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ものづくし

(12/19 1999 〜 2/5 2000)

もの (material) にまつわる憶い出いろいろ
…なにやってんだよオレは…/こんなくだらねえ所で/安っぽく命張って

土日旅人(12/19 1999)

 何の因果か(ルーキーだからなんだけど)研究所の忘年会の幹事をすることになってしまった。会場の予約なんかは先輩がしてくれたので新入りは余興の企画を立てることに。なんだかこういう状況になると血が騒がないでもなかったけど人数があまりにも多かったり年齢の幅が広かったりみんな酔いどれだったりするので、結局ビンゴというもっともヨワい企画にまとまった。で、12/11はその賞品を買い出すために新人3名で池袋に行った。今回買い出すのはビンゴ物品と賞品、あとそれらを包むラッピンググッズ。賞品は東武地下でワインとチーズを買うことにした。ワインは3人とも詳しくないので店の人に見繕ってもらうことに。私はその間店の中をうろうろする。ミレニアム関連のワインが結構あるなあ、とかディスプレイを眺めているうち、ワインのボトルの中にひとつ、ブーツが並んでいるのを発見した。と思ったらそれはブーツじゃなく(当たり前)ゴルチェデザインのワインだった。真っ赤な編み上げのレザーでボトルを包んでいる。なんというか……ゴルチェだなあと(笑)。
(後日談。当日は成り行き上ビンゴの司会をすることになった。門前の小僧のなんとやらでどうにかなるかな、と思ってたけど酔っぱらいの酔っぱらい具合があれほどのものだとは思わなかったです。見事玉砕)

 12/11の話に戻る。池袋で買い物する前、新宿のヨドバシカメラで電気剃刀を購入。ボーナスが出たら買おうと思っていたものだ。1万円前後で水洗いできるやつ、という条件で店の人に話を聞いたりしながらうんうん悩んだ末、最終的にはセイコーのVIDANってやつをデザインで選んでしまう。銀×青(ちょっとスケルトン)でなかなか。だって試し剃りとかできないもんねえ。デザインとかブランドで選ぶしか無いやん。
 んで池袋を挟んでその日の晩はたつろ君、十六夜くんに新宿で合流。最近引っ越した十六夜くんの家財道具の買いものを兼ねてなんだそうだ。私が合流するのが遅かったんでそっちの方はあまりつき合えなかったけど。そのあと東新宿のほのほと言う店で食餌。飛び込みだったんだけど雰囲気○料理○日本酒○な店でした。メニューに鍋があったんで鱈鍋などを三人でつついたりして。そしてそれを肴に日本酒を呑んだりして。メニューに書かれている日本酒の紹介文がまたそそるんだ。好い気分に酔う。とろんと頬杖なんかついてみたり。倖せ〜。えーと、どんな話したっけなあ。よく覚えてないや(^_^;
 その後区役所そばのパセラでカラオケ。なぜか80年代ヒットが今夜のテーマとなる。ほら、世紀末だから。曲に加えて流れる映像がすごくノスタルジック(笑)。服飾業界の通説じゃ、15年前に流行したものがいちばんダサく見えるんだってね。ちょうどその頃。
 翌朝7:30まで唄いあかしたあとそばのミスドで朝食をとる。向かいの映画館の『ジャンヌダルク』と『御法度』の看板が気にならないでもなかったけど、200%寝る! というところで3人の意見が一致したのでそのまま解散することになった。
 9時前に家に帰りついたのでそのまま布団にもぐり込んで正午頃まで仮眠をとる。そのあともそもそ抜け出して昼食にざるうどんでも作ろうかと乾麺をゆでていると携帯にメールが入った。十六夜くんと、もし日のあるうちに起きれたらアキバに行こうと示し合わせていたのでそれかな、と思って見てみると元後輩からだった。出張でこっちに出てきているらしい。久しぶりだし会おうかということで新宿に向かう。会った後、マクドで歓談。大阪の方の近況なんかを聞く。うーむ、人生いろいろだなあ。ただ、さすがに私は結構テンション低かったんでちょっと申し訳なかったかも。スマヌ>嬢。

1999年ベストコミック(1/4 2000)

1.ARMS(皆川亮二+七月鏡一)
2.象夏(黒田硫黄)
3.五次元療法(田中達之)

