神はいるのか!?第五話

 Aは棚を作る為に早速「もの」を箱から取り出す。
 中に入っているのは120×45センチのスチールが5枚、180センチの支柱4本、そして大量のボルトである。
 じゃ、とにかく作ろう。そう思ってAは何も考えず取り出したのだが、ここである困った事に気づいた。
 どこで組み立てるのだ。
 棚を置くスペースは確かに確保した。しかし、それはあくまで置き場所であって、「組み立てる」というとてつもなく広い場所を必要とする作業は頭の片隅にも無かったのだ。
 なにをする?どれをする?
 いや……。
 考えていても仕方がない。廻り始めた運命の歯車は最早誰にも止める事なぞできないのだ。
「ここでいいや」
 Aはそう呟くと、ぼこぼこに敷かれた布団の上に支柱を置いた。続けてスチール板一枚を置く。そして運命のボルトを一本握り締めた。
 本来なら平らな場所で作るはずのそれを、いわば山のあぜ道にも等しい所にも通ずる場所で作成する事にしたのだ。
 最下層となる板の所に支柱2本をつけるところまでは順調に進む。ここまでに関しては、元々角度や精密さを大して必要としないので問題はない。試練は次なのだ。
 2枚目の板。
 これを最上段につける。ここで平らな場所は絶大な意味を持つ。下段の仮止めを外さないように固定しながら、一方で新たな仮止めを始めなければならないのだ。
 どう固定するのか?Aはそれを考える。ここばかりはただ突っ走って何とかなるものではない。実際Aは何にも考えず作業を始めようとして、危うく板が曲がりそうになった。
 瞬間。
 浮かんだ。
 固定するものが無ければ作ればいい。Aは今だ大量に残っている雑誌の山に目をつけた。これをある程度の山にする。そして片方をそこに預けてしまうのだ。
 的中だ。
 微調整や棚を立てた後の支柱の組み立ても全部それでいける。Aは悪戦苦闘しながらも8時間程の時間をかけて、棚を完成させた。
 今Aはスチール棚を悪条件で組み立てるコンテスト5位入賞ぐらいはできるのではないのだろうか。などと考えながら、今日は眠る事にした。そして眠る前にトイレに行く。
その時。
「み、水が流れん」
                          つづく

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