、尾崎翠の魅力を少女性に帰属させようとする特集の意図自体はちょっと疑問。私にとっては、尾崎翠は長野まゆみや遊佐未森と同様、少女性というよりもむしろ無性性ゆえに惹かれたと思っているから。未生といってもいい。

Y・Y氏の休暇(11/30 1999)

 11/24〜11/26まで年休を取得した。うちの会社には年に計5日、理由を問われずに連続して年休を取得できる制度がある。そのうち2日は8月にもう使っちゃっていたので、今回残り3日を消化した。因みに8月は十六夜くん一派で八丈島に海水浴に行ってきた。夢の裡にあるような島での、なかなかスタンド・バイ・ミーな旅で楽しかったのだけどちょっとここには書く機会を逃しちゃったね。
 で、今回の6連休では何をしていたかというと前半はひたすらを描いていた。普段だと朝4時まで描いてそのままバタンQし、昼過ぎにのそのそ起き出してまたタブレットに向かうような生活なんかできないからねえ。気力的には結構きつかったけど、まあ楽しかったこと楽しかったこと。すっかりリフレッシュしてしまう。まだ、戦えるかな。

 後半はといえば、ひたすらG4の到着を待っていた(笑)。Apple StoreでG4/350Mhz/PCI(w/DVD/128MBytes RAM/SCSI ――Build To OrderをしたかったのでApple Storeで買った)を注文したのが11/13。11/14に注文内容の確認メールが来て、11/20に「11/25に到着予定」との連絡。その後11/23に発送したとの連絡が来た。荻窪圭師匠によればだいたい到着予定日+3日らしいのだけど、やっぱり外出しているうちに来たらイヤやん? だからほとんどずっと待っていた。結果、到着したのは11/29。もうちょとリアリティのある納期を連絡して欲しかったような気がしないでもないでもない(笑)。いやいいけどさ。でも到着を待っている中にG4/350MHzモデルが仕様変更したって話は悔しいから書くもんか。ていうかこの仕様ならわざわざApple Storeで買う必要も無かったってあたりナントモハヤ。
 環境をてろてろ移行する。プリンタはGeeThreeのStealth(モデムポートに接続するシリアルカード。G3のシリアルポートと同じチップセットを使用しているというのがウリ。似た製品にGriffinのgPortってのがあるけど両者の違いは秋葉館のにーちゃんによれば「名前とパッケージぐらい」らしい)を介して接続することにした。うちの娘はHP LaserJet4PJという、Macintosh界隈ではなかなかにマイナーなプリンタなので動作確認などあるわけも無く、なかなかドキドキだったのだけど無事接続完了。ほっと一息つく。最後にハードディスクの名前を槙絵に変更して移行は完了。7100/66AV、5年間ホントありがとう。

 やぁ、G4、ええね。らぶらぶ〜。折角だしDVDを掛けてみたいよねというわけで石丸電気で『レオン』を買ってくる。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『地下鉄のザジ』とどれにするか迷ったのだけど、結局いちばん無難な(観たことあるの)のにした。
 ほうほう、これがMPEG-2か。なかなか好いんちゃう? で、今回『完全版』を始めて見たのだけど、結構印象が違うね。たとえばレオンとマチルダが二人で仕事をやるシーンがある所為で、そのあと麻薬取締局にレオンがマチルダを救出に向かう意味合いがちょっと変わってくる、とか。個人的には公開版の方がカチッと締まっていて好みか……な。で、このディスク、音声と字幕が英語と日本語、好きな組み合わせができるようになっている。だから日本語音声+英語字幕でパワーレンジャーにしたり、日本語音声+日本語字幕でようこそようこにしたりして遊ぶ。ま、いちばん実用的なのは英語音声+英語字幕だろうけど。
 駅前のTSUTAYAでもDVDレンタルをしているのでこれから楽しみなのだ(ビバップとERも置いてるし)。これまでビデオどころかテレビさえなかったからね、我が家(笑)。あとは『バロン』『迷宮物件』『Forest Notes』『ユメノ銀河』『王様のレストラン』を出してください>各社。特に『王レス』BOXをぷりーず。

 そんな日常の合間に『ARMS(10)』を購入。今巻の主役は003……じゃねェや、久留間だね。週刊連載でこのテンションを維持し続けているのは凄いの一言。何処に出しても恥ずかしくないエンターテインメント。メジャー作品は一位にしたく無かったんだけど、これだけのことをやられれば今年の私のベストコミックは決まりかなあ。展開が甘いって言う人もいるかもしれないけど、いちばん大切なのは少年漫画が甘くなくてどうするんだってこと。


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