 だね。今年のベストコミックは。長編と短編を同列に論じるのはちょっとアレだけど、まあ。
 1位のARMSは文句の付けようがないでしょ。たとえばアメリカンコミックやハリウッド映画なんかから実によい影響を受け、加えて少年漫画の系譜の中に自らをしっかりと位置づけ、今の子供たちを取り巻く状況を踏まえた上で、なお自分なりの言葉で語り直したてらいも恥じらいもないエンターテインメント。何と言っても「心を繋ぐ意味」がメインテーマだ(多分)。少年漫画というメインストリームにおけるもっとも同時代的で、かつ誠実な仕事として高く評価されるべき。私にとっては露悪もパロディも自閉症的な世界も――要するにオタク的な一切はもうたくさんなのだ。状況論的に言うと、もしかしたらこれから少年漫画はちょっとしたルネッサンスに入るかな、という予感も込めてね。あと私としては武士の「高槻くん、君はどこに落ちたい?」がこれからいったいどういうシチュエーションで出てくるのかが楽しみで楽しみで。
 2位は、短編集『大王』として括るのなら文句なしの一位。その中から大好きな作品『象夏』を挙げておく。えー、黒田硫黄もブレイクの兆しね。嬉しい嬉しい。『大日本天狗党絵詞』も重版されたし……って、品切れさせてたんかい(笑)。作品については短編なんでとにかく読んで欲しい。実に爽やかな作品。『天狗党』『あさがお』と同様に最後の何ともいえない表情が魅力的。で、ひとつヒネた余談を書いとくと、黒田硫黄がある種の人々に評価されつつあるってのは評論する際に映画なんかを緩用しやすい作品構造を持っているってのが一因としてある。その面じゃ大友克洋や松本大洋なんかと一緒。そういう、「声の大きな人達」に評価されちゃうことで下手したら手塚治虫〜大友克洋〜松本大洋〜黒田硫黄というラインがこの国のコミックのメインストリームだった、という風に嘘の文学史が編まれてしまう危うさは、実はある。
 で、3位は『FLAT(赤)』から『五次元療法』を。これ、ひたすら個人的に好き。ぐにゅー(笑)。これまた周辺事象についてちょっと書いておくと『COMIC CUE』以来か、この手のアンソロジイがひとつの潮流として出てきたね。で、この傾向はおおむね肯定されていんじゃないかなというのが私の意見。やっぱり長編至上主義というのがこの国の商業コミックの中では綿々とあったわけで、その中で制約の少ない形で短編を発表する場が商業的に生まれてきたのは喜ばしいことだと。『FLAT』自体は珠も石も混在している本ではあるのだけど。ただそういうのは、美少女漫画とかギャンブル漫画なんかのジャンル誌上である程度はこれまでも行われていたものではあるんだけどね。表現の制約という点で言うと紀伊国屋問題とかも気になるところではあるけど、ここではパス。
 『バガボンド』『蒼天航路』『め組の大吾』『THEY MIGHT BE GIANTS』『自殺は朝』ってあたりが今年の次点かな。

 考えたら、引っ越してこの方漫画専門書店に足を踏み入れていないというなかなかに腑甲斐ない状況なので見落としている作品など、多々あるかと思います。『あれがないとはどういうことやねん』という方は是非是非ご一報下さい。さすればお互いシアワセかと。
 chabeさんからは『無限の住人』と『私立T女子学園』(笑)を、ささきけいなさんからはおかざき真理『シャッターラブ』を、こはるさんからは『エイリアン9』『神戸在住』を、それぞれ推薦していただいています。ぅ、ほとんど未読だ(^_^;。多謝〜。

kie-conne(1/17 2000)

 記憶は、風化するものなのかな?

 あるいは知らぬ間に少しづつ少しづつ潮解してゆくのか。記憶の光の粒が頭から血管を伝わり、指の先にまで至ってゆく。だけど、たとえそうだとしても、拡散した分だけ、痛みも光も闇も、きっとともどもに薄まってしまう。

 心臓をえぐられるような痛みだったのに。
 もう、小指の爪がしとしと痺れるほどでしかないよ。

 5年間の罪と、
 この先100年の罰。

コンタックス(2/5 2000)

 カメラ、買った。
 CONTAX G1ての。こことかこことかこことかこことかを観ているうち、いてもたってもいられなくなり、半ば発作的に中野のフジヤカメラで中古を購入した次第。ホントはPainter6のための資金だったんだけどなあ(あかんやん)。おかげで最近は週末になるとカメラ片手に街をふらふら散歩している。なんだかすっかり鰯水くん状態なのだ。カメラに連れ出されているという意味じゃ『ヨコ出し(6)』の『ひとりおどり』みたいな。

 G1は一眼レフじゃないけど、レンズが交換できたり絞りが調整できたりする。これまで私はコンパクトカメラしか触ってこなかったんで、写真を撮る行為自体が面白くてしょうがない。写真が露出と絞りとシャッタースピードから成り立っていることを初めて知ったりして。すっと手に馴染む大きさや程よい重量感も好い。デジカメじゃきっと得られない「もの」感。クルマにたとえるとMGFみたいなもんかな。エリーゼほどハードコアではないけれど、ちっこくてちょっとクラシカルな趣味のガジェット。カメラを選択する上でフォルムはとても重要だった。カメラは撮影者と被写体との界面になるものだから、スタイルはある意味でインターフェイスデザインともいえるんじゃないかと思う。プロが使うのなら信頼感を与える方がいいだろうし、私にとってはなるたけ威圧感のないほうが好い。黒色の樹脂の質感は、私あんまし好きじゃないし。それらの意味じゃ、私にとってG1以外の選択肢は無かったのだ。G2でも店頭で手にしてみるとどことなく持て余す大きさだったし(それ以上に価格差は大きかったけど)。それになんとなく枢軸国っぽいディティールも好き(笑)。

 でも、写真を撮るってのは『空間の中に視点を与える』行為で、それ以上でもそれ以下でも無いんじゃないかとも思う。画を描くのとは、どっちが優れていてどっちが劣っているというわけじゃなく、根本的なところで類を別にする行為なのかもしれない。

 先週はちょっと工場に詰めていたりしたので帰宅しても夕食を作る気力がないのはわかっていた。だからポトフを作りだめしておくことにした。鍋にかしわ(骨付き肉1パックと骨無し肉1パック)と玉葱・人参・キャベツを山ほど放り込んで、ひたひたに水を張った上に固形スープとたっぷりの黒胡椒、あとはことこと煮込むだけ。手間要らずだし暖まるしで、なかなか好し。ただかしわが胸肉だったのでちょっと淡白だったかな。
 『グルグル(12)』買う。かなりテンション高くて◎。机の上に突っ伏して悶絶する。そいや99年ベストコミックでは三也さんから能田達規『おまかせ!ピ−ス電気店』を推薦していただいていました。多謝。


